小山美姫がWシリーズ参戦へ向けアジアンF3ウインターシリーズに参加。収穫得るも「悔しいです」
2018年はFIA-F4にフル参戦を果たしたほか、KYOJO CUPでも連覇を果たし、2019年からDTMドイツツーリングカー選手権の併催となる女性だけのフォーミュラカーレース『Wシリーズ』への参戦を狙う小山美姫が、FIAアジアF3ウインターシリーズの最終戦セパンにスポット参戦を果たした。
■Wシリーズ参戦へのトレーニングに
Wシリーズは、2019年からDTM併催として開催される女性だけのフォーミュラ。世界各国から多くの参戦希望が相次ぐなか、小山は3月に行われる最終テストに臨む28人に残ることに成功した。最終テストでは、シリーズに参戦する18名のドライバーと、2名の補欠ドライバーが選ばれる予定だ。
その最終テストで使用されるマシンは、アジアンF3で使用されるタトゥース製のF318が使用される。そこで「なんとか参戦させていただきたいとお願いし続けました」という小山の強い意志と情熱に動かされ、小山を応援するホンダとB-MAX Racing Teamがサポートし、今回のアジアンF3ウインターシリーズ参戦が決まった。
「小山選手の熱い気持ちは、男女という壁を越えて、本物のレーシングドライバーになりたいという情熱を感じました。自分もアジアンF3を戦っているドライバーではありますが、最終選考までの限られた時間の中で最大限の努力をしたいという小山選手を、同じ日本人として応援したいと思いました」というのは、B-MAX Racing Teamの組田龍司代表。
「僕のシートを譲ることで、彼女が少しでも自分の夢を実現できる手助けになるのであればと思った次第です」
今回のアジアンF3セパン戦には、B-MAX Racing Teamから小山、そしてマスターズクラスに参戦する山口大陸と吉田基良の3台が出場した。また、スーパーライセンスからは高橋知己が参戦している。レースにはヨーロッパから上のカテゴリーを狙う若手ドライバーたち、そしてアジアのドライバー、さらには小山と同様にWシリーズ参戦を狙うハンガリーのヴィヴィアン・ケスツェリーも参戦した。
「今まで自分が乗ってきたフォーミュラはFIA-F4だけですが、重量の違いが大きかったです。姿勢をどう向けるか、ボトムスピードの限界の大きな違いを感じました」と小山はこれまでのマシンとの違いを感じた様子。
このタトゥース製シャシーはステアリングが重いという評判があったが、日ごろからのトレーニングの成果もあり対応。セパンの暑さも「ふだんからホットヨガに通ったりしてケアは欠かさないようにしています」と3レースを走りきった。
■3レースめでの“悔しい思い”
走行初日から2日目にかけては順当にタイムアップしていた小山だが、その後タイムが頭打ちに。外国人エンジニアとも相談を重ね、金曜のプラクティスで大きく変えた結果、予選を前に大きくタイムを上げることに成功した。予選では、本来タイヤのピークが1〜2周しかないが、「今の私は走れば走るほどタイムが上がる」とアタックを繰り返していった。
この週末は3レースがあるが、スタートは1レースめで失敗。2レースめもあまりうまくいかなかったが、2月24日の3レースめでは決めることができた。展開としては、1レースめはある意味様子見となったが、それが奏功し前で起きたアクシデントをうまく避け、ポイント獲得を果たした。
2レースめは山口との戦いとなったが、そのなかでタイヤと路面の変化を感じ取りながら、ペースを保つことに成功する。ただ、週末の総決算となる3レースめでは、小山にとって悔しいレースとなってしまった。
スタートを決めた小山は、Wシリーズでもライバルになるケスツェリーとのバトルになっていく。ストレートでアウト側にポジションをとった小山は、1〜2コーナーでイン側とアウト側が逆になるセパンの1コーナーで、ケスツェリーにインを誘い、アウトに位置取り続く2コーナーで刺し返すつもりでいた。
しかし「本当はレースなのでいかなければいけなかったんですが、リタイアしたらすべて終わってしまう」という気持ちが小山の心の片隅にわずかながらあった。特に今回は、ある意味“借り物”のマシンだ。ケスツェリーがクラッシュが多いことが頭によぎった。ただ、インをうまく曲がったケスツェリーに続くも、バトルに敗れるかたちでレースが終わってしまった。
「何がイヤかと言えば、3レースめで悔しい思いをするのがいちばんイヤなんです」と小山は一瞬の駆け引きに“敗れた”レースを大いに悔しがった。
「今回Wシリーズのために来ているので、“勝て”とも言われていませんが、本当に悔しいです。でも私はレースがすべてなので……。レースの悔しさはレースでしか取り返せませんから」と小山は、Wシリーズでのリベンジを誓った。今回の参戦で収穫もあった。そして速さではまったく負けていなかっただけに、この経験がヨーロッパの舞台で小山が輝く糧になることを願うばかりだ。
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