稲盛和夫が渡した「ただの紙切れ」に部下のやる気が爆上がりしたワケ
稲盛和夫が渡した「ただの紙切れ」に部下のやる気が爆上がりしたワケ
Photo:JIJI
優秀な人材の流出に悩む組織は少なくない。「経営の神様」稲盛和夫は、いかにしてメンバーのやる気を引き出したのか? 普通であればヒンシュクを買いかねない「大事なもの」が抜け落ちた表彰状から、リーダーシップのヒントを読み解く。(イトモス研究所所長 小倉健一)
社員はなぜ会社を去るのか?
リーダーシップにおいて大切なことは、他の人たちを応援してやる気を出させ、より良い成果を引き出すことだ。お金や職位の報酬だけでなく、それ以外の報酬も使ってこれを実現できる。
今回は、スタッフの仕事を認めてあげることがリーダーにとってどれだけ大事か、そしてそれが社員のモチベーションにどう影響するかについて考えてみたい。
今、多くの組織が頭を悩ませ続けている問題は、スタッフの離職ではないだろうか。厚生労働省『令和4年雇用動向調査結果の概況』によれば、常用労働者の離職率は15.0%、パートタイム労働者においては、23.1%にのぼっている。
また、離職にともなう中途採用者の採用コスト(採用に関わる内部コスト、諸経費、人材会社利用によるコスト)は、2019年度の中途採用者1人当たりの平均採用コストは103万3000円(株式会社リクルートが運営する就職みらい研究所『就職白書2020』)だった。さらに、経験豊富で優秀な人材の流出には、コストだけでは見えない部分もあるだろう。
私のいた出版業界では、コロナが明けて業績の明暗がはっきりしてきた。特に、デジタル分野で差は開く一方だ。私はかつての編集部で採用について業務の一環として関わっていたので、採用の相場感がわかる。
時折、求人広告で出版社ごとの給与条件を確認するのだが、市場価格よりも格段に安い価格で求人を出して、さらに採用ができていないのでずっと募集をかけている出版社があったりする。求人をかけている以上、現場は人手不足なはずであり、かといって高い給料を出すと赤字が拡大してしまうのだろう。現場の苦労が思いやられる。
しかし、そんな会社を笑ってはいられないだろう。中長期にわたって、業績が好調な会社など珍しい部類だ。組織としては、そんな窮状に陥る前に、従業員の会社へのコミットメントや忠誠心を高めておく必要がある。
京セラ、KDDI(当時DDI)を創業し、日本航空を復活させたことで、「経営の神様」と呼ばれた稲盛和夫氏。稲盛氏は社員に報いようとしていたのか。京セラを稲盛氏とともに創業した青山政次氏が著した「心の京セラ二十年」(非売品)の『表彰状第一号(昭和三十四年五月二十二日)』の項目に、京セラ創業当時の様子が描かれている。
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