IMSA:不運もタイトルを争える実力をみせたアキュラARX-05。カストロネベスも次戦に期待
IMSAスポーツカー・チャンピオンシップの開幕戦となった第65回ロレックス・デイトナ24時間レース。デビュー戦となったアキュラ・チーム・ペンスキー2台のアキュラARX-05 DPiは、序盤でトップ争いをするも6号車がマシントラブル、7号車も接触により優勝争いから脱落してしまった。
プロトタイプのエントリーが20台。自動車メーカーが絡んだDPi(デイトナ・プロトタイプ・インターナショナル)だけでなく、LMP2マシン使用のプライべティアたちもコンペティティブでレースはスタートからハイスピードで進んでいった。
GTマシンのトラフィックがあるというのに、予選で記録したそれぞれのラップタイムに2〜3秒プラスしたぐらいのハイペースが保たれ、スタートから6時間が経過した時点でもまだ8台がリードラップに残っていた。
フェルナンド・アロンソを起用したユナイテッド・オートスポーツを含め、プライべーターたちの実力は高かった。しかし、優勝争いの中心はDPi。キャディラックは3チームから合計4台がエントリーする最大の布陣を敷き、奇しくも打倒キャディラックを目指すのはニッサン、マツダ、アキュラの日本メーカー3社はいずれも2台ずつを投入した。
スコット・シャープ率いるエクストリーム・スピード・モータースポーツは、昨年2勝しており、一昨年はLMP2シャシーにアキュラエンジン搭載でデイトナでの優勝を飾っている。彼らには当然注目が集まっていたが、2台とも序盤戦にしてタイヤトラブルに見舞われ、エンジンとギヤボックスのトラブルが襲ったために揃ってリタイアに追い込まれた。
ニッサンと同じくDPi2年目のマツダは、今年からスポーツカーで世界最強のチーム、ヨースト・レーシングがパートナー。しかし、ラインホルト・ヨースト御大は風邪で渡米できず。それで士気が鈍っていたわけでもなかろうが、ホイール脱落、タイヤバーストの後に冷却系トラブルが続出。1台はマシン火災に遭い、こちらも2台ともにリタイアとなった。
アキュラは今年からの参戦。しかし、アメリカンレース史上最強のチーム・ペンスキーとのコラボレーションだけに、デビュー戦から王者キャディラックに冷や汗をかかせる好パフォーマンスを見せた。
7号車に珍しいドアラッチのトラブルが出たが、予定外のピットストップ1回という不利はフルコースコーション利用で帳消しにし、トップグループに残り続けた。一方で6号車はライバルに追突されて後退を余儀なくされたときもあったが、マシンやピットストップではトラブル・フリーで、レースが夜に入るとチームメイトとともにトップ争いの中心的存在となっていた。
デビュー戦だというのに、スタートから12時間が経過した時点でアキュラARX-05は7号者を先頭に1-2体制でレースをリード。対するキャディラックは昨年度デイトナウイナーでシリーズチャンピオンのウェイン・テイラー・レーシング10号車(ジョーダン・テイラー/レンガー・ファン・ダー・ザンデ/ライアン・ハンター-レイ)はタイヤトラブルで大きく後退し、今年からキャディラック陣営に加わったスピリット・オブ・デイトナ・レーシング(マクマレー/トリスタン・ボーティエ/エディ・チーバー3世)はエンジントラブルで早々のリタイアと、数的優位は消滅。2台のみでアキュラと戦う事態になっていた。
アキュラのデビューウインを阻んだのは、トラブルとアクシデントだった。淡々と周回を重ねていた6号車は、電気がチャージされないトラブルを出し、オルタネーター、チャージに関連するワイヤーハーネスやコネクターの交換を行うためにガレージへ。これでトップ争いから脱落した。
7号車は、レースが日曜に入ってゴールまで8時間と少しという頃に切られたリスタート直後、キャディラック31号車にヒットされてラジエターを破損、水漏れ修復のためにガレージで長時間の作業を余儀無くされ、7号者も優勝のチャンスを失った。最終結果は9位と10位。揃って完走を果たした。今シーズンの多くのレースで活躍することが確信できるパフォーマンスと言えた。
アキュラが戦線から消えると、もう残りはゴールまでのサバイバルになった。1-2体制でレースを引っ張るアクション・エクスプレス・レーシングのキャディラック2台は優勝に向かって周回を重ね流だけでよかった。しかし、彼ら2台はオーバーヒートに悩まされていた。どちらもガレージで水を補給したほどで、ペースはガクッと落ちた。もしアキュラが1台でトップ争いに生き残っていたら、ハイペースで戦い続けることを強いられ、彼らはゴールまで走り切れなかった可能性が強い。
「31号車と接触したが、彼はスピンをしたことでぶつかってきてしまったんだと思う。そう思いたい」とアキュラ7号車に乗っていたエリオ・カストロネベスは語った。
実際、31号者のステアリングを握っていたフィリペ・ナッサは、「追突されてイン側に巻き込むようなスピンに陥って、アキュラにぶつかってしまった」と状況を説明していた。
ゴール後のカストロネベスは、「アキュラ・チーム・ペンスキーはデビュー戦から速さを見せた。トラブルで優勝のチャンスは逃したけれど、24時間の耐久レースを走り切った。ARX-05には勝てる力が備わっている。次のレース、セブリング12時間が楽しみだ」と話した。
過去2回、プロトタイプのプロジェクトはあったものの、アキュラは新規参戦メーカー。キャディラックは昨年から参戦しているだけでなく、プロトタイプでもGTでも長年参戦を続けて来ているアメリカを代表する自動車メーカー=GMの高級ブランドだ。技術力、資金力、政治力を持ち、勝つための体制作りも巧み。チームもドライバーも耐久レースにおける経験値が高く、アキュラがそうそう簡単に勝てる相手ではない。
しかし、デイトナで彼らが披露した実力は非常に高く、デビューシーズンの優勝は十分考えられる。取りこぼしをせず、キャディラック陣営が星の潰し合いを行う事態が重なれば、アキュラがシリーズタイトルを獲得することも可能だろう。
次のレースは3月半ば、同じフロリダ州のセブリングで行われる12時間レースだ。時間はデイトナの半分だが、とてもバンピーな高速コースでマシンやドライバーにかかる負担はデイトナ以上。時期的(3月中旬)、地理的(150マイルほど南)にコンディションは暑くなり、エンジン、ドライバーに過酷だ。
歴史がデイトナより長く、アメリカのレース界ではデイトナ以上にステイタスが高いのがセブリング。ここでアキュラの初勝利はなるだろうか? ペンスキーとしても、近年のデイトナは経験がなかったが、セブリングはポルシェのLMP2マシン=RSスパイダーを走らせていたのでデータもノウハウも十分にある。
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