西田敏行さん「多くの人に分かってもらえる作品を作りたい」…人間への共感と愛が生んだ、優れて喜劇的な演技

読売新聞2024年10月17日(木)20時41分

西田敏行さん(2011年5月撮影)

 俳優の西田敏行(にしだ・としゆき)さんが亡くなった。76歳だった。

 2008年に公開された映画「丘を越えて」で、主人公の菊池寛を演じた西田さんにインタビューをした。「多くの人に分かってもらえる作品を作りたいというのは、僕の信条にぴったりですね」。大衆文化に重きを置いた作家の姿に重ねて、自身の俳優観を語ったが、西田さんの演技を見て、笑ったり、泣いたりしなかった人などいるだろうか。

 映画の代表作は「釣りバカ日誌」シリーズ。建設会社の釣り好き社員のハマちゃんを演じ、社長のスーさん役の三國連太郎さんとのアドリブによる掛け合いが大いに受けた。テレビドラマでは、子育てに奮闘するカメラマンを演じた「池中玄太80キロ」が筆頭だろう。大衆演劇の世界に飛び込んでいく消費者金融の取り立て人に哀感を込めた「さびしいのはお前だけじゃない」にも根強いファンがいる。

 俳優として人間を見る目と、じたばた生きる人間への共感と愛が、優れて喜劇的な演技を生んだに違いない。「丘を越えて」と同じ年に公開された「釣りバカ日誌19」の取材で、三國さんは、「会社という組織に血を通わせることは、僕一人ではできず、西田君がいるからこそ」とたたえた。

 そんな西田さんの演技が見られなくなるのが淋しい。16年前、大病からの復帰後、映画のタイトルにかけて、「病という丘を越えたら、ひと筋の道が見えた」と語っていたのに。西田さんがしみじみと、「淋しいのはおまえだけじゃない」と歌ったドラマのテーマ曲を、今は口ずさむしかない。(文化部 近藤孝)

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