「下手をすれば死刑」金正恩、カメラ前で“禁断の行為”の現場写真
北朝鮮の金正恩総書記は今月6日、新造された「戦術核攻撃潜水艦」の進水式に参加した。国営の朝鮮中央テレビはその様子を大きく報じた。
映像には、白い服を着た崔善姫(チェ・ソニ)外相が、潜水艦の船体にシャンパンを瓶ごとぶつけて割り、その後に金正恩氏と共に立つ様子が写っている。一見よくある進水式の光景だが、これが国民の間で話題となっていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
「進水式のことが市民の間で話題になっている」と伝えた羅先(ラソン)の情報筋は、その理由をこのように説明した。
「当局が厳しく統制し処罰する『迷信』に基づいた儀式を、金正恩氏が参加した潜水艦進水式で行ったから」
北朝鮮で「迷信行為」は、刑法で懲役7年以下、反動思想文化排撃法で懲役10年以下の刑と定められており、運が悪ければ死刑にもなる。実際、過去に占い師やキリスト教信者が処刑された事例がいくつもある。
このシャンパンの儀式だが、起源は古代ギリシャにまで遡るようだ。当時、進水式の参加者はオリーブの枝を頭に巻き、ワインを飲んで、祝福の象徴として船に水をかけるという儀式を行っていた。
また、その後のキリスト教国でも船の洗礼の意味を込めて、聖水をかけたり、ワインを一口飲んで残りを船にかけたりする儀式を行っていた。それが17世紀後半のイギリスで、船首で瓶を割る習慣へと変わった。この役割は、女性が担うことになっている。
北朝鮮でも、漁師が漁船の進水式のときに、豚の頭など様々な料理を用意して、拝んで船に酒をかける「コスレ」という儀式を行うが、当局はこれを迷信だとして取り締まっているため、漁師たちは夜中や明け方に密かに行っている。
ところが、崔善姫氏が金正恩氏の門前で「コスレ」をしているのをテレビで見た人々は、非常にびっくりして、「今後は、漁師も住民も『コスレ』をコッソリやらなくてもよくなった」と言って、当局のダブスタぶりを非難した。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の別の情報筋も、現地住民が潜水式の「コスレ」を見て非常に驚いたと伝えている。
「今まで貿易船や軍艦の進水式で、航海の安全を願ってこのような儀式が行われてきたのかは分からないが、少なくとも船に酒瓶をぶつけて割る儀式をテレビや新聞では見たことがない」(情報筋)
迷信を信じるな、迷信行為を行うなと口うるさい当局が、自分たちは潜水艦の進水式で迷信行為を行っているのは矛盾だとして、人々は「将軍様(金正恩氏)も迷信を信じているのか?」「将軍様の前で迷信行為をしてもいいとか?」などと皮肉っている。
金正恩氏が、儀式に込められた意味を知っていたのかは定かでないが、少なくとも地方政府の幹部の中に、占い師のところに通うなど、迷信行為を行う者がいることは、誰でも知っているだろう。幹部の言行不一致は何ら珍しいことではないのだ。
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