冷たいを科学する。身体中に広がるTRPチャネルって?

12月26日(木)9時0分 マイナビニュース

寒さも本格的になり、鍋が美味しい季節になりました。キムチ鍋やチゲ鍋を食べると、辛くないものより「あたたかく」感じませんか? 何気ないことですが、その裏側には生命の仕組みを利用した人間の知恵が隠されています。それは今では発展して、化粧品にも応用されています。
なぜ人は、冷たさや熱さを感じるのか?

なぜ、わたしたちは「冷たい」、「熱い」と感じるのでしょうか? それは、温度情報が、わたしたち人間にとって、安全に生きるために必要なものだからです。

例えば、「冷たい」の感覚を感じることが出来なかったら、冬場の寒さを感じられなくなります。それは、体温を37℃付近に保っていなければならないわたしたち人間にとって、とても危険なことだといえます。わたしたちが、冬場にとても寒く辛い思いをするのは、それをしのぐために服を着なさい、温まりなさいという身体からのメッセージを受けているということなのです。

「熱い」も同様です。熱すぎるものに気づかないと火傷をしますし、酷い場合は命を危険にさらすことにもなります。これらの感覚は、わたしたち人間だけに備わっている特別なものではなく、犬や猫、鳥、虫に至るまで動物に備わっている生きるための基本的な感覚なのです。人間の感覚は五感と呼ばれますが、「温度を感じ取る感覚」は五感とは別の感覚であり、むしろ生命にとって五感よりもっと基本的な感覚だと言っても過言ではありません。

TRPチャネルとその機能

「温度を感じ取る感覚」は、1997年にわたしたちの細胞が持つセンサーが発見されることにより、そのメカニズムが科学的に理解されました。それが、熱に反応する「TRP(トリップ)V1」です。

おもしろいことに、このセンサーは唐辛子の主成分のカプサイシンにも反応することが同時に発見されたのです。この発見は、「温度」と「化学物質」を同時に検知することができるセンサーをわたしたちが持ち、実は人類が伝承的に利用してきたということを明らかにしました。

唐辛子やショウガは、寒さをしのぐ料理に使われます。それらの成分が「TRPV1」に反応し、身体がポカポカとすることで寒さが和らぐのです。一方、冷たい温度に反応する「TRPM8」も追って発見されましたが、こちらはミントの主成分のメントールに反応することが明らかになりました。古くからミントティーを愛飲していた砂漠の民は、このメカニズムを利用して砂漠の熱さをしのいでいたのです。このような細胞の感覚センサーをまとめて「TRPチャネル」と呼び、今では、わたしたちは10種類の役割が異なる「TRPチャネル」をもつことがわかっています。

マンダムでのTRPチャネル研究とその成果

マンダムでも、そんな細胞の感覚センサーであるTRPチャネルの研究を重ねて、快適に使用できる製品の開発につなげています。

化粧品を使ったときに、ヒリついたり、チクチクしたり、不快な感覚刺激を感じたことはありませんか? 研究チームは、そのような感覚刺激を起こす成分の研究を進めていく中で、「TRPV1」と「TRPA1(ワサビやカラシの主成分に反応する)」の反応で感覚刺激の度合いをはかることが出来ることを見出しました。

この評価方法は、ピリピリとした不快な感覚刺激を低減した「ヘアカラー」や目にしみにくい「クレンジングローション」を実現につながりました。

夏の暑い日に、スーッと爽快な感覚を感じたくて、コンビニでペーパー化粧品を購入した経験はありませんか? 砂漠の民はミントティーを飲んで熱さをしのぎましたが、今では、メントールが配合され身体に清涼感を感じさせてくれる化粧品が発明されています。

しかし、人によっては冷たさを通り過ぎて痛みを感じてしまい、そのような化粧品を敬遠しがちになります。それは、メントールの量を増やすと、冷たい温度に反応する「TRPM8」だけでなく、不快な刺激を引き起こす「TRPA1」も反応してしまうからなのです。そこで、わたしたちは「TRPM8」と「TRPA1」の反応で、冷たさと不快刺激の度合いをはかる方法を開発しました。この方法を使って、「ユーカリプトール」や「イソボルニルオキシエタノール」が「TRPA1」の反応を抑えることで、不快な刺激の少ない快適な清涼感につながることを発見しました。
今後の展開

わたしたちは、細胞の感覚センサー「TRPチャネル」が、どのような仕組みで「感覚をコントロールしているのか」だけでなく、どのようにして「皮膚の細胞をコントロールしているのか」にも着目して研究を進めています。

「TRPチャネル」はわたしたちの身体のさまざまな場所で、温度や化学物質のセンサーとして重要な働きをしています。この「TRPチャネル」の研究は、生活者のより快適な生活の創出につながるものと考え、研究チームでは、今後もさらにそのメカニズムの解明と活用に取り組んでいきたいと思っています。

著者プロフィール
藤田郁尚(ふじた・ふみたか)
マンダム 基盤研究所
大阪大学大学院 薬学研究科先端化粧品化学(マンダム)共同研究講座 招へい准教授

監修者
富永真琴(とみなが・まこと)
医学博士
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 生理学研究所 細胞生理研究部門
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 生命創成探究センター 温度生物学研究グループ 総合研究大学院大学 生理科学専攻 教授

マイナビニュース

「キムチ」をもっと詳しく

「キムチ」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ