アイデンティティの揺らぎを描く『ある男』ほか、“自分とは何か”に切り込む名作をピックアップ
シネマカフェ2022年11月20日(日)18時0分
主演の妻夫木聡をはじめ、安藤サクラ、窪田正孝ら日本を代表する豪華俳優陣が集結、『蜜蜂と遠雷』『愚行録』の石川慶がメガホンをとった『ある男』がついに公開。第79回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門への正式出品に続き、第27回釜山国際映画祭のクロージング作品として上映されるなど、世界から注目を集めている。
芥川賞作家・平野啓一郎のミステリーをもとに本作で描かれるのは、アイデンティティの揺らぎ。本作と同様に「自分とは何か」という問いに鋭く切り込む作品を、ジェンダー、家族、そして国籍という切り口から4作ピックアップ。秋深まる季節、それぞれの作品が自らの心の深淵を覗くきっかけをくれそうだ。
『ある男』公開中
メガホンを取った監督・石川慶は、原作の「私とは何か」というテーマ性に惹かれたという。「ある家族をめぐるエモーショナルな物語が軸になっている」としながらも、「人の心に宿る変身願望のようなもの。アイデンティティの揺らぎ」がもう1つの重要な要素だと感じたと監督は語る。
「ある男・X」の正体を追い“真実”に近づくにつれて、いつしか主人公の弁護士・城戸の心に別人として生きた男へ複雑な思いが生まれていく。そんな役どころを演じた主演の妻夫木さんも「石川監督の作品は『その人生でいいのか』『自分とは何なのか』と、作品を通して問いかけてくる」と明かす。
石川監督自身も、「現実の中にシュールな異世界への扉がどこかに開いていることが実際にあり、それを描くのが映画」と話すように、本作の重要なテーマであるアイデンティティの揺らぎを、映像でも見事に魅せている。
『FLEE フリー』(2020年公開)
米国アカデミー賞において国際長編映画賞・長編ドキュメンタリー賞・長編アニメーションの3部門に同時ノミネートされるという史上初の快挙を達成した『FLEE フリー』。
アフガニスタンからデンマークへ逃れたアミン。30代半ばとなり、研究者として成功を収め、恋人の男性と結婚を果たそうとしていたが、彼には恋人にも話していない20年以上も心に抱え続けていた秘密があった。彼の故郷には、同性愛という言葉すらも存在していなかった。故郷とアンデンティティを失った主人公アミンを通じて、「自らを生きる」という意味に迫る。
『万引き家族』(2018年公開)
家族ぐるみで犯罪を重ねる一家の姿を通して、人と人とのつながりを描いたヒューマンドラマ。東京の下町で、高層マンションの谷間に取り残されたように建つ古い平屋に、家主である初枝の年金を目当てに、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀が暮らしていた。
彼らは初枝の年金では足りない生活費を万引きで稼ぐという一家だったが、それでも笑いが絶えない日々を送っている。ある事件をきっかけに、その家族はバラバラとなり、それぞれが抱える秘密や願いが明らかになる。社会問題をベースにしながらも家族の形の意味、そして家族に属したことによって得られるアイデンティティについて問われる傑作。
『GO』(2001年公開)
金城一紀の同名小説を窪塚洋介主演、宮藤官九郎脚本、行定勲監督で映画化した。韓国の国籍を持つ普通高校3年の杉原は、元ボクサーの父に仕込まれたボクシングの腕前を武器にケンカや悪さに明け暮れる日々を送っている。
ある日、杉原はヤクザの息子の同級生・加藤のバースディパーティで声をかけてきた少女・桜井に出会い少しずつお互いの気持ちが近づいていく。そんな時、性格も見た目も正反対であるが、何故か気が合う親友の正一が、日本人高校生に刺されて命を落とす。1人の青年の恋や友情に悩みながらアイデンティティに目覚めていく姿に、心を揺さぶられる。
『グリーンブック』(2019公開)
1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブで用心棒を務めていたイタリア系のトニー・リップは、ひょんなことから天才黒人ピアニスト、ドクター・シャーリーが南部で行う演奏ツアーに運転手兼ボディガードとして雇われる。
公共施設利用の禁止や制限など、人種差別が公然と行われ、命の危険さえ伴う黒人の南部の旅ガイドが「グリーンブック」。そんな中で、性格も生き方も異なる2人が、旅を通して互いのアイデンティティを認め合っていく。
芥川賞作家・平野啓一郎のミステリーをもとに本作で描かれるのは、アイデンティティの揺らぎ。本作と同様に「自分とは何か」という問いに鋭く切り込む作品を、ジェンダー、家族、そして国籍という切り口から4作ピックアップ。秋深まる季節、それぞれの作品が自らの心の深淵を覗くきっかけをくれそうだ。
『ある男』公開中
メガホンを取った監督・石川慶は、原作の「私とは何か」というテーマ性に惹かれたという。「ある家族をめぐるエモーショナルな物語が軸になっている」としながらも、「人の心に宿る変身願望のようなもの。アイデンティティの揺らぎ」がもう1つの重要な要素だと感じたと監督は語る。
「ある男・X」の正体を追い“真実”に近づくにつれて、いつしか主人公の弁護士・城戸の心に別人として生きた男へ複雑な思いが生まれていく。そんな役どころを演じた主演の妻夫木さんも「石川監督の作品は『その人生でいいのか』『自分とは何なのか』と、作品を通して問いかけてくる」と明かす。
石川監督自身も、「現実の中にシュールな異世界への扉がどこかに開いていることが実際にあり、それを描くのが映画」と話すように、本作の重要なテーマであるアイデンティティの揺らぎを、映像でも見事に魅せている。
『FLEE フリー』(2020年公開)
米国アカデミー賞において国際長編映画賞・長編ドキュメンタリー賞・長編アニメーションの3部門に同時ノミネートされるという史上初の快挙を達成した『FLEE フリー』。
アフガニスタンからデンマークへ逃れたアミン。30代半ばとなり、研究者として成功を収め、恋人の男性と結婚を果たそうとしていたが、彼には恋人にも話していない20年以上も心に抱え続けていた秘密があった。彼の故郷には、同性愛という言葉すらも存在していなかった。故郷とアンデンティティを失った主人公アミンを通じて、「自らを生きる」という意味に迫る。
『万引き家族』(2018年公開)
家族ぐるみで犯罪を重ねる一家の姿を通して、人と人とのつながりを描いたヒューマンドラマ。東京の下町で、高層マンションの谷間に取り残されたように建つ古い平屋に、家主である初枝の年金を目当てに、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀が暮らしていた。
彼らは初枝の年金では足りない生活費を万引きで稼ぐという一家だったが、それでも笑いが絶えない日々を送っている。ある事件をきっかけに、その家族はバラバラとなり、それぞれが抱える秘密や願いが明らかになる。社会問題をベースにしながらも家族の形の意味、そして家族に属したことによって得られるアイデンティティについて問われる傑作。
『GO』(2001年公開)
金城一紀の同名小説を窪塚洋介主演、宮藤官九郎脚本、行定勲監督で映画化した。韓国の国籍を持つ普通高校3年の杉原は、元ボクサーの父に仕込まれたボクシングの腕前を武器にケンカや悪さに明け暮れる日々を送っている。
ある日、杉原はヤクザの息子の同級生・加藤のバースディパーティで声をかけてきた少女・桜井に出会い少しずつお互いの気持ちが近づいていく。そんな時、性格も見た目も正反対であるが、何故か気が合う親友の正一が、日本人高校生に刺されて命を落とす。1人の青年の恋や友情に悩みながらアイデンティティに目覚めていく姿に、心を揺さぶられる。
『グリーンブック』(2019公開)
1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブで用心棒を務めていたイタリア系のトニー・リップは、ひょんなことから天才黒人ピアニスト、ドクター・シャーリーが南部で行う演奏ツアーに運転手兼ボディガードとして雇われる。
公共施設利用の禁止や制限など、人種差別が公然と行われ、命の危険さえ伴う黒人の南部の旅ガイドが「グリーンブック」。そんな中で、性格も生き方も異なる2人が、旅を通して互いのアイデンティティを認め合っていく。
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