落合陽一×三浦崇宏(広告クリエイター)「『広告』はこれからどう変わっていくのか?」【後編】

12月27日(木)6時0分 週プレNEWS

筑波大学で講義をする落合陽一(右)とPR/クリエイティブディレクターの三浦崇宏(左)
筑波大学で講義をする落合陽一(右)とPR/クリエイティブディレクターの三浦崇宏(左)

設立から2年足らずの間に、NTTドコモ「dカーシェア」、ワーナーミュージック「ケンドリックラマーの黒塗り広告」、日本テレビ「世界一受けたい授業THE LIVE 恐竜に会える夏」、メルカリ「新聞折り込みチラシ」など、名だたる大手を含む多くの企業の広告やプロジェクトを手掛けてきたThe Breakthrough Company GO。

その代表で自身もPR/CreativeDirectorを務める三浦崇宏(みうら・たかひろ)は、大手広告代理店の博報堂で10年間研鑽を積んだ後に独立し、起業。「変化と挑戦にコミットすること」が自社の存在意義だと言い切る。

三浦が広告クリエイターとして重視している「概念操作」という発想、技術について語った前編記事に続き、後編では「広告代理店」と「広告クリエイター」の未来、若者は大企業とベンチャーどちらを選ぶべきか......など、よりディープな話題を掘り下げていく。

* * *

落合 三浦さんはアーティスティックに仕事をするのと、お客さんに応えていくのと、どっちが難しいですか?

三浦 僕はどういう相談が来ても、「社会に対する変化と挑戦」っていう"変換器"に無理やり入れちゃうんだよ。結果、それは僕の表現であり、GOのコンテンツになると同時に、顧客の利益を回収することにもなるんだよね。

ただ、内発的動機がアーティストに比べて強いかと言ったら、そうでもないと思います。僕が一番嫌ってるのが、広告屋さんとかで、ものが売れたかどうか分からないままに「でも、いいCMだったでしょ?」ってお金集めてる人。商品が売れたかどうかに興味もなくCMの自慢ばかりしてるんだったら、さっさと映画監督になったら?って。CMは、あくまで仕事のアウトプット。顧客であるブランドと社会の接点をつくるのが僕たちの仕事だから。

落合 確かにね。

三浦 これ、わかってない人がいるかもしれないけど、広告代理店って基本"不動産業"なんですよ。例えばフジテレビとか、朝日新聞とかの広告の土地を押さえて、そこに企業さまの広告を乗っけていくっていう土地の取引、面の取引でお金を儲けているわけです。クリエイティブやマーケティングは、そのおまけでつくられている商売なんですね。僕はクリエイティブやマーケティングこそ価値の本質だろうと思って、それで独立したんだけど。

で、広告会社はこれからどうなっていくかという話をすれば、電通や博報堂のような、メディアの中の土地を転がすことで商売をしている広告代理店は、メディアのベンチャーキャピタルみたいになると思います。

例えば、電通が「筑波大学マラソン大会」というイベントをメディアとして押さえていたとしたら、そこをめちゃくちゃ価値化しまくる。落合陽一が走るとか、いろんな新しいテクノロジーの義足をそこで発表するとか、そういうコンテンツとして機能するイベントにして、ただのマラソン大会だったら5000円でも広告出したくなかったのに、「これはすごく注目されそうだから、100万円払ってもいいよ」と言われるものに持っていく。つまり、メディアの価値をどんどん上げていくのが広告代理店の仕事なわけです。

2017年、2018年と2回にわたり展開された、週刊少年ジャンプ50周年×東京メトロのコラボ企画。各駅にそれぞれ独自のポスターが貼り出され、スタンプラリーになっている(写真は永田町駅×『ドラゴンボール』のフリーザ)
2017年、2018年と2回にわたり展開された、週刊少年ジャンプ50周年×東京メトロのコラボ企画。各駅にそれぞれ独自のポスターが貼り出され、スタンプラリーになっている(写真は永田町駅×『ドラゴンボール』のフリーザ)

一方で、僕らのようにクリエイティブやアイデアこそ広告の価値だと思っている側にとっては、今後の広告はどうなるのか?

昔は、とにかくいいCMをつくるのがたったひとつのアウトプットだったわけです。それがここ10年で、プロモーションや戦略も組み立てられるようになった。CMだけじゃなく、今はウェブムービーもできるし、ウェブサイトを作ってそこにユーザーインタビューを載せまくって、それが購買意欲にどう結びつくか数字で解析したり、さらにイベントを組み合わせたり、といったことまでできるようになっています。

これから先、向こう3年間くらいは、CMもつくるんだけど、そのアイディアを武器に顧客とビジネスモデルやジョイントベンチャーをいっしょにつくることもできるし、とかいうように、要はアウトプットの領域がさらにどんどん広がって、"事業クリエイティブ"できる人が求められていく。そんな感じに変わっていくでしょう。

2018年10月、週刊ヤングジャンプ連載中の人気漫画『キングダム』最新52巻の発売記念キャンペーン。「キングダムはビジネス書だ」という異色のメッセージ、ビジネス書テイストに変身した既刊のインパクトが大きな話題に
2018年10月、週刊ヤングジャンプ連載中の人気漫画『キングダム』最新52巻の発売記念キャンペーン。「キングダムはビジネス書だ」という異色のメッセージ、ビジネス書テイストに変身した既刊のインパクトが大きな話題に

落合 なるほどね。ちなみに、さっき学生さんたちに聞いたら、広告会社に行きたいっていう子がひとりもいなかったんだけど......。これはブラックというイメージが広がったせいもあるだろうけど、三浦さんが就活していた時代は、広告業界は花形オブ花形でしたよね?

三浦 確かに、そういう時代がありました。

落合 大企業、一部上場企業に行きたい人はどれくらいいますか? ......あんまりいないですね。せいぜい20%くらい。たぶんこれが現実で、もっとイケてて、流行ってて、年収もちゃんとしてるベンチャーがあればそっちに行きたいとか、できるだけ自分のリソースを最適化しながら生きて行きたいとか思ってる人がおそらく多いんだ。明らかに時代が変わったなと思う。3年前に同じ質問したら、大企業に行きたい人が半分以上いたんです。

三浦 今の時代、大企業って"大学院"なんですよ。今ここにいる人たちって、筑波大学を出る時にはなんらかの専門性を持ってる人たちですよね、きっと?

落合 コードが書けるとか、実験と研究ができるとかね。

三浦 うん。なんらかの専門性を持って出ていくなら、すぐにチャレンジしたほうがいい。ただ、世の中の文系、文学部系の4年生って、フランス語がちょっと話せるとか、英文学の古典を原書で30冊読んだとか、専門性と呼ぶにはあまりに不安定な、だがなんとなく豊かな教養を持っている......っていうレベルなんです。

そういう人たちにとっては、広告代理店で5年間コピーライティングの技術を学ぶとか、大手商社で石油取引のイロハを全部学ぶとか、そういう専門性の獲得の場として大企業を見ていただいてもいいんじゃないかな。

落合 あー、わかる! その通りだよね、確かに。

三浦 そういう意味で「大企業=大学院」なんだよ、今の社会において。コードを書けるのと同じくらい、例えば「役所のハンコをスムーズにもらう技術」って大事だし。そういうものを大企業で5年かけて学ぶことには一定の価値があると思う。

世界を変えるための技術を学ぶのが理系学部だとすると、そこを出た人たちは、ちゃんとサバイバルナイフを持って世に出て行くわけよ。一方、文系学部に求められるのは世界がどうあるべきかの理念の開発で、そんなの4年じゃ結論出ないわけ。

ちなみに僕の場合は10年間、いろんな人と死ぬほど会食して......僕は酒飲めないんで、いわゆる接待は一切やらないんですけど。で、死ぬほど企画して、撮影して、その結果「僕は変化と挑戦にコミットするスタンスをとろう」っていう結論を出して、"博報堂大学院"を卒業できたわけです。

落合 なるほどね。PhD(博士課程)を出るときもまさにそんな感じで、自分のスタンスが決まるんですよ。自分がしたいことが明らかになれば、社会にコミットできるじゃないですか。

三浦 そうそうそう。

落合 話を広告業界に戻すと、広告って大切だと僕は思うんです。ブランドを高めるっていうのが広告の本質的な仕事ですよね。ブランディングという行為そのものが支持を失ったとしたら、世の中のものがたぶんどんどんダサくなっていくと思うんですけど、それがどういうことかみんな想像できてないんじゃないかなあ。要は20年前の中国みたいになるってことですよ。

言ってしまえば、以前の中国ってあらゆるものがダサかったと思うんですよ。それが今はカッコよくなってきた。あの独特のカッコよさができた理由って、単純にそこにお金をつけたりするのが大切だとみんながわかってきたからなんだよね。

三浦 これね、すごくシンプルな話で、どんなプロダクトでも業界でも、機能で勝負する限りはコモディティ化しちゃうんですよ。この間調べたんだけど、炊飯器をつくってる会社って日本に180社くらいあるんです。すごいでしょ?

で、その180社がみんな機能を追求していくと、全っ部、同じ炊飯器にたどり着く。だけれども、そうじゃない炊飯器が欲しいという人間のために、デザインやアートが進化していって、いろんな炊飯器が生まれるんです。そして実は、その中から次の時代のスタンダードが生まれる。

落合 なるほど。俺だったらきっと、ギャバジンの布テープでくるんだ炊飯器を持って、「熱いっ!」て言う。自分のかっこよさを探す。

三浦 うん。で、その炊飯器を欲しがる人って世界中に必ずいるし、それが世界に1個しかないものだと確証が得られれば、その瞬間に普通の炊飯器以上の価値を持つわけじゃん。「価値」って本当は、ものの中にはないから。

落合 そういう価値観でやれるかどうかってところだと思うんだけど。

三浦 広告クリエイターの本質論を言うと、例えば、今どきSNSが何ひとつ見られなくて、電話しかできないヤバい携帯があるとする。コンサルタントだったら「これ、社会にニーズがないのでやめましょう」って言えるんですよ。でも広告クリエイターは、それのいいところを世の中にわかってもらうための端的な言い方を死ぬほど考えるんですよ。「大切な人と会話するための電話」とか「無人島に持っていくための電話」とか。

落合 そうやるとすげー変わりますね。

三浦 そうそうそう。とにかくなんらかの良き価値、世の中が切望する価値をめちゃくちゃ考えて言語化するのが、広告クリエイターの一番大事な仕事です。それが1個発見できると、いろんなものが全部動き出す。すげえ簡単に言うと「ものは言いよう」ってことなんだけど(笑)。

落合 ちなみに、平成が終わると仕事は増えそうですか?

三浦 めちゃくちゃ増えるでしょうね。要はみんな、変わるきっかけを求めてるから。背中を押されたがってるから。

■「#コンテンツ応用論2018」とは? 
本連載はこの秋に開講されている筑波大学の1・2年生向け超人気講義「コンテンツ応用論」を再構成してお送りします。"現代の魔法使い"こと落合陽一学長補佐が毎回、コンテンツ産業に携わる多様なクリエイターをゲストに招いて白熱トークを展開します。

●落合陽一(おちあい・よういち) 
1987年生まれ。筑波大学学長補佐、准教授。筑波大学でメディア芸術を学び、東京大学大学院で学際情報学の博士号取得(同学府初の早期修了者)。人間とコンピュータが自然に共存する未来観を提示し、筑波大学内に「デジタルネイチャー推進戦略研究基盤」を設立。最新刊は『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる 学ぶ人と育てる人のための教科書』(小学館)

●三浦崇宏(みうら・たかひろ) 
PR/クリエイティブディレクター。1983年生まれ。2007年に博報堂に入社。博報堂、TBWA/HAKUHODOのマーケティング、PR、クリエイティブ部門を経て、17年に独立し、The Breakthrough Company GOを設立。「表現を作るのではなく、現象を創るのが仕事」が信条。日本PR大賞、カンヌライオンズPR部門ブロンズ・ヘルスケアPR部門ゴールド・プロダクトデザイン部門ブロンズ、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSイノベーション部門グランプリ/総務大臣賞など受賞多数

構成/前川仁之 撮影/五十嵐和博 協力/小峯隆生

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