配信サービスやFOX&Huluの吸収…止まらないディズニーの勢いに注目
シネマカフェ2019年6月4日(火)7時50分
一般の映画ファンは、どこのスタジオがどこの映画会社を買収した云々には殆ど関知しないのが普通だが、最近のディズニーの動向は実のところ映画・TVファンに大いに関係があるので判りやすくご説明したい。
ディズニーが話題沸騰している理由って?
今年の4月。ディズニーによるフォックス社映像部門の買収が完了した。これはフォックス社が抱えていたものすごい数のコンテンツ、たとえば映画『エイリアン』、『X-MEN』、『デッドプール』、アニメ映画『アイスエイジ』など、これらはほんの氷山の一角だが、ほぼまるごとディズニーの所有になるということだ。サッカーで言えば、バルサとレアルのプレイヤーが合併したチームが出来たようなものである。
映像配信サービス「ディズニー+」のすごいところ
このニュースとほぼ同時にディズニーの映像配信サービス「ディズニー+」の11月発動も発表され、全米が大騒ぎになった。
そもそも「ディズニー+」とはなんなのか?
言うならば、ドッサリと具が乗せられたラーメン全乗せの食べ放題である。(ちょっと胃やけしそうだが…)「ディズニー+」のメニューの一部をご紹介しよう。
『アベンジャーズ』、『ブラックパンサー』などのマーベル作品や『スター・ウォーズ』シリーズ、そしてディズニー人気アニメ、『アナ雪』、『スティッチ』、『ミッキーマウス』、それにピクサー作品『トイストーリー』や『ファインディング・ニモ』などの数々。まだある。配信サービス独自のコンテンツとしてアベンジャーズのヒーロー(ウィンター・ソルジャーやスカーレット・ウィッチなど)や、スター・ウォーズのキャラを主人公にしたスピンオフ・シリーズ、そして『モンスターズ・インク』の人気者マイクとサリーを主人公にしたオリジナル・アニメシリーズなど、書ききれない種類のコンテンツがスタンバッテいる。これらに加えて、前述した元フォックス作品の数々である。
止まらないディズニーの猛攻
『スター・ウォーズ』ファンの皆さんは、デス・スターの存在が明らかになったときのミレニアム・ファルコン内の様子を覚えているだろうか。戦慄と畏怖の念である。エンタメ業界内では、ディズニーの快進撃を見て似たような反応も見受けられた。あまりの勢いに押されて、エンタメ業界が丸ごとディズニーに支配されてしまうのではという、ある種のパニックから来た反応だろう。なぜならフォックス買収完了後まもなく、映像配信サービスHuluがディズニーの傘下に入ることが決定したからである。
映像配信サービスの大物はこれまでNetflixとAmazonプライムそしてHuluだった。ほかにも小さい映像配信サービスはあるが比べ物にならない規模だ。
フォックス、Hulu、ディズニー作品の数々を(現在におけるディズニーの映画・TVライブラリー作品総数は、優に7,000以上と推定されている)、月々たったの6ドル99セント(=約780円)あるいは年間一括70ドル(=約7,830円)で見られるとなればライバル間の勝敗は決まったように見える。
日本でのHuluの組織構成はアメリカのそれと異なるので、日本でもディズニーがHuluを吸収してしまうのかどうかは不明だが、配信される世界の国々で「ディズニー+」が話題をさらうことになるのは明らかだ。
ディズニーランド「ギャラクシーズ・エッジ」
世界中の注目を集めつつ、5月末にグランド・オープニングを控えるスター・ウォーズランドこと「ギャラクシーズ・エッジ」。先日発売された向こう1か月間の予約チケットは、2時間でソールドアウトとなり、その人気の度合いを示している。
南カリフォルニアのアナハイムにあるディズニーランドでのオープニングに続いて、秋にはフロリダ州オーランドにあるディズニーワールドでも「ギャラクシーズ・エッジ」がオープンする。日本やフランス、香港のディズニーランドに「ギャラクシーズ・エッジ」がオープンする日もやってくるかもしれないので、世界規模の展開になる可能性も十分にある。
ディズニーの強みはテーマパークや所有する映画・TV番組だけではない。それに付随するキャラクター使用権も併せ持っているということだ。
その昔、『スター・ウォーズ』の製作が予算不足で難航していた当初、先見の明ありだったジョージ・ルーカス監督は「映画の商品化権がもらえれば、僕の給料は削ってもいい」とスタジオ側に要求した。(皮肉にもそのスタジオは、20世紀フォックス社だったわけだが)
このおかげで、映画の大当たりとともにオモチャやグッズなどの商品から転がり込んでくる収入はほぼ全てがルーカス監督のものとなり、ルーカス・フィルム誕生となったわけだ。このことからも分かるように、人気キャラクターを使用する権利というのは映画などの興行収入と同等かそれ以上に大切な収入源となる。『スター・ウォーズ』シリーズやマーベルのキャラクターはほんの一部で、世界中でディズニーが仕切っている人気キャラクターの数を考えても、それらが気の遠くなるような収入源につながっていることが分かる。
では、ディズニーが世界を制するのか?
ディズニーの現状は、前代未聞の話題沸騰レベルにあるといえる。でも果たしてディズニーはNetflixやAmazonプライムビデオをなぎ倒し、ライバルのテーマパークであるユニバーサル・スタジオに閑古鳥がなくようなパワーを発揮するだろうか? 答えはおそらくNOだろう。
十人十色という言葉がある。「10人いれば10人それぞれに異なる好き嫌いや違いがある」という意味だが、映像ファンの全てがディズニーファンとは限らないからである。
Netflixやユニバーサル・スタジオが、ディズニーに似たような路線を打ち出してガチで太刀打ちしようとすれば、ディズニーに負ける可能性は大いにある。しかし、Netflixを例に挙げるとディズニーの持たないであろうエッジーなコンテンツ(例えば『マインドハンター』のような連続殺人鬼を扱った秀悦なダークドラマなど)や大人向けアニメ(『ファミリーガイ』や『アーチー』)などを前面に出せば、ディズニーとは別の世界で成功を収めることができる。ユニバーサル・スタジオにしても、ハリーポッターという最強の(キャラ使用権)が味方についている。
ディズニーがパワフルになることで周囲のスタジオが、もっとユニークで面白いものを創ろうと努力するであろうことから、映像ファンやキャラクター・ファンにとっては、純粋に楽しみな状況が生まれたと言えるかもしれない。(text:Akemi Kozu Tosto / 神津トスト明美)
ディズニーが話題沸騰している理由って?
今年の4月。ディズニーによるフォックス社映像部門の買収が完了した。これはフォックス社が抱えていたものすごい数のコンテンツ、たとえば映画『エイリアン』、『X-MEN』、『デッドプール』、アニメ映画『アイスエイジ』など、これらはほんの氷山の一角だが、ほぼまるごとディズニーの所有になるということだ。サッカーで言えば、バルサとレアルのプレイヤーが合併したチームが出来たようなものである。
映像配信サービス「ディズニー+」のすごいところ
このニュースとほぼ同時にディズニーの映像配信サービス「ディズニー+」の11月発動も発表され、全米が大騒ぎになった。
そもそも「ディズニー+」とはなんなのか?
言うならば、ドッサリと具が乗せられたラーメン全乗せの食べ放題である。(ちょっと胃やけしそうだが…)「ディズニー+」のメニューの一部をご紹介しよう。
『アベンジャーズ』、『ブラックパンサー』などのマーベル作品や『スター・ウォーズ』シリーズ、そしてディズニー人気アニメ、『アナ雪』、『スティッチ』、『ミッキーマウス』、それにピクサー作品『トイストーリー』や『ファインディング・ニモ』などの数々。まだある。配信サービス独自のコンテンツとしてアベンジャーズのヒーロー(ウィンター・ソルジャーやスカーレット・ウィッチなど)や、スター・ウォーズのキャラを主人公にしたスピンオフ・シリーズ、そして『モンスターズ・インク』の人気者マイクとサリーを主人公にしたオリジナル・アニメシリーズなど、書ききれない種類のコンテンツがスタンバッテいる。これらに加えて、前述した元フォックス作品の数々である。
止まらないディズニーの猛攻
『スター・ウォーズ』ファンの皆さんは、デス・スターの存在が明らかになったときのミレニアム・ファルコン内の様子を覚えているだろうか。戦慄と畏怖の念である。エンタメ業界内では、ディズニーの快進撃を見て似たような反応も見受けられた。あまりの勢いに押されて、エンタメ業界が丸ごとディズニーに支配されてしまうのではという、ある種のパニックから来た反応だろう。なぜならフォックス買収完了後まもなく、映像配信サービスHuluがディズニーの傘下に入ることが決定したからである。
映像配信サービスの大物はこれまでNetflixとAmazonプライムそしてHuluだった。ほかにも小さい映像配信サービスはあるが比べ物にならない規模だ。
フォックス、Hulu、ディズニー作品の数々を(現在におけるディズニーの映画・TVライブラリー作品総数は、優に7,000以上と推定されている)、月々たったの6ドル99セント(=約780円)あるいは年間一括70ドル(=約7,830円)で見られるとなればライバル間の勝敗は決まったように見える。
日本でのHuluの組織構成はアメリカのそれと異なるので、日本でもディズニーがHuluを吸収してしまうのかどうかは不明だが、配信される世界の国々で「ディズニー+」が話題をさらうことになるのは明らかだ。
ディズニーランド「ギャラクシーズ・エッジ」
世界中の注目を集めつつ、5月末にグランド・オープニングを控えるスター・ウォーズランドこと「ギャラクシーズ・エッジ」。先日発売された向こう1か月間の予約チケットは、2時間でソールドアウトとなり、その人気の度合いを示している。
南カリフォルニアのアナハイムにあるディズニーランドでのオープニングに続いて、秋にはフロリダ州オーランドにあるディズニーワールドでも「ギャラクシーズ・エッジ」がオープンする。日本やフランス、香港のディズニーランドに「ギャラクシーズ・エッジ」がオープンする日もやってくるかもしれないので、世界規模の展開になる可能性も十分にある。
ディズニーの強みはテーマパークや所有する映画・TV番組だけではない。それに付随するキャラクター使用権も併せ持っているということだ。
その昔、『スター・ウォーズ』の製作が予算不足で難航していた当初、先見の明ありだったジョージ・ルーカス監督は「映画の商品化権がもらえれば、僕の給料は削ってもいい」とスタジオ側に要求した。(皮肉にもそのスタジオは、20世紀フォックス社だったわけだが)
このおかげで、映画の大当たりとともにオモチャやグッズなどの商品から転がり込んでくる収入はほぼ全てがルーカス監督のものとなり、ルーカス・フィルム誕生となったわけだ。このことからも分かるように、人気キャラクターを使用する権利というのは映画などの興行収入と同等かそれ以上に大切な収入源となる。『スター・ウォーズ』シリーズやマーベルのキャラクターはほんの一部で、世界中でディズニーが仕切っている人気キャラクターの数を考えても、それらが気の遠くなるような収入源につながっていることが分かる。
では、ディズニーが世界を制するのか?
ディズニーの現状は、前代未聞の話題沸騰レベルにあるといえる。でも果たしてディズニーはNetflixやAmazonプライムビデオをなぎ倒し、ライバルのテーマパークであるユニバーサル・スタジオに閑古鳥がなくようなパワーを発揮するだろうか? 答えはおそらくNOだろう。
十人十色という言葉がある。「10人いれば10人それぞれに異なる好き嫌いや違いがある」という意味だが、映像ファンの全てがディズニーファンとは限らないからである。
Netflixやユニバーサル・スタジオが、ディズニーに似たような路線を打ち出してガチで太刀打ちしようとすれば、ディズニーに負ける可能性は大いにある。しかし、Netflixを例に挙げるとディズニーの持たないであろうエッジーなコンテンツ(例えば『マインドハンター』のような連続殺人鬼を扱った秀悦なダークドラマなど)や大人向けアニメ(『ファミリーガイ』や『アーチー』)などを前面に出せば、ディズニーとは別の世界で成功を収めることができる。ユニバーサル・スタジオにしても、ハリーポッターという最強の(キャラ使用権)が味方についている。
ディズニーがパワフルになることで周囲のスタジオが、もっとユニークで面白いものを創ろうと努力するであろうことから、映像ファンやキャラクター・ファンにとっては、純粋に楽しみな状況が生まれたと言えるかもしれない。(text:Akemi Kozu Tosto / 神津トスト明美)
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