「明治 ザ・チョコレート」にみる競合排除のパッケージ戦略 PCやスマホ関連製品の場合は?

11月10日(日)7時35分 ITmedia PC USER

 近年、食品コーナーのチョコレート売場で、ちょっとした異変が起こっているのをご存じだろうか。ある新製品が売場に大量導入されたことによって、既存の棚割りが一から見直される事態になっているのだ。
 その新製品というのは、明治の「明治 ザ・チョコレート」だ。正確には新製品ではなくリニューアルなのだが、カカオ豆の違いを全面に押し出したラインアップが爆発的なヒットとなり、今やどの販売店のチョコレート売場を見ても、そのクラフト調のパッケージを目にすることができる。
 ここで注目したいのは、パッケージがこれまでのチョコの横意匠ではなく、縦意匠だったという事実だ。そしてこのことは、同製品がここまで大きなヒットとなり、かつ継続して売れ続けている大きな理由だと筆者は見ている。
 今回は、他の業界から見ても興味深い、棚割までガラリと変えたこのパッケージ戦略を読み解いた上で、本連載で取り上げているPCやスマートフォンのアクセサリー業界のパッケージ動向についてみていきたい。
●パッケージの「高さ」で決まる棚割を逆手に取った戦略
 明治 ザ・チョコレートは、カカオの違いを押し出したラインアップや、クラフト調のパッケージデザインが主な成功の要因とされるが、これまでになく革新的だったのは、横意匠ばかりだったチョコレート売場に、縦意匠のパッケージを持ち込んだことだ。
 これによって売場では、縦意匠のパッケージを並べるための棚を横1列用意しなくてはいけなくなったわけだが、ポイントは、それらの棚が事実上の「ザ・チョコレート専用棚」と化し、他社の横意匠のパッケージとの混在が事実上不可能になったことにある。
 なぜ混在できないのか。「パッケージが縦長になっただけであれば、その横に並べられるじゃないか」と思うかもしれないが、これは量販店のルールからしてNGである。なぜなら、縦長のパッケージの隣に横長のパッケージを置くと、上部の空間が空いてしまい、壁面がそのまま露出することになるからだ。
 一般的に量販店の売場は、品物が壁面を埋め尽くしており、壁面が見えない状態にあるのが理想とされる。壁面が見えていると、補充などのメンテナンスが行き届いていないとして、現場の販売員が叱られる。棚割の段階で同じ列に高さが異なる製品が混在していて、きちんと品物の補充をしていても奥の壁面が見えてしまうのは、もってのほかだ。
 例えば食品コーナーで、紙パック飲料は横1列が全て紙パックで並び、どうしても品数が半端な場合にのみ、ヨーグルト飲料のような高さが近い品が隣に並ぶ。同じ理屈で、500mlのペットボトルと1lの紙パックが隣に並ぶこともまずない。高さがバラバラな陳列が許されるのは、スペースの関係で売れ筋を1つの棚にまとめざるを得ないコンビニや雑貨店くらいだ。
 こうしたルールをうまく利用して、専用の陳列スペースを確保してしまったのが、今回のザ・チョコレートというわけだ。この製品を陳列するには、棚の上下間隔を20cmほど空ける必要があり、そこに従来の横パッケージを置くと、上部に高さ10cmほどの空間が空いてしまう。結果的に、その横1列のスペースは、ザ・チョコレートのシリーズで統一せざるを得なくなるというわけだ。
●ザ・チョコレートに「寄生」する他社の戦略
 ここまで見てきた理屈であれば、どんな製品でも、同じように横意匠のパッケージを縦意匠にリニューアルすれば、専用の棚が確保できて大ヒットにつながりそうに思えるが、現実的にそれは困難だ。単発の製品でそのような仕掛けを行っても、売場を知らない非常識なパッケージとして、陳列すら断られるのがオチである。
 今回のザ・チョコレートの場合、カカオ豆の違いや複数のフレーバーなど、多彩なラインアップが投入され、同シリーズだけで棚の横1列を埋めるのが可能だったこと、また並べると映えるパッケージデザインだったことが、成功を収めた大きな要因だ。こうした複数の要素があって初めて、販売店のバイヤーが導入にGoサインを出したのだろう。
 こうした状況に、ライバルメーカーも手をこまねいているわけにはいかず、最近になって「ザ・チョコレート対策製品」と呼ぶべき新製品が登場してきた。具体的には、ザ・チョコレートと同じ縦意匠で、パッケージサイズもほぼ同じチョコレート製品である。
 こうしたラインアップを保有しておけば、ザ・チョコレートが欠品したり、あるいは不人気のラインアップが出てきたりした場合に、すかさず差し替えを提案できる。また売場が縮小され、ザ・チョコレートを中心に再編されることになっても、パッケージサイズがそろっているというだけで生き残れる可能性がある。
 実際、これらの製品は、一部の量販店では効果を上げ始めており、ザ・チョコレートの隣にちゃっかり寄生しているケースも多数見受けられる。チョコレート売場に足を運ぶことがあればチェックしてみていただきたい。
●製品サイズに似つかわしくない巨大パッケージの理由
 さて、ここまで見てきたような法則は、チョコレート売場に限った話ではなく、PCやスマホのアクセサリー売場にも同様に当てはまる。しかしPCやスマホのアクセサリーの場合、機器本体に適合するサイズと形状であることが必須で、パッケージのサイズありきで製品のサイズを調整することができない。
 ではどうするかというと、製品のサイズはそのままに、パッケージのサイズだけを他の製品とそろうように拡大する。例えば電源タップの場合、パッケージサイズは高さ別におおむね3パターンに分かれるので、近いサイズに合わせて作成する。「本体は小柄なのに台紙はやたら大きい」パッケージがあるのはそのためだ。
 またケーブルの場合、2m、3m、5mという長さのラインアップがあれば、パッケージサイズの高さは固定しておき、横幅を調整する。これにより、長さが違うケーブル製品を横1列に並べて陳列することが可能になる。本体の形状を柔軟に変えられるケーブルならではの技である。
 最近はネット通販の台頭によって、こうした店頭での陳列を想定したパッケージが作成される機会は減っているが(そもそも海外製品の取売ではパッケージが支給されることも多く、カスタマイズの余地がない場合も多い)、逆にいうとこうした店頭陳列におけるノウハウの有無が、メーカーの販路を決定づけている面もある。
 チョコレート売場でも、あるいはPCやスマホのアクセサリー売場でも構わないが、上記のような視点を持って売場を眺めてみると、パッケージにまつわる各社の思惑が浮き彫りになって面白い。製品サイズとは似つかわしくない大型パッケージを見かけたら、そこにはどういう意図があるかを考えてみてはいかがだろうか。
連載:牧ノブユキのワークアラウンド(PC・スマホの周辺機器やアクセサリーー業界の裏話をお届けします)

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