視覚障碍者の「眼」になる、日本マイクロソフトの「Seeing AI」日本語版アプリ

12月4日(水)19時45分 マイナビニュース

日本マイクロソフトは2019年12月3日、視覚障碍(しょうがい)者支援アプリケーション「Seeing AI」の日本語版を発表。国際連合が定めた「国際障害者デー」に合わせて、同日から提供を開始した。

Seeing AIは、Microsoftのイベント「Build 2016」で発表された。基調講演で流れた動画では、自身も視覚障碍者であるMicrosoft Software Engineering Manager and Project Lead for Seeing AI, Saqib Shaikh氏が自ら、Seeing AIが視覚障碍者に役立つ様子を映し出したことは記憶に新しい。

そのSeeing AI、「短いテキスト」「ドキュメント」「製品」「人」「風景」「通貨」「色」「ライト」と8つ文脈によって機能を使い分けるが、基本的にはスマートフォンのカメラを通じて映し出した物を音声で読み上げるアプリケーションである。

2017年には英語版をリリースしたが、すでに2,000万を超えるSeeing AIの利用タスクを数えるという。具体的な利用方法として、まず「短いテキスト」は、カメラがとらえた映像をAzure Cognitive ServicesのVision機能を使って、街の看板を読み上げたり、配達された荷物の送り状を読み上げたりすることで、誰に送られた荷物なのか確認できる。

「ドキュメント」は撮影した書類の文字を読み上げ、「製品」は商品のバーコードを発見するとシャッターを切りって商品名を音声で読み上げる。執筆時点では米国のデータベースを利用しているため、音声も英語になってしまう。

「人」はカメラに映し出された人物の名前を音声で伝える機能だが、家族や友人は顔を事前登録することで認識可能。「風景」はカメラで撮影した風景や建築物、人物の概要を音声で読み上げる。人物の場合は「おそらく本を読んでいる女の子」といった説明も加わる。このあたりはComputer Vision APIを利用しているのだろう。

「色」は配色を音声で伝える機能だが、今回の発表会に参加した全盲のセルフサポートマネージメント 代表理事 石井暁子氏は「娘の洋服を選ぶときにもSeeing AIを使っている」と具体的な利用シーンを紹介した。

「ライト」は室内で照明が点灯しているか否かを音で知らせる機能。「娘が寝ないと思ったら部屋が明るくなっていた」(石井氏)と、Seeing AIが3歳のお子さんを抱える石井さんの“眼”として活躍していることを語っていた。なお、Seeing AI日本語版では未実装の機能として、手書き文字を認識して読み上げる「Hand Writing」機能がある。

Seeing AIの英語版や日本語ベータ版を1カ月ほど前から使ってきた石井さんは、「調味料を買うときは、みりんや料理酒など同じサイズのボトルを見分けるために『短いテキスト』で確認する。また、一型糖尿病のためセンサーで血糖値を測っているが、これまでは主人に読み上げてもらっていた。現在はSeeing AIの『短いテキスト』で読み上げ可能になったので、とても便利に使っている」と、Seeing AIが日常生活を支える大きな存在であることを強調した。

シンプルなUIのSeeing AIは、石井さんも「シングルタップで操作できる点が便利」と語っている。日本マイクロソフトも「視覚障碍を持つエンジニアが開発に携わっているため、障碍者の気持ちが分かる」(日本マイクロソフト 技術統括室 プリンシパルアドバイザー 大島友子氏)と、現在のUIに至った理由を説明した。

Microsoftは2018年5月に、障碍者に向けたAIプロジェクトへ5年間で2,500万ドル(約27億円)を助成する「AI for Accessibility」を発表している。今回、東京工業大学の「PuCom」とシーコミュの「AIミミ」が、日本最初の対象となったことを明らかにした。

PuComは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などが原因で閉じ込め症候群となった方々の瞳孔径をデバイスで測定し、「Yes」「No」といったシンプルな意思疎通を可能にするソリューション。Azure Machine Learningを利用し、学習を重ねて判断制度やスピードの向上を目指す。AIミミは、聴覚障碍者向け字幕作成のために、Cognitive Services Speech APIとオペレーターの修正を組み合わせることで、正確な字幕を提供するソリューションである。

合わせて、日本マイクロソフトは、通常のゲームコントローラーを使いにくい障碍者向けに、XboxとWindows PCに接続可能な障碍者向けゲームコントローラー「Xbox Adaptive Controller」の国内発売も発表した。デバイス背面のスイッチを切り替えることで、足で踏んでも使える巨大ボタンの動作を変更することが可能。息を吹きかけるタイプのボタンも用意する。発売時期や価格は現時点で未定だ。

Windows OSも、「ナレーター」や「拡大鏡」といったアクセシビリティ機能を古くから備えてきた。その背景には、「Windowsの初期バージョン提供時に障碍者から『使えない』という言葉をいただいた。そこからMicrosoftはアクセシビリティの研究を重ねて、標準機能化に取り組んできた」(日本マイクロソフト 技術統括室 プリンシパルアドバイザー 大島友子氏)という経緯がある。健常者には小さな問題でも、視覚障碍者にとっては大きな壁になり得てしまう。Seeing AIのような技術革新によって健常者と障碍者の能力差を生めることは、障害者雇用促進法の支援や社会のあり方を変えることにもなるだろう。

阿久津良和(Cactus)

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