試合で投げたのは「1、2回」…日大藤沢DF片岡大慈、“努力の賜物”ロングスローが逆転勝利に導く
サッカーキング2023年1月1日(日)18時13分
急遽の出場からチームを勝利に導いた片岡大慈 [写真]=兼子愼一郎
12,437名が詰め掛けた12月31日の等々力陸上競技場第2試合は、少々不可思議な試合展開を見せることとなった。前半に米子北(鳥取)がショートCKから先制点を奪い、後半に日大藤沢(神奈川)がロングスローから2得点を奪って逆転勝利となった。
「高校サッカーではよくある試合展開だろう」と思われるかもしれないが、スタンドで観ながら「え?」と思ったのは私だけではなかったはずだ。
というのも、今年の日大藤沢はロングスローのチームではないからだ。「チームとしてロングスローの練習はしていない」というのは指揮官と選手は口を揃える通りである。事情が違ってきたのは、アクシデントから「投げ手」がピッチに出てきたからだ。
1点ビハインドの状況で、2年生DF片岡大慈が投入されたのは55分のこと。足をつってしまったDFアッパ勇輝(3年)に代わっての出場であって、逆転を狙っての交代というわけではなかった。
そもそも片岡は県予選で出場ゼロ。全国高校サッカー選手権大会の初戦もベンチ外だった。ただ、「最後まで全員をしっかり観た上でスタメンもベンチも決める。(登録の)30人全員が戦力だと思っているし、口先だけでそれを言っているつもりはない」と語る佐藤輝勝監督は、試合前に「ずっと練習から本当に良い準備をしてくれていた」片岡のベンチ入りを決断していた。
その片岡のロングスローから63分にMF野澤勇飛(3年)の同点ゴールが生まれ、70分には相手オウンゴールを誘発する形での逆転ゴールまで生まれてしまった。「前はあんなに飛ばしてなかったはず」とFW森重陽介(3年)も驚愕した飛距離の出るスローは米子北側のデータにもなかったのだろう。結果的にこれが勝敗を決する形となった。
攻撃のロングスロー練習はしていなかったものの、1回戦の西原(沖縄)、2回戦の米子北はともにロングスローに特長を持つチームである。このため、「ロングスローに対する守り方」の練習は行われていた。ここで投げ手になっていたのが片岡である。
出番がない中で相手役のロングスロワーとして駆り出されることはネガティブに捉えることもできそうだが、片岡の考えは違った。
「アピールのチャンスが来たと思っていた」
元よりロングスローを身に付けたのは、日大藤沢の厳しい競争を勝ち抜くために、サイドバックとしての武器を増やしたいと思っていたから。ちょうど1年前に「ロングスローのできる選手に話を聞かせてもらって」練習を開始していた。
「コーチから『やれ』とか言われたことはないんです。そもそも(日大藤沢は)ロングスローをやってないんで。でも、何とか試合に出たかったので」
ロングスローは力任せに投げればいいと思われがちだが、実際は違う。もしパワーだけが必要なら、世のフィジカル自慢は全員がロングスローを飛ばせるはずだが、実際はそうではない。
フォームも大事だし、リリースポイントを工夫したり、ボールの回転も重要だ。片岡も「最初は無回転になっちゃって全然飛ばなかった」と言い、綺麗なバックスピンのかかったボールを飛ばせるようになったのは最近のことだった。また、実際に試合で投げたのは「これまでで1回か2回」とも言う。
その地道で自主的な努力が全国舞台でチームを救うのだから分からない。ただ、単なる偶然というわけでもないだろう。ベンチ外になろうと腐らずトレーニングで意欲を見せていた片岡を拾い上げた指揮官の慧眼であり、それぞれが自主性をもって努力する雰囲気を作ってきた歴代の日大藤沢サッカー部の成果と言うべきだろう。
取材・文=川端暁彦
「高校サッカーではよくある試合展開だろう」と思われるかもしれないが、スタンドで観ながら「え?」と思ったのは私だけではなかったはずだ。
というのも、今年の日大藤沢はロングスローのチームではないからだ。「チームとしてロングスローの練習はしていない」というのは指揮官と選手は口を揃える通りである。事情が違ってきたのは、アクシデントから「投げ手」がピッチに出てきたからだ。
1点ビハインドの状況で、2年生DF片岡大慈が投入されたのは55分のこと。足をつってしまったDFアッパ勇輝(3年)に代わっての出場であって、逆転を狙っての交代というわけではなかった。
そもそも片岡は県予選で出場ゼロ。全国高校サッカー選手権大会の初戦もベンチ外だった。ただ、「最後まで全員をしっかり観た上でスタメンもベンチも決める。(登録の)30人全員が戦力だと思っているし、口先だけでそれを言っているつもりはない」と語る佐藤輝勝監督は、試合前に「ずっと練習から本当に良い準備をしてくれていた」片岡のベンチ入りを決断していた。
その片岡のロングスローから63分にMF野澤勇飛(3年)の同点ゴールが生まれ、70分には相手オウンゴールを誘発する形での逆転ゴールまで生まれてしまった。「前はあんなに飛ばしてなかったはず」とFW森重陽介(3年)も驚愕した飛距離の出るスローは米子北側のデータにもなかったのだろう。結果的にこれが勝敗を決する形となった。
攻撃のロングスロー練習はしていなかったものの、1回戦の西原(沖縄)、2回戦の米子北はともにロングスローに特長を持つチームである。このため、「ロングスローに対する守り方」の練習は行われていた。ここで投げ手になっていたのが片岡である。
出番がない中で相手役のロングスロワーとして駆り出されることはネガティブに捉えることもできそうだが、片岡の考えは違った。
「アピールのチャンスが来たと思っていた」
元よりロングスローを身に付けたのは、日大藤沢の厳しい競争を勝ち抜くために、サイドバックとしての武器を増やしたいと思っていたから。ちょうど1年前に「ロングスローのできる選手に話を聞かせてもらって」練習を開始していた。
「コーチから『やれ』とか言われたことはないんです。そもそも(日大藤沢は)ロングスローをやってないんで。でも、何とか試合に出たかったので」
ロングスローは力任せに投げればいいと思われがちだが、実際は違う。もしパワーだけが必要なら、世のフィジカル自慢は全員がロングスローを飛ばせるはずだが、実際はそうではない。
フォームも大事だし、リリースポイントを工夫したり、ボールの回転も重要だ。片岡も「最初は無回転になっちゃって全然飛ばなかった」と言い、綺麗なバックスピンのかかったボールを飛ばせるようになったのは最近のことだった。また、実際に試合で投げたのは「これまでで1回か2回」とも言う。
その地道で自主的な努力が全国舞台でチームを救うのだから分からない。ただ、単なる偶然というわけでもないだろう。ベンチ外になろうと腐らずトレーニングで意欲を見せていた片岡を拾い上げた指揮官の慧眼であり、それぞれが自主性をもって努力する雰囲気を作ってきた歴代の日大藤沢サッカー部の成果と言うべきだろう。
取材・文=川端暁彦
(C) SOCCERKING All rights reserved.
「逆転」をもっと詳しく
BIGLOBE旅行 都道府県民限定プランのご紹介♪
「逆転」のニュース
-
オリ中嶋監督 横山聖の初昇格は「勢いをと思って」四球絡めて2度の逆転「自分らもやっちゃいけない」5月25日5時0分
-
【リーグワン】花園が昨季のリベンジ許し降格決定 開始1分先制トライも後半力尽き逆転負け5月25日5時0分
-
【DeNA】東克樹8回1失点粘投も中継ぎ陣が3被弾で逆転負け 三浦監督「3連投でも頑張ってくれた」5月24日23時14分
-
【DeNA】広島に延長10回逆転負け…伊勢が小園、末包に二者連続の被弾浴び勝ち越し許す 東は8回1失点と力投も実らず5月24日22時18分
-
【オリックス】今季7戦目で“ブラックフライデー”断ち切る 森友哉が決勝2点二塁打5月24日21時48分
-
King & Prince永瀬廉、なにわ男子と保育園で園児の人気競う『なにわ男子の逆転男子』5月24日21時0分
-
ロッテが6連勝=プロ野球・ロッテ—ソフトバンク5月24日20時57分
-
ロッテ 今季最長6連勝 佐々木朗希7回1失点で4勝目「逆転してくれて、その点を必死に守りました」5月24日20時48分
-
ロッテが6連勝 プロ野球5月24日20時32分
-
【ロッテ】池田来翔、好守直後の打席で左中間二塁打 チームの逆転を演出…今季初の一塁スタメン出場5月24日18時55分
スポーツニュースランキング
-
1批判殺到!どこ投げてんだよ…! 大谷翔平、まさかの盗塁で“異変”が起きた…!? 相手捕手のリアクションがヤバすぎる 「古田さんも思わず苦笑」「さすがに無謀w」 ABEMA TIMES
-
2井上尚弥に止まぬ特大評価 リング誌の“ウシク1位”にメキシコ名伯楽が異論「イノウエはあまり騒がない。それでも十分偉大」 ココカラネクスト
-
3「本気で言っているのか?」絶好調の今永昇太が米番組内で”新事実”を告白! 隠し持つ武器に米メディア衝撃「フェアな話ではない」 ココカラネクスト
-
4ドジャース大谷翔平に“運命の赤い糸”?5打席中4打席でレッズ遊撃デラクルスへ「彼のボールが飛んできた」 スポーツ報知
-
5大谷翔平がキャッチボール、山本由伸も見守る…その後はダッシュ行い笑顔で言葉交わす 読売新聞