「macOS Catalina」を導入して分かった“iPadとの一体感” iTunesの廃止は問題なし

10月9日(水)7時35分 ITmedia PC USER

「macOS Catalina」は無料のソフトウェアアップデートとして配信。2012年中期(Mid 2012)以降のMacに対応する

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 AppleはMac向け新OS「macOS Catalina(カタリナ)」の正式版を10月7日(米国時間)にリリースした。6月の開発者会議WWDC 2019で発表した後、βテストを行い、開発者向けにリリースしていたβ11を正式版として採用した模様だ。
 基本的な機能はWWDCでの発表時と変化していないが、あらためて正式版のインプレッションをお伝えしたい。
 ここ数年、AppleはmacOSに新しい機能をドラスチックに加えていくのではなく、システムアーキテクチャを改善し、また搭載する機能の実装を細かく最適な状態にすることに専念してきた。操作性や機能を改善しながらも、動作が軽快になってきていた理由は、システム全体の再構築を行ってきたからだ。
 2019年もこの路線に大きな違いはなく、基本的な部分での違いはない。しかし、これまでの「macOS Mojave(モハベ)」から大きく変化したことがある。それはmacOS上でiOS用アプリを動かす仕組み「Catalyst(カタリスト)」が組み込まれていることだ。加えて、「iPad」をサブディスプレイ兼ペンタブレットとして利用可能にする「Sidecar」も追加されている。
 この2つから見えてくるのは、MacをiOS系デバイス(もちろん、「iPhone」だけではなく、iOSをベースとした「iPadOS」が動くiPadも含む)のパートナーとして再定義しようとしていることだろう。
●iOS系デバイスとの“一体化”を象徴する「Sidecar」
 まずはSidecarの仕上がりについて紹介しておきたい。
 新しいOSなのだから、本来ならばCatalystについての解説や、「iTunes」の廃止に伴って分離された「Apple Music」「Apple TV」「Apple Podcast」の各アプリについてまず触れるべきなのだろう。
 しかし、今回のリリースは、macOSとiOSの関係が主従完全に逆転してきたことを示す象徴的なバージョンで、それを端的に表しているのがSidecarだと思うからだ。
 Macのサブディスプレイ兼ペンタブレットとしてiPadを利用可能にするSidecarは、iOS系デバイスとの“一体化”を象徴するものだが、ここでいう一体化とは、単に機能や使い勝手だけではない。
 例えば、ディスプレイ表示の品質。「MacBook Pro」と「iPad Pro」は単にスペック上の数字が似ているだけではなく、同じ写真を表示させると、両者とも同じような品質で映し出される。厳密にはiPad Proの方がピーク輝度は出るのだが、色温度や色再現域、明暗のトーンカーブなどが近似しており、並べて使っていても全く違和感がない。
 もとより「一貫したポリシーでディスプレイの開発が行われているから当たり前だ」と言えば簡単に聞こえるかもしれないが、1つのメーカーが最終的な画面表示の品質まで統一した管理を行っているからこそといえる。
 もちろん、Sidecarが単なるリモートディスプレイというだけではなく、「Apple Pencil」やマルチフィンガーのタッチ操作までを行えるよくできた連携機能であることは確かだが、こうしたスペックに現れない体験の質をそろえたところに、Sidecarのよさがある。
 これはWWDCでの記事でも感想として漏らしたことだが、「こんなことならばiPad Proは12.9インチモデルを選んでおけばよかった」と後悔している人もいるのではないだろうか。
 いずれにしろ最高水準の色再現性、最大輝度、解像度を誇る高品位なペンタブレットディスプレイが、そのままMacで利用できるというのは大きな価値だ。
●USB-C接続のSidecarはリモートディスプレイを忘れるパフォーマンス
 WWDCの時点では明言されていなかったが、SidecarはLightningケーブルでの接続もサポートされた。あらかじめ、USB-CあるいはWi-FiでMacとiPadの接続が可能であるとされていたため、これで接続には制限がないことが確認された。
 Wi-Fiでの接続パフォーマンスも、リモートディスプレイとしては高速な部類だが、USB-Cでの接続はそもそも“リモートである”ことを忘れるレベルだ。しかもUSB-Cでの接続であれば、Macからの給電でiPadを充電しながらの利用が可能になる。
 細かく計測すれば違いは分かるのだろうが、これはLightningで接続していても変わらない。Wi-Fiであっても、混雑した環境でなければパフォーマンスの問題を意識はしないだろう。
 マウスカーソルをiPad側に移し、MacBook側のトラックパッドを3本指でスワイプすると、すぐに全画面アプリが切り替わる。Apple Pencilを手にとって、「プレビュー」アプリで表示している書類にマークアップを書き込む。特に違和感は覚えない。
 MacとiPadの接続はとても簡単だ。「AirPlay」機器と同様にメニューバーの右上に接続可能なデバイスが自動的に表示される。Wi-Fiでも、ケーブル接続でも、接続可能なデバイスは自動的に発見される。ディスプレイとしての扱いは、ケーブル接続された追加の外付けディスプレイと何ら変わりがない。
 Apple Pencilでの操作を助けるため、コマンドやコントロール、オプションなどの機能制御キーを画面上に表示させることも可能だ。デスクトップのMacなど「Touch Bar」が使えない製品を使っている場合でも、iPad側のディスプレイ下端にTouch Barを表示できる。いずれもオプションで表示・非表示を切り替えることが可能だ。
 作業用ウィンドウの移動もメニューから一発で行える。例えば、3Dモデリングやイラスト、写真などのウィンドウをSidecarとして使っているiPadに送ると、iPad上に全画面で表示され、そのままApple Pencilで作業するといった使い方が、Catalina対応のアプリでは実装される。
 画面キャプチャーとの連携もスムーズだ。キャプチャーした画像を編集したいデバイスを選んでマークアップモードで開くと、指定されたデバイス、この場合はiPadに送られてApple Pencilを使って自在にメモを書き込めるのだ。このときのツールパレットはiPadで使い慣れたApple Pencilのツールパレットそのものになる。
 なお、この機能はiPad限定というわけではなく、iPhoneを編集デバイスとしても利用できる。iPadの場合はSidecarと動作が統合され、互いに邪魔をしないように連携をするのだ。
●今後のSidecar対応アプリ増加に期待
 macOS上でペンタブレットに対応しているアプリは、そのままSidecarでiPadからの入力が可能なようで、まだCatalinaに対応していない現行バージョンの「Adobe Photoshop CC 2019」を立ち上げて入力すると、そのまま利用できた。
 ただし、ペン先を傾けて入力するなどApple Pencil特有の操作には対応できていない。また、ペン先の軌跡に対して正確にトラッキングはされるものの、入力から画面に反映されるまでの遅延時間はやや長めに感じた。これはPhotoshop側の処理の問題かもしれない。
 Appleは「Illustrator」「Photoshop」「Lightroom」「Final Cut Pro」「Maya」「Affinity Photo」などのアプリで、そのままApple Pencilが動作するとしているが、筆者はPhotoshopしか所有していないため、それらでの動作感や対応予定については、個々のアプリで確認していただきたい。
 CatalinaのSidecar対応アプリに関しては、「Mac App Store」で特集されており、上記以外にもたくさんのアプリが列記されている。
 ただ、現在の最新版Photoshopに関してはまだ未対応の可能性が高く、Mac App Storeでもフィーチャーされていなかった。前述した作業ウィンドウをiPadに送る機能も実装されておらず、iPad上のタッチ操作にも不完全な対応しかされていないからだ。
 例えば、拡大縮小はピンチ操作で簡単に行えるが、作業位置を変えるために2本指でドラッグすると、指の動きの数倍の速度でスクロールしてしまい、とても使えたものではない。
 一方、Lightroomでの動作はスムーズだ。また画面キャプチャーのマークアップなどでは、iPad内アプリと同等の操作感がある。Apple Pencilの傾き対応なども含め、アプリ側のSidecar対応が進めば自然と解決される問題なのだろう。
 また現状では、Catalinaに標準搭載されているアプリ、Appleがリリースしているアプリの中にも、Apple Pencilに対応していないものがある。
 Appleの意図は分からないでもない。Sidecarの接続をキープした状態で、iPadのアプリは切り替えることができる。例えば、メモを手書きで書きたいならば、Macの「メモ」アプリを立ち上げてSidecar経由でApple Pencilでの書き込みをしなくとも、iPadのアプリでメモを取ればいい。PDFのマークアップを書き込みたいなら、iPadで書けばいい。
 必ずしもMac側のアプリがSidecarにフル対応する必要もないのだろうが、作業には流れというものがある。Macでマルチアプリの作業をしている中で、SidecarのApple Pencilを使った作業を挿入したいことはあるはず。
 iPadのアプリに切り替えることなく、Mac上の作業の延長線上で「iWork」で書き込みができれば便利だろうし、プレビューアプリでのマークアップもApple Pencil前提ならばもう少し操作感を詰められるはずだ。
 メモはiPadアプリの中でも最も基本的なものだが、それでもMacでの作業中にはMacのメモで作業したいことはある。できればMac(のSidecar)での体験と、iPadの体験はそろえてほしい。
 こうした問題はあるいは、iPadアプリの移植を容易にするCatalystアプリが増加することで解決してくれるのだろうか。Apple Pencilに対応したiPadアプリがMacに移植されるようになれば、Sidecarの有用性はさらに高まるだろう。期待しておきたい。
 (ごく個人的な希望としては、iPad側にキーボードが接続されている場合、iPadのディスプレイに向かいながら、iPadのキーボードで入力したいとも思うが、それはセキュリティ上、許されないのかもしれない)
●iTunesがなくなったことは数時間で忘れる
 さて、6月のCatalina発表前後には「iTunesがなくなる」というニュースが話題になった。個人的にはそこまでiTunesが愛されていたことに驚いたが、恐らくCatalinaをインストールした後、数時間から、せいぜい数日でiTunesがあったことを忘れているだろう。
 なお、既に周知されているとは思うが、Windows版のiTunesはメンテナンスが維持される。
 そもそもiTunesとは音楽をリッピングしてMacで(後にWindows PCも)楽しみ、自分だけのアルバムを編集してCDに書き込むアプリだ。もちろん、現在では全く異なる多機能なアプリになっていることは確かだが、本来はそういうアプリである。
 音楽を楽しむためのMac専用アプリとしてiTunesは生まれ、そこに「iPod」への音楽転送、音楽ダウンロード購入が追加され、音楽データのクラウド管理、アプリ、動画のダウンロード購入、Podcastの発信・受信、iOSデバイスの管理、そして加入型ストリーミング音楽サービスが加わってきた。さらに、ここに「Apple TV+」の機能まで取り込むというのはむちゃな話だ。
 iTunesの機能が音楽(Apple Music)、Podcast、映像(Apple TV)に分割されたのは、極めて合理的な判断だと思う(正確にはiOSデバイスの管理機能は「Finder」へと移植されたので4分割が正しいかもしれない)。
 またメディアの楽しみ方も変化してきている。音楽の場合、CDからダウンロードへと事業の中心が移りかけたが、近年はストリーミングが音楽流通の中心だ。既にiOSの「ミュージック」アプリがそうなっているように、Macの場合もApple Musicを中心にしたユーザーインタフェースにした方が、今後は合理的といえる。
 もちろん、従来と同じようにダウンロードした音楽は管理可能で、新たにダウンロード購入もできる。まだコンテンツ数は少ないが、Apple TV+に関しても同様のトレンドがあるため、いずれはストリーミング中心のアプリになっていくはずだ。
 分離したアプリは、いずれもiOS用アプリに類似するユーザーインタフェースとなっており(PodcastはCatalystを用いたiPad用との共通アプリ)、あっという間にiTunesを忘れると思う。
●「iPadOS」との併用で見直す日本語入力
 まだ製品版の試用から時間が短いため、簡単な紹介にとどめたいが、iOSとの“フィーリングの一体感”は他の部分にも広がっている。「写真」アプリはiOS版と同様の切り口で写真を探せるようになり、思い出の動画が自動生成されるのも同じだ。
 また純正の「メール」アプリでは、頻繁に着信するメールスレッドの通知を停止する機能が付いた。CCされている、しかしリアルタイムに知る必要がないメールは通知をオフにできる。またメーリングリストを自動退会する機能もある。全てのダイレクトメールに効くわけではないが、既知のメーリングリストならば自動退会をメールクライアント内でできる。
 この他、オフラインデバイスの検出機能、スクリーンタイム、Catalyst対応アプリがどの程度増えていくのかも注目していきたい。CatalystはmacOSとiOSの間をつなぐ鍵となる技術だ。iOSアプリの開発者がどこまで、この機能を通じてMacへのアプリ提供にコミットするのか興味深い。
 Macよりもはるかに大きくなったiOSの開発コミュニティー、ユーザーコミュニティー、サービス事業者がもたらす恩恵を、Macユーザーにもつなぐ仕掛けは以前から少しずつ盛り込まれていたが、今回のリリースでその取り組みが大きく進んでいる。その成果がはっきりとした形で出てくるには、まだ数カ月が必要だろう。OSはあくまでもアプリが生まれてくる土台にすぎない。
 一方で、MacからiOSにもたらされているものもあると、あらためて気づいた。
 「iPadOS」では日本語入力が大きく改善されていたが、Catalinaの日本語入力(この原稿はApple純正の日本語入力でタイプしているが、驚くべきことに筆者が嫌いなライブ変換をオフにすると、全く違和感なく高効率の入力ができている)とコンポーネントが共通なだけではなく、操作性も一貫している。
 例えば、(これも筆者の好みではないが)スペースバーの扱いを直前の入力文字種によって、半角の空白か全角の空白かを自動的に切り替える、といった振る舞いも統一されていた。もちろん、慣れ次第であるため、不満に感じるユーザーがiPad、Macそれぞれにいるだろうが、長期的にみればiPadとMacのキーボードによる日本語入力が統一されるという意味でプラスに作用するかもしれない。
 なお、普段は「ATOK」や「Google日本語入力」を使っている筆者だが、キーアサインできないことを除けば、入力効率はそれらサードパーティー製よりも高いレベルにあると感じている。Catalinaを導入したならば、一度試してみるといいだろう。
[本田雅一,ITmedia]

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