夢のビッグリーグ化はやはり無謀? 英代表MFの早期退団で浮き彫りになったサウジ・サッカー界の「課題」
ベンゼマやC・ロナウドといったスターの退団も囁かれるサウジ・サッカー界。彼らが抱える課題とは?(C)Getty Images
「簡単な決断ではなかったが、僕自身と家族にとって最善の選択だと思う」
現地時間1月18日にサウジアラビア1部のアル・イテファクと契約を解除、そしてオランダの強豪アヤックスと2年半契約を締結したイングランド代表MFジョーダン・ヘンダーソンは、退団理由をそう明かした。
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昨年7月に、同胞であるスティーブン・ジェラード監督の熱心な誘いと、週給35万ポンド(約6600万円)のオファーを受けて入団したヘンダーソン。しかし、母国イギリスの法律において、サウジアラビアに90日以上滞在した個人は税務上「居住者」とみなされる仕組みになっており、こうした財政上の問題もあって早期退団をしたようだ。
22年12月にアル・ナスルがクリスティアーノ・ロナウドと契約を交わしたのを皮切りに、カリム・ベンゼマやネイマールといったワールドクラスのタレントを矢継ぎ早にリーグへ招き入れたサウジ・サッカー界。しかし、今後はヘンダーソンのようにヨーロッパに舞い戻るスターは増えるかもしれない。
理由は様々だが、ヨーロッパで優遇されてきた選手たちにとって、中東という環境に馴染むのは容易ではない。「サウジアラビアから多くの大物たちが撤退を求める理由は明確だ」とする英紙『The Sun』は「まず何よりも耐えがたく、うだるような暑さはヨーロッパの選手たちにとっては苦痛だ。ヘンダーソンの退団理由の一つもそれだとされている」と指摘。さらにリーグの半数以上のクラブが平均1万人未満とされる観客動員の少なさも、「モチベーションの低下の理由だ」とした。
そして、同紙は「退団を決定づけるもの」として、ヨーロッパとは異なる文化や社会生活をクローズアップ。「サウジアラビアの生活は彼ら(スター選手たち)が住んできた場所とは別世界だ。移籍してきた多くの選手たちが社会的に適応困難となるのは必然だ」と強調。「高給を受け、再出発を図ろうとする一部の選手にとっては悪夢であり、地獄のようでもある」とした。
国家計画の一環として数多のスター選手たちを引き抜き、世界を驚かせたサウジ。大物の獲得でイングランドのプレミアリーグに匹敵する巨大リーグ化を目指す彼らだが、今後は選手たちを“定住させられる環境”づくりが最優先課題となってきそうだ。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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