“5Gの早期普及”を目指すQualcommの新Snapdragonとテクノロジー

12月5日(木)8時38分 ITmedia Mobile

今回発表されたSnapdragon 865と765。詳細については2日に改めて発表されるという

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 米ハワイ州マウイ島で2019年も「Snapdragon Tech Summit」が12月3〜5日の3日間の日程で開催されている。今回で4回目となるQualcomm主催の同カンファレンスだが、毎回Snapdragon SoCのフラグシップ製品がこの場で発表されるだけでなく、近年の大きなテーマである「5Gをいかに展開していくのか」というトピックについての新しい提案が行われている。
●DSSを組み合わせて5Gの展開をスピードアップ
 2018年までの「特定イベントなどでのプレローンチ」とは状況が異なり、2019年は米国を含む20の地域で既に商用サービスが開始されている。携帯キャリア数とデバイスを提供するOEMの数も40を超えており、これは2020年にさらに増加する。日本での商用サービスローンチも2020年となっており、壇上で説明した米QualcommプレジデントのCristiano Amon氏によれば5Gに関連する契約回線は同年に2億に達する見込みで、2025年までには28億回線にまで増加するという。2020年を境に5GがメインストリームになるというのがQualcommの見立てだ。
 ゆえに「5Gが来る? 来ない?」という話ではなく、その話題は「どうすれば、いかにスムーズに素早く5Gのカバーエリアを展開できるのか」という部分に移っている。
 今回Qualcommが紹介したのは「DSS(Dynamic Spectrum Sharing)」という仕組みだ。4Gの基地局が展開されている場所で、同じ(低帯域の)周波数を共有する5Gのサービスを展開し、ユーザー側のデバイスが5G対応か否かに応じて4Gと5Gの通信を切り替え、4Gのインフラ上に5Gを相乗りさせていく。
 メリットは4Gの帯域と基地局設備を有効活用できる点で、しかも電波の効率利用という点で5Gの恩恵を受けられることも大きい。ゆえに面展開のスピードアップを図る上で、DSSを併用するのが効率がいいというわけだ。
 従来の考え方でいえば、4Gが面展開されているエリアに対し、Sub-6の帯域で5Gのエリアを被せる形である程度確保しつつ、都市部などの過密エリアにはミリ波のインフラを整備することで広域のカバーと都市部での需要を両立させるのが5Gエリア展開における説明だった。だが今回の説明では4GのエリアにはDSSで5Gを広げつつ、都市部などではミリ波の5Gインフラをスタンドアロンのコアネットワークで構成し、両面で5Gを同時拡大していくのだという。これをキャリアアグリゲーション(CA)でまとめることで、対応エリアではさらなるパフォーマンス向上が見込める。
 実際、ドイツのフランクフルトの都市部では、通常だとSub-6の帯域で5Gのカバレッジが78%程度なのに対し、DSSを組み合わせることで一気に96%まで増加が見込めるという。DSSがどのようなものなのか、会場ではライブデモが披露されており、4Gと5Gで異なる技術を用いた2つのデバイスが1つの基地局を通して同時に通信が行える様子が紹介された。
 このDSS活用を受けて、QualcommではDSSを絡めた世界各国での5G展開ロードマップを紹介している。このロードマップが意味していることの1つは、キャリアアグリゲーションを含む周波数コンビネーションの組み合わせは世界規模で見ても膨大であり、これを制御することが可能なデバイス向けソリューションを持つのはQualcommしかいないということだ。
 同様に、パートナー側へのメッセージも5G展開前の話ではなく「ポストローンチ」を意識したものとなっており、いかに素早くカバーエリアを展開しつつ、「家庭向けブロードバンドのラストワンマイルの提供」「産業や流通分野など各方面での5Gの積極活用」といったサービスを実現できるかが重要になる。特に米Verizon Wirelessは2019年春に商用ローンチを実施しており、2019年10月に開催されたMWC Los Angelesでの展示も「5Gの活用事例」ということで同社5G LABのソリューション紹介がメインになっていた。
 インターネット初期の時代、ブロードバンドの拡大とSaaSなどのWebアプリケーション活用が進んだことで、PCのような分散型から中央集権型のネットワークへの揺り戻しがあったことが話題となった。現在はデバイスの拡大やそれに伴う流れるデータ量の急拡大により、「中央に膨大なデータを流さずに必要最低限の処理を“縁”で行う」という「エッジコンピューティング」の利用が進んでいる。
 また、ワイヤレスやモバイルでの利用が一般的となったため、無線帯域への負荷や遅延を考慮してデバイス側で処理を完結させる「デバイス組み込み型AI」の利用も急速に進んでいる。今回イベントが行われた12月3日にはクラウドベンダーのAWSがVerizon Wirelessとエッジコンピューティングの分野で提携を発表していたが、今後しばらくはエッジでの各社の攻防が続くことになるだろう。同様に、Qualcommではデバイス組み込み型AIを強化しており、前述エッジコンピューティングと組み合わせて、昨今話題になっている「スーパーアプリ」のトレンド支援を目指している。
●フラグシップのSnapdragon 865と、5Gの普及を促すSnapdragon 765/765G
 Qualcommの5G対応ソリューションの提供は2年前のTech Summitで発表が行われており、現時点で対応デザインの製品は230以上存在するという。これをさらに強化する製品として、今回新たにフラグシップSoCの「Snapdragon 865」、そしてモデムをSoCに包含した普及型モデル「Snapdragon 765/765G」が発表された。
 詳細については会期の2日目以降に改めて説明するとしているが、Snapdragon 865ではCPUとGPUともに全体的な機能アップが図られている他、先述のAI関連では2倍近いパフォーマンス向上が実現できているという。ニーズのある機能を中心に順当進化したSoCということで、2020年後半に登場するスマートフォンにおいて中心的な存在となるだろう。
 会場では日本進出が話題となっているXiaomi共同創業者の1人で、同社長のLin Bin氏が登場し、間もなく発表されるとみられる新フラグシップ製品「Mi 10」では、このSnapdragon 865を搭載して世界に先駆けて市場投入することを予告している。
 これまで日本などでは特にハイエンド端末ばかりに注目が集まり、Snapdragonにおいても「8xx」シリーズにばかり話題が集中していた印象がある。携帯キャリアの購入補助のおかげで通常よりもハイエンド端末が安価に購入できていたことによるものだが、総務省ではこの周辺の施策を徹底的に規制する方針に向いており、今後日本でもハイエンド端末が売れなくなる可能性がたびたび指摘されている。
 前述のように、Qualcommを含む5G関連各社では5Gの早期展開を目指しており、「より早く5Gを普及させられる技術」が重要だと考えている。DSSはその1つだが、同時にデバイスの種類も5G対応のものがより早い段階で増えることが望ましく、1チップ構成で低コスト化やデザインの自由度が向上するSnapdragon 765/765Gは注目の製品であり、2020年以降の5Gの急展開において重要な役割を果たすと考えられる。
 型番からも分かるように、Snapdragon 7xxシリーズは8xxよりも下位にあたるものの、ミッドレンジの6xxシリーズよりは高い位置付けであり、ほぼ準ハイエンドに相当する製品だと考えていいだろう。日本での普及観測と合わせ、この詳細は改めてフォローしていきたい。
●「Snapdragon 865/765 Modular Platforms」にも注目
 もう1つ注目なのが、「Snapdragon 865/765 Modular Platforms」だ。これはアンテナなど無線モジュールを含む形でアプリケーションプロセッサやモデムをモジュール化してしまい、デバイスにモジュール単位で組み込みを行うことで、デバイスごとにキャリアIOTなどの認証を通さずとも、全てQualcomm側が必要な認証を取得した形でユーザー企業に提供する仕組みとなる。第1弾として、米Verizon Wirelessと英VodafoneがModular Platformへの対応を表明しており、今後も対応キャリアの増加が見込まれる。5G対応デバイス増加の面で期待したい。
 もう1つが超音波を使ったオンスクリーン指紋認証技術の「3D Sonic Max」だ。詳細は2日目以降に改めて紹介されるとみているが、読み取り領域の拡大に2本指同時判定など、使いやすさの面で機能アップしている。顔認証のみの採用に傾倒するメーカーがある一方で、指紋認証はその利便性から変わらず多くのAndroidデバイスで採用が続いており、デザイン自由度を上げるうえで重要な技術となるだろう。
(取材協力:クアルコムジャパン)

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