新型コロナウイルスで使用される「mRNAワクチン」とは何か?

12月29日(火)18時17分 財経新聞

 新型コロナウイルス肺炎感染者が中国の武漢で初めて発見されてから、およそ1年が過ぎた。そして待ちに待ったワクチンの接種が欧米では既に始まっている。今回初めて実用化されたという「mRNAワクチン」は、これまでのワクチンと何が違うのだろうか?そしてどのようにして効くのだろうか?

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 1年前はまだ遠い外国で起こっている恐ろしい感染症の話だった新型コロナ肺炎は、あっという間に世界に広がり、私たちの生活を変えてしまった。その間、世界中の研究者たちは治療法、治療薬、そしてワクチンの開発を行ない続けた。

 たった1年というスピードでワクチンが実用化されたことは、驚異的なことだろう。やっとワクチンができた安心感とともに、耳慣れない名前のワクチンが本当に安全なのだろうかという不安を持っている人も多いだろう。

 これまでのワクチンは、大きく分けて2種類に分類される。弱毒化ワクチン(生ワクチン)は、発症しないように病原体を弱毒化したものを接種する。ポリオワクチン(小児麻痺)やはしか、水疱瘡などのワクチンが該当する。もう1つは、不活化ワクチンだ。これは処理により殺した病原体、または病原体の一部を接種する。

 そして今回新しく登場したのが、前述の2つとは違うmRNAワクチンだ。

 まずmRNA(メッセンジャーRNA)について簡単に説明しよう。DNAは、生き物の体や必要な物質全てについての設計図だ。その設計図の中から、必要となる部分だけを写しとったものがmRNAだ。このmRNAの設計図通りにアミノ酸を繋いで、タンパク質は作られていく。読み終えられたmRNAは分解され消失する。地球上の全ての生き物は、この仕組みを利用して生命を営んでいる。

 今回実用化されたmRNAワクチンは、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の設計図を使用している。スパイクタンパク質は、新型コロナウイルス表面にあり、人の細胞に感染するときの足掛かりとなるものだ。このスパイクタンパク質を攻撃する免疫を獲得できれば、感染を防げるという仕組みだ。

 脂肪の膜に閉じ込めたmRNAをワクチンとして接種すると、人の細胞は取り込んだmRNAの設計図をもとにスパイクタンパク質を合成する。合成したスパイクタンパク質の特徴を免疫細胞に覚えさせることで、本当のウイルスが侵入してきたときに総攻撃を仕掛けて撃退するのだ。ワクチン接種では、ウイルス本体は作られないため、発症する心配はない。ワクチンは欧米の発表では高い免疫効果を見せたということだ。

 実はmRNAワクチンの技術自体は、ここ10数年の間に少しずつ進歩してきたもので、研究者にとっては馴染みのあるものらしい。これまで癌の治療や新規の感染症に利用するため、研究が進められてきていた。今回の新型コロナウイルス肺炎に対応するために技術の実用化が一気に進んだと言えるだろう。

 対象となるウイルスの遺伝子情報さえ手に入れられれば、mRNAワクチンの開発は短期間で進む。mRNAを合成する技術により、ワクチンに用いる「設計図」を得られるからだ。さらに、もしウイルスが変異したとしても、変異した部分を変えたmRNAを合成すれば良い。

 mRNAはもともと体内に存在するものであり、不要になれば分解される。副反応が起こるとすれば、作られたタンパク質に対するもので、これまでのワクチンと同様の注意は必要になるだろう。また分解されやすさゆえ、超低温での保管が必要なことは取扱のしにくさとなるだろう。

 今後登場してくるであろうものも含め、これらのワクチンが今後新型コロナウイルスとの戦いへの切り札となっていくことを期待したい。

財経新聞

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