【映画レビュー】ドラマーに注目したドキュメント『カウント・ミー・イン 魂のリズム』に見た、ドラマーのドラム愛
ロケットニュース242024年3月22日(金)9時0分
バンドの花形といえば、ボーカルやギターである。「フロントマン」と言われる通りにステージの前方に立ち、パフォーマンスで観客を魅了する。ライブの感動と興奮はフロントマンにかかっているといっても過言ではない。
だが、その後ろでパフォーマンスを下支えしているのがドラマーである。そんな影の立役者、縁の下の力持ちにフォーカスを当てたドキュメンタリー映画『COUNT ME IN(カウント・ミー・イン) 魂のリズム』が2024年3月15日から全国で上映されている。
この作品を見て、私(佐藤)はドラマーの飽くなき探求心と、ドラムへの思いの深さを知った。
・ドラマーを駆り立てるもの
この作品は、2021年イギリスで制作された、ロックのドラマーにスポットを当てたドキュメンタリーである。
チャド・スミス(Red Hot Chili Peppers)、ニコ・マクブレイン(Iron Maiden)、スチュアート・コープランド(The Police)、ロジャー・テイラー(Queen)など、ロックの歴史を築いてきた偉大なドラマーたちにインタビューを行い、自身のキャリアや影響を受けた音楽・ドラマーについて深堀りしている。
この手の音楽ドキュメントでドラマーにフォーカスを当てた作品は珍しい。やはり注目を集めるのは、バンドを主導するボーカルやギタリスト。彼らの口から語られる逸話は数多く存在するのだが、ドラマーのドラムに関するこだわりを探る試み稀である。それだけにドラマー視点で語られるドラム談義はとても面白い。
なぜ、この作品を作るに至ったのか? 監督のマーク・ロー氏はドラマーを駆り立てるものは何なのか? それに魅了されたと語っている(パンフレットより)。
・似通った原体験
ドラマーたちの原体験は非常によく似ている。作中で誰もが幼少期に似たような経験を通して、ドラムを叩く道へと歩み始めている。
往年の偉大なロックドラマーは子どもの頃(1950・60年代)、テレビショーで流れるジャズミュージシャンの演奏にインスパイアを受け、「これになりたい!」とドラマーを志す。
もう少し若い世代、たとえば故テイラー・ホーキンス(Foo Fighters)やシンディ・ブラックマン・サンタナ(Santana / Lenny Kravitz)らは、ビートルズのリンゴ・スターやザ・ローリングストーンズのチャーリー・ワッツなどに影響を受けて、ドラムの魅力に開眼していった。
そうして「自称ドラマー」となった子どもたちは、鍋やフライパンをはじめとする料理器具を叩きまくるのだ。子どもの純真な欲求はとどまることを知らず、家中のありとあらゆるものを叩きに叩く。
見かねた親御さんは、より良い方向に導くべくドラムセットを買い与えるのである。実際の映像かどうか説明はなかったが、サプライズでドラムセットをプレゼントされて号泣する子どもたちの姿がとても印象的だった。
こうして、彼らは叩く人生を歩んでいく。彼らは子どもの頃に味わった感動を、ただ純粋に追い求めているように見える。
・リズムなくして……
これらエピソードと共に流れる映像がまたすごくて、音楽ファンには堪らない。ロックドラムを語る上で欠くことのできない存在ジョン・ボーナム(Led Zeppelin)や、独創的でかつ破壊王の異名をとるキース・ムーン(The Who)など、多くのレジェンドドラマーのライブ映像が惜しみなく使われている。
ロックに多大な影響を与えたといわれる古(いにしえ)のドラマーたちは、なぜ崇められているのか? のちのロックにどんな影響を与えたのか? それらを、現役のドラムの達人たちが細かく説明してくれるので、より深くロックとドラムを理解できるのである。
ロック好き、音楽好きならもちろん、あまり詳しくなくても全然大丈夫。純粋にドラムを愛し、叩くことに自らを捧げるその姿は美しくカッコイイ。全編通して清々しさを覚える作品である。興味のある人はぜひ見て欲しい。ちょっとドラマーに憧れてしまうかも。
パンフレットの背表紙の言葉が大変素晴らしいので、ご紹介して本稿を閉じよう。
「YOU CAN HAVE RHYTHM WITHOUT MUSIC
YOU CAN’T HAVE MUSIC WITHOUT RHYTHM」
(音楽はなくてもリズムできるが、リズムなくして音楽できない)
参考リンク:COUNT ME IN 魂のリズム
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
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だが、その後ろでパフォーマンスを下支えしているのがドラマーである。そんな影の立役者、縁の下の力持ちにフォーカスを当てたドキュメンタリー映画『COUNT ME IN(カウント・ミー・イン) 魂のリズム』が2024年3月15日から全国で上映されている。
この作品を見て、私(佐藤)はドラマーの飽くなき探求心と、ドラムへの思いの深さを知った。
・ドラマーを駆り立てるもの
この作品は、2021年イギリスで制作された、ロックのドラマーにスポットを当てたドキュメンタリーである。
チャド・スミス(Red Hot Chili Peppers)、ニコ・マクブレイン(Iron Maiden)、スチュアート・コープランド(The Police)、ロジャー・テイラー(Queen)など、ロックの歴史を築いてきた偉大なドラマーたちにインタビューを行い、自身のキャリアや影響を受けた音楽・ドラマーについて深堀りしている。
この手の音楽ドキュメントでドラマーにフォーカスを当てた作品は珍しい。やはり注目を集めるのは、バンドを主導するボーカルやギタリスト。彼らの口から語られる逸話は数多く存在するのだが、ドラマーのドラムに関するこだわりを探る試み稀である。それだけにドラマー視点で語られるドラム談義はとても面白い。
なぜ、この作品を作るに至ったのか? 監督のマーク・ロー氏はドラマーを駆り立てるものは何なのか? それに魅了されたと語っている(パンフレットより)。
・似通った原体験
ドラマーたちの原体験は非常によく似ている。作中で誰もが幼少期に似たような経験を通して、ドラムを叩く道へと歩み始めている。
往年の偉大なロックドラマーは子どもの頃(1950・60年代)、テレビショーで流れるジャズミュージシャンの演奏にインスパイアを受け、「これになりたい!」とドラマーを志す。
もう少し若い世代、たとえば故テイラー・ホーキンス(Foo Fighters)やシンディ・ブラックマン・サンタナ(Santana / Lenny Kravitz)らは、ビートルズのリンゴ・スターやザ・ローリングストーンズのチャーリー・ワッツなどに影響を受けて、ドラムの魅力に開眼していった。
そうして「自称ドラマー」となった子どもたちは、鍋やフライパンをはじめとする料理器具を叩きまくるのだ。子どもの純真な欲求はとどまることを知らず、家中のありとあらゆるものを叩きに叩く。
見かねた親御さんは、より良い方向に導くべくドラムセットを買い与えるのである。実際の映像かどうか説明はなかったが、サプライズでドラムセットをプレゼントされて号泣する子どもたちの姿がとても印象的だった。
こうして、彼らは叩く人生を歩んでいく。彼らは子どもの頃に味わった感動を、ただ純粋に追い求めているように見える。
・リズムなくして……
これらエピソードと共に流れる映像がまたすごくて、音楽ファンには堪らない。ロックドラムを語る上で欠くことのできない存在ジョン・ボーナム(Led Zeppelin)や、独創的でかつ破壊王の異名をとるキース・ムーン(The Who)など、多くのレジェンドドラマーのライブ映像が惜しみなく使われている。
ロックに多大な影響を与えたといわれる古(いにしえ)のドラマーたちは、なぜ崇められているのか? のちのロックにどんな影響を与えたのか? それらを、現役のドラムの達人たちが細かく説明してくれるので、より深くロックとドラムを理解できるのである。
ロック好き、音楽好きならもちろん、あまり詳しくなくても全然大丈夫。純粋にドラムを愛し、叩くことに自らを捧げるその姿は美しくカッコイイ。全編通して清々しさを覚える作品である。興味のある人はぜひ見て欲しい。ちょっとドラマーに憧れてしまうかも。
パンフレットの背表紙の言葉が大変素晴らしいので、ご紹介して本稿を閉じよう。
「YOU CAN HAVE RHYTHM WITHOUT MUSIC
YOU CAN’T HAVE MUSIC WITHOUT RHYTHM」
(音楽はなくてもリズムできるが、リズムなくして音楽できない)
参考リンク:COUNT ME IN 魂のリズム
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
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