ミランの10番が奮闘。痛恨ドローのローマ戦で見えたロッソネロの好材料【試合分析】
2022/23シーズンのセリエA第17節が1月9日(日本時間)に行われ、ミランとローマが対戦した。
前半30分、ミランのMFサンドロ・トナーリのコーナーキックにDFピエール・カルルがヘディングで合わせ、先制ゴールをゲット。後半32分にはラファエル・レオンのパスを受けた途中出場のMFトンマーゾ・ポベガがロングカウンターを結実させ、ロッソネロ(赤と黒)のリードが2点に広がった。
このままミランが勝利すると思われたが、ローマが試合終盤に得た2つのセットプレーで息を吹き返す。
後半42分、MFロレンツォ・ペッレグリーニのコーナーキックにDFロジェール・イバニェスがヘディングで合わせて追撃のゴールを挙げると、アディショナルタイムにもペッレグリーニのフリーキックにMFネマニャ・マティッチが頭で反応。このヘディングシュートは相手GKチプリアン・タタルシャヌに弾かれたものの、こぼれ球をFWタミー・アブラハムが押し込み、ローマが同点に追いついた。試合は2-2の引き分けで幕引きとなっている。
痛恨のドローにより、首位ナポリとの勝ち点差が“7”に開いてしまったミラン。ローマ戦で見えたポジティブな要素と今後の課題は何か。ここではこの点について解説する。
ローマの守備を掻い潜ったミラン
ミランが最終ライン付近でボールを保持するやいなや、ローマは[5-2-3]の守備隊形で対抗。特に前半はアブラハム、パウロ・ディバラ、ニコロ・ザニオーロが前線で左から順に並び、中央のレーンとハーフスペース(ピッチを縦に5分割した際の、左右の内側のレーン)を封鎖。ミランのパスワークをサイドに追い込もうとしていた。
これに対しミランは、基本布陣[4-2-3-1]のトップ下ブラヒム・ディアスの巧みなポジショニングを利用し、試合の主導権を手繰り寄せる。
ロッソネロの背番号10は、適宜ローマの2ボランチ(ブライアン・クリスタンテとペッレグリーニ)の脇へ降りてパスレシーブ。前半15分にも、ペッレグリーニの隣でボールを受けたディアスから左サイドにパスが供給され、トナーリ、レオンの順でボールが繋がった。
[5-2-3]の泣き所である、2ボランチの脇を突き続けたディアスの好プレーにより、ミランは落ち着いてボールを保持することに成功。ディアスの動きに釣られ、ローマの2ボランチ間が開いた際には1トップのオリビエ・ジルーがここへ降りるなど、ロッソネロの狙いは明確だった。ディアスの流動的なポジショニングを活かしたパスワークは、今後もミランの武器となるだろう。
浮き彫りとなったミランの課題は
前述のディアスの好プレーにより、ローマの2ボランチをある程度揺さぶっていたものの、試合全体を通じてサイドチェンジのパスが少なかったミラン。右サイドバックのダビデ・カラブリアと、センターバックのカルルの間にMFイスマエル・ベナセルが降りる場面があったが、ここからのサイドチェンジをもう少し織り交ぜていれば、3点目を狙いやすく、よりローマにボールを奪われにくい展開になっていただろう。これはロッソネロが突き詰めるべきポイントのひとつと言えそうだ。
首位ナポリの追走やセリエA連覇に向け、セットプレーの守備の改善が急務であることは言うまでもない。1失点目のコーナーキックではゾーンディフェンスでゴールエリア付近を堅めていたが、守備ブロックの外側から侵入してきたイバニェスを捕まえきれず。2失点目のフリーキックでも、1失点目と同様の流れでマティッチにヘディングシュートを許してしまった。
このフリーキックの直前にMFアステル・ブランクスが犯した、ディバラに対するプッシングの反則も不用意と言える。自陣での不必要なファウルを無くすことと、ゾーンディフェンスの外側から侵入してくる相手選手のマークの整備が、今のミランの課題だ。
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