オルツが東証グロース市場へ上場、パーソナルAIで労働からの開放を目指す
2024年10月11日(金)19時3分 マイナビニュース
パーソナルAI(P.A.I.)の開発を手掛けるオルツは10月11日、東京証券取引所グロース市場へ新規上場し、記者説明会を開いた。同社は、全ての人が自分のAIを持つことによって労働(Lavoro)から解放され、アーティスティックな営み(Opera)に没頭することができる世界の実現を目指す。
オルツの事業概要
オルツは2014年11月設立。P.A.I.やAIクローンをつくり出すことによって、非生産的労働からの解放を目指す。音声認識技術を活用したAI GIJIROKUをはじめ、altBRAIN、AIコールセンター、CLONEdevなどビジネスの課題解決を支援するソリューションを展開している。
今回のIPO(Initial Public Offering:新規公開株式)により、資金調達に加えて、会社としてのステップアップを公に示すことで、現在も協力している日本政府や省庁、外国政府など、P.A.I.を国家レベルでの課題解決施策とするための連携を強化する。
説明会では、代表取締役社長である米倉千貴氏のクローンAIが登場し、オルツのビジネス概況について紹介した。それによると、ARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)は54憶円、直近の年次成長率+54%、AI GIJIROKU導入社数は約8000社、2024年6月時点の従業員数は113人とのことだ。
同社は主に2つの事業セグメントを通じて、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を促進する。売上の93%を占めるAI Product事業では、基礎研究の成果を活用した製品を創出。AI GIJIROKUによるリカーリング型の収益モデルとして提供する。
AI Product事業で蓄積したデータは、LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)の技術を活用してカスタマイズされたAIソリューションを提供するAI Solution事業で使われる。AI Solution事業はフローベースではあるものの、一定のリカーリング性も持つという。
オルツが持つ優位性
オルツは生成AIに関連する技術を広く自社でまかなっている点が特徴だ。計算基盤となるITインフラから、基盤モデル、データ処理、アプリケーションまでを一気通貫で自社開発し保有している。
同社のコアとなる技術は、パーソナライゼーション。これは、少量の特徴あるデータを使って平均モデルをゆがませることで、個性を持ったモデルを構築する技術。平均モデルは高い精度での文章生成や綺麗な発話の音声生成が可能な反面、個性を表現するのは難しい。
対する個性化モデルは個人の特徴データによってモデルをゆがませており、個人の思考や癖などが反映される。文脈や周辺環境、相手の属性などを反映して活用できるという。同社はパーソナライゼーション技術によって個人個人にカスタマイズされた音声認識モデルを構築している。これにより、平均モデルでは考察できない高い音声認識精度につなげているという。
その他に同社が強みとするのは、国内外の大学や研究機関とのネットワークによる先端的な技術と、P.A.I.の開発をいち早く手掛けてきた先行者利益だ。ビッグテック企業とは異なり、個人に寄り添うAIというアプローチに共感する人材も、同社の優位性とのことだ。
現在はAI GIJIROKUの法人導入が売上の約9割を占める同社だが、今後数年以内にはこれまでの研究開発の結果を搭載した次なるプロダクトを展開するとしている。また、中長期的にP.A.I.を本格的なプロダクトとしてリリースし、非生産的な労働を代替することで自社の成長につなげる方針だ。