自動車にひかれても潰れない甲虫! 外骨格の頑強さの秘密を農工大等が解明

10月25日(日)8時0分 マイナビニュース

東京農工大学(農工大)は10月22日、自動車に踏まれても潰れないほどの頑強な外骨格を持つ甲虫「Phloeodes diabolicus」の外骨格ボディの構造や組成、機械的特性の詳細な解析を行い、今まで知られていない特殊な構造の存在と、そこから生まれる頑強な仕組みを明らかにしたと発表した。

同成果は、農工大工学研究院の新垣篤史准教授、同・村田智志氏、米カリフォルニア大学アーバイン校のDavid Kisailus教授(東京農工大学グローバルイノベーション研究院・教授兼任)、同・Jesus Rivera博士、米パデュー大学のPablo Zavattieri教授、同・Maryam Sadat Hosseini博士、米・ローレンスバークレー国立研究所のDilworth Y. Parkinson博士、同・Harold S. Barnard博士、米テキサス大学サンアントニオ校のDavid Restrepo博士らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」に掲載された。

自動車や航空機などの乗り物は省エネルギーの観点から、軽量であることが求められる。しかし、単に素材を薄くしたり材料の点数を減らすだけでは強度を維持できないため、軽量かつ頑強な新素材と構造が求められている。このような矛盾する要求に対する参考として、生物から学ぶ生体模倣(アイボミメティックス)技術が近年注目されている。

この軽量かつ頑強な素材や構造を開発するのに、参考としてうってつけの生物が、カブトムシやクワガタムシに代表される甲虫だ。現在、甲虫は地球上に35万種以上が存在するといわれ、それぞれ厳しい自然環境に適応するため、進化の過程で多様な構造や物性を持つ外骨格を発達させてきた。この外骨格が、新規の材料デザインの宝庫として注目されているのである。

そうした甲虫の中でも、世界最強クラスの頑強さを有するのが、今回、国際共同研究チームが着目した「Phloeodes diabolicus(P.diabolicus)」だ。南カリフォルニアの乾燥した地域に生息する、翔ばない体長約3cmの小型甲虫である。

P.diabolicusは、その頑強さから別名「Ironclad beetle」(装甲甲虫)と呼ばれている。捕食者から逃れるための翅を持たない代わりに、頑強な外骨格を獲得したと考えられている。しかしながら、最強の防御力ともいうべきその外骨格の頑強さの要因は、これまで明らかにされていなかった。

今回の研究では、P.diabolicusの外骨格の強度分析を、金属などの材料の機械特性を評価するための試験系を用いて実施した。その結果、P.diabolicusは自重のおよそ3万9000倍である、133±16ニュートン(N)の荷重に耐えうることが判明。これは、11.9kgから15.2kgの重さに耐えられるということになる。この耐荷重は近縁の甲虫と比較しても、2倍以上だという。

しかし、自動車にひかれても潰れないという割には、耐荷重の値が小さいと思う方もいるかもしれない。現代の自動車の大半が1トンを越す車重があり、単純計算で1輪当たり250kg以上を分担していることになるからだ。ただし、P.diabolicusは体長が約3cmしかないため、タイヤの一部にしか踏まれないはずで、車重の4分の1の重さがすべてかからないと思われる。そのため、自動車にひかかれても潰れないことも多いのだろう。

さらに、実際に外骨格の破壊も行われ、その様子が観察された。すると、外骨格を構成する層状の構造が頑強性に重要な役割を果たしていることが判明したのである。それを受け、次に外骨格のミクロ構造と構成成分の詳細な解析が行われた。一般に甲虫の表皮は、キチン質とタンパク質を主成分としており、これらから構成される繊維の束が積み重なることで、規則的な層状構造を形成する。

P.diabolicusの外骨格に対し、走査型電子顕微鏡およびCTスキャンを用いた観察が行われ、外骨格の接合部においてパズルのピースのようにかみ合った凹凸構造が発見された。しかも、ほかの甲虫種はこうした凹凸構造は1対しか見られるないのに対し、P.diabolicusは2対も持っていたのである。

外骨格に含まれる有機物の組成の解析も行われた。すると、異種の甲虫である「ニホンカブトムシ」(Trypoxylus dichotomus)と比べ、タンパク質の割合が約10%多く含まれていることが確認された。この組成が、外骨格に頑強性を与えている理由だと考えられるという。また、特殊な構造の形成そのものにもタンパク質が関与している可能性があるとした。P.diabolicusは、進化の過程で防御手段としてこのような特殊な構造や組成を持つ外骨格を発達させてきたことが考えられるとしている。

さらに今回の研究では、カーボンシートを用いてP.diabolicusの外骨格接合部に存在する2対の凹凸構造を模したバイオミメティック構造体が作製され、ふたつの部材の接合における有効性の評価も実施された。その結果、現行の航空材料の接合に用いられる様式と比較しても、強固に接合できることが実証されたという。P.diabolicusの外骨格のこのような構造は、自動車や航空機などの製造において、高強度・軽量材料のデザイン設計に応用が可能としている。

また今回の研究では、外骨格の強度に関わる構造のみならず、乾燥環境下での水分の輸送・蓄積やエネルギー吸収に関わると考えられる微細構造も発見された。今後、ミクロ構造のさらなる解析を進めることで、P.diabolicusの生態の解明が進み、多機能性材料への応用ができるという。また、外骨格の主要構成成分であるタンパク質の解析を進めることで、外骨格の形成機構の解明に繋がることが期待されるとしている。

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