データサイエンティストの素養は「獣神サンダー・ライガー選手」に学べ

12月5日(木)7時0分 ITmedia NEWS

データサイエンティストに求められる資質(筆者作成)

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 徐々に「データサイエンティスト」という職業が認知されていますが、歴史の浅いIT業界の中でも新しい職業といえます。「21世紀で最もセクシーな職業」と評されたのは2012年であり、職業として確立されているとは言いがたいでしょう。
 現役のデータサイエンティスト本人さえも、キャリアプランを明確に描くことは難しく、将来も不透明なのが現状です。そこで、今後生き残るデータサイエンティストに求められる資質を考えてみました。
 本記事では詳細まで言及しませんが、データサイエンティストには統計、数学、プログラミング以外にもクラウドやSQLなど幅広い技術と知識が求められます。データサイエンティストは従来と異なる職業のため、同じIT業界でもキャリアプランが存在しません。将来にわたって活躍できるデータサイエンティスト像としては、ビジネスシーンを含めて幅広い問題を解決できる人材が考えられます。
 そんな理想のデータサイエンティストになるためには、どうすればいいでしょうか?
 学習面では、文系・理系と区別せずに「文理融合」し、既存の枠に収まらない知識が必要です。産業界でも、業種や職種を越えた「共創」や「コラボレーション」といった横断的な連携が求められています。
 例えば、素材開発において昆虫の構造や仕組みを参考にする事例がありますが、両者の組み合わせが役立つと考えた人はどれだけいるでしょう。データサイエンスは、テクノロジーマニアのものだった時代から、社会の課題解決に使われる時代になろうとしています。将来にわたって活躍できるキャリア構築のため、IT業界以外からも積極的に学ばなければいけません。
 そんなデータサイエンティストのロールモデルとなるような“レジェンド”が、他業界に君臨しているのです。
 そのレジェンドは既存の常識を変え、多くの後進を生み出し、世界中で功績をたたえられている存在でありながら、今なお現役で活躍しています。一体どの業界にそんな人物がいるのか? たった一人しか思い浮かびません。
 その人物こそが、プロレスラーの獣神サンダー・ライガー選手です。
 ごく一部の読者は、データサイエンティストと獣神サンダー・ライガー選手には関連がないと思うかもしれません。前述のデータサイエンティストに求められる素養と比較すれば、両者が完全に一致するのは自明の理です。
 データサイエンティストでもプロレスラーのように筋トレに励む人はいますし、マスク姿のイキリデータサイエンティストも実在するので、実は共通点が多いのです。
 あまたの実績を残し、「リビング・レジェンド」「世界の獣神」と称されるライガー選手の軌跡をたどりながら、データサイエンティストのキャリアプランを学びましょう。
●目的達成に向けた努力と継続的な勉強
 ライガー選手と“関係の深い”山田恵一選手は、高校時代にレスリングで国民体育大会に出場するも、身長が足りないためにプロレスラーになることを諦めかけていました。当時のプロレスラーは高身長が絶対条件で、170センチ(公称)では門前払いされるのが当たり前だったのです。それでも単身メキシコに渡り、他のレスラーを通じて新日本プロレスに入団しました。
 データサイエンティストも幅広い知識や技術が求められますし、プロレスラーと同じく簡単になれるものではありません。
 技術書やオンライン教材なども整備されていますが、それでもデータサイエンティストとして活躍するのは大変なことですし、基礎となるコンピュータサイエンスの知識が必要です。目的を果たすための努力を惜しまず、あらゆる手段を講じることが大切でしょう。
 山田選手は新日本プロレスでデビュー後、藤原喜明選手の関節技や格闘技の「骨法」を学びます。骨法は道場に通いながら一般会員に混ざって学び、徹底的に練習して自分の糧にしました。常に新たな技術を身に付ける姿勢は、就職・転職後も継続的に新たな技術や知識を学ぶ必要があるデータサイエンティストも見習うべきでしょう。
 データサイエンス業界は、常に新しい技術や手法が生まれるので、継続的な勉強が欠かせません。専門外の分野でも、初学者として謙虚に学びましょう。
●異なる環境への順応と、試行錯誤するチャレンジ精神
 デビューから数年後、山田選手は英国への海外遠征に旅立ちます。現地の食事が合わずに体重が減るなどの苦労もありましたが、新たな環境で経験を積み、転機が訪れました。
 データサイエンティストも同様に、セキュリティの都合による客先常駐や、地方工場への長期滞在を経験する場面があります。ここで環境が変わろうとも、成果を出すことが次のチャンスにつながります。データサイエンスが役立つのは、自社の業務だけではありません。場所や環境にとらわれずにスキルを生かす方法を考えましょう。
 英国遠征後に山田選手は消息不明となり、入れ替わるようにして獣神ライガー選手(当時)がデビューします。獣神ライガー選手は全身コスチュームで動きにくく、マスクと長髪で視界も悪いためプロレスには不向きなスタイルでした。
 それでも試行錯誤しながら、プロレスラーとしての地位を築いていきます。データサイエンティストも未経験の分野への挑戦や試行錯誤は避けられません。ここで「やったことがない」「意味がない」「無謀だ」と否定しては、何も進みません。先入観を持たずにまずはやってみる、成功するまで挑戦するという泥臭い作業も必要です。
 また、消息不明になった山田選手について、ライガー選手は「山田は死んだ。リバプールの風になった」という名言を残しています。データサイエンティストも数字やデータで説明だけでなく、相手の感情を揺り動かす説得力が求められます。「リバプールの風」のように、相手の気持ちに訴えかける表現を用いましょう。人間はデータという事実だけでは動きません。ファンの心を動かすライガー選手のような表現力が求められます。
●自ら活躍の場を広げ、人脈や信頼関係を構築
 ライガー選手は日本のみならず、米国、欧州、メキシコなどにも参戦し、現地でも絶大な人気を誇ります。これはプロレスが、国籍や言語、人種を越えた共通認識であることの現れです。データサイエンティストが活躍する場も日本に限りません。外国でのビジネスはもちろん、解決すべき社会問題は世界中に存在します。
 また、海外(特に米中)の事例や論文、技術発表などの情報収集も欠かせません。このように活躍の場を自ら広げて勉強会やセミナーに参加するなど、視野を広く持つことが大事です。
 ライガー選手は団体の垣根を越えていろいろな選手と試合を重ねて、プロレス界全体(特に小柄な選手の活躍)を活性化させました。当時の他団体は「インディー」と呼ばれていましたが、ライガー選手は「インディーという呼び方は嫌い」「いろいろなプロレスがあっていい」と、自ら他団体のリングで戦いました(奥様がプロレスファンで、他団体や選手を紹介されたそうです)。こうした取り組みについて、ライガー選手は「プロレスが好きだからやっている」「他団体の選手に刺激を受けて、自分を引き上げてもらった」と公言しています。
 産業界でも大企業がベンチャーを下請け扱いしたり、IT部門を外注先に丸投げするという問題があります。発注元と受注先という上下関係ではなく、平等な立場でリスペクトしながら切磋琢磨(せっさたくま)することが大事です。企業もデータサイエンティストも、本来の目的はお互いの強みを生かして伸ばすことです。企業、教育機関、官公庁、自治体など立場を越えて、本当の意味での「共創」を実現しましょう。
●相手に合わせて自分を変える、自分の仕事を幅広く知ってもらう
 プロレスにはさまざまなレスラーや団体があり、卑怯な反則をいとわないヒールレスラーもいれば、コミカルな試合を持ち味とする団体もあります。ライガー選手は他団体での試合ではあえて嫌われ役になったり、所属する団体とは異なるスタイルの試合でも、相手に合わせて魅力を引き出すことを心がけています。
 自分だけが目立って勝つのではなく、「他団体の選手や魅力を知ってほしい」という相手へのリスペクトは、データサイエンティストも見習うべきでしょう。データサイエンティストが外部で業務を行う場合にも、「自分の知見を他人に教えてやる」という姿勢では、誰も同調してくれません。自分から他業種の現場に飛び込んで、データサイエンスを生かす方法を教えてもらうくらいの気構えで臨みましょう。相互理解や業務知識の共有不足は、失敗の要因になります。
 10〜20代の読者にとっては、ライガー選手は「バラエティー番組に出てくるお仕置き役」というイメージがあるかもしれません。ライガー選手は「プロレスラーだからプロレス以外はやらない」と仕事の幅を限定せず、新たなファン層を開拓すべく異なる分野にも活躍の場を広げています。最近ではTwitterを始め、自分で作った朝食の写真をアップするなど、情報発信にも余念がありません。データサイエンスも異分野に応用する柔軟性が必要で、そのために幅広くいろいろな人にその重要性を知ってもらうことが大切です。
 これからのデータサイエンスは、PCを使った分析にとどまりません。プロレスラーがプロレスだけやればいい時代が終わったように、データサイエンティストが分析だけやる時代も終わろうとしています。
●ベテランになっても第一線で活躍する
 ライガー選手はデビューから30年経っても常に第一線で活躍して、現在でも道場に住み込んで若手に混ざって練習するほどです。チャンピオンベルトからは離れていますが、巡業バスで日本各地を回りながら、積極的に海外の試合にも出場しています。道場に身を置き、練習熱心な若手に刺激を受けることで、自身を奮い立たせているのです。
 データサイエンティストも、若手や学生から刺激を受けることは多いでしょう。一方で、自身の鍛錬や情報収集を怠ってはいけません。最新技術を身に付けた学生や若手に対して、これまで培った経験やノウハウで勝負するのもよいでしょう。プロレスラーもデータサイエンティストも、初心を忘れず努力し続ける必要があります。
 こうして数々の伝説を残したライガー選手は、プロレス界を大きく変えました。小柄な選手が活躍できなかったプロレスの常識を覆したこともあり、ライガー選手に憧れてプロレスラーになった選手は国籍を問わず多数います。現在データサイエンティストを取り巻く課題は多々ありますが、ライガー選手のように自身や業界を変えていくチャンスは誰にでもあります。
 今年になってライガー選手は「55歳(※)になって伸びしろがなくなった。『まだ戦える』といわれるうちに引退したい」と宣言しました。
※:獣神ライガー選手は1989年に永井豪宅で誕生していますが、本人の発言をそのまま表記します
 現在データサイエンティストとして活躍する方々は、同じことをいえるでしょうか。ライガー選手と同じくらい業界を変えたでしょうか。まだまだデータサイエンティストは、「伸びしろがなくなった」といえるほど、世界を変えていません。社会問題の解決など、データサイエンティストが活躍する場はいくらでもありますし、それが今後のキャリアプランにつながるでしょう。
 他業種に目を向けると、キャリアプランの参考になる先人はいくらでもいます。特定の分野や業界という狭い視野にとらわれてはいけません。
 ライガー選手は「プロレスが好き」「プロレスは難しいから面白い」と語り、30年かけてプロレスを変えました。データサイエンスも難しいから面白いものですし、データサイエンティストは世の中を変えられる職業です。新しい職業である以上、今までにないことを求められますし、過去の誰かと同じ道をたどることはできません。
 獣神サンダー・ライガー選手は、20年1月4日と5日(イッテンヨン・イッテンゴ)の東京ドーム大会で引退を迎えます。偉大なる“レジェンド”に姿を重ねて、自分のキャリアを見つめ直してはいかがでしょうか。

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