東大、急性腎障害(AKI)の発症メカニズムを新たに解明 治療法開発に期待

11月4日(月)21時49分 財経新聞

今回の研究の概要(画像: 東京大学の発表資料より)

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 急性腎障害(AKI)は何らかの原因で腎臓の働きが急に悪くなる病気である。尿が作られなくなり、排泄するべき物質が体にたまり、その結果心不全や電解質異常などの尿毒症の症状を引き起こす。東京大学では、ミトコンドリアの機能異常から腎臓の炎症が引き起こされてAKIが生じるメカニズム、さらにそのターゲットとなる分子を明らかにした。今後AKIの治療法を開発し、透析治療や死亡率の上昇に結び付きやすい現状の改善につながることが期待される。

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 研究には、東京大学医学部附属病院の前川洋医師、東京大学大学院医学系研究科の稲城玲子特任教授らが参加している

 腎臓は、背中側腰のあたりの左右に一つずつある臓器で、その中には、糸球体という毛細血管のかたまりがある。糸球体で不要物などをろ過してできる原尿が尿細管に集められ、必要な物質や水分は再吸収されて尿となる。腎臓は尿を出して体の不要物を排出するほか、体の水分量や血圧の調節、ホルモンを作る働きをしている。

 AKIは、腎臓以外の病気や腎臓自体の病気、尿の通り道の閉塞や薬の副作用などでも発症する。原因を取り除くなどの処置によって症状が改善することもあるが、重篤な場合は 透析治療が必要になることもある。AKIに罹ることで死亡率は上昇し、さらに腎臓の機能が完全に失われてしまう恐れもある。

 近年の研究で、AKI患者の近位尿細管細胞(尿細管のうち、最初にろ過された原尿が通過するところ)のミトコンドリア障害、及び炎症反応が誘導されることは知られていた。今回の研究では、これらと、細胞質内のDNAを認識して免疫反応を起こすcGAS-STING経路の関連を検討した。

 cGAS-STING経路は、cyclic GMP-AMP合成酵素(cGAS)が細胞内にDNAを検出したときに、インターロイキンやインターフェロンなどの炎症性サイトカインの遺伝子を活性化(STING)する免疫である。

 研究では、マウスに抗がん剤の一種であるシスプラチンを与え、腎障害のモデルとしてメカニズムを探った。このマウスの腎臓では、cGAS-STING経路が活性化し、炎症性サイトカインが増加していることがわかった。AKI患者の腎組織標本についてもcGAS-STING経路の活性化が示唆された。

 次にSTING遺伝子が働かないようノックアウトしたマウスについて調べた。このマウスでは、シスプラチンによる腎機能障害や炎症反応は改善していた。同様にSTING阻害薬を与えたマウスでも改善がみられた。これらのマウスの実験により、腎機能障害や炎症反応にSTING遺伝子が関係していることが明らかになった。

 さらに細胞の働きや状態を測定する機器により測定を行った。シスプラチンを加えた近位尿細管細胞では、ミトコンドリアが機能不全を起こし、そのDNAが細胞内に漏れ出す。そのDNAに対しcGAS-STING経路が活性化し尿細管の炎症を引き起こす。ミトコンドリアDNAは、ミトコンドリア外膜上のアポトーシス促進性タンパク質BAXから漏れ出していると考えられた。

 これらにより、AKIではまず腎臓の近位尿細管でミトコンドリア機能障害が起き、続くミトコンドリアDNAの漏出に対してcGAS-STING経路が活性化、尿細管の炎症を起こすことが病状の悪化に関与していると考えられる。このようにAKIが引き起こされるメカニズムや関わる分子が明らかになり、今後これらをターゲットにした治療法や創薬がにつながっていくことが期待される。

 研究の成果は、10月30日のCell Reports(オンライン版)に発表された。

財経新聞

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