ついにリヤウイング備わる。プジョー9X8の改良型が初公開、WEC第2戦イモラでデビューへ
プジョー・スポールは3月25日、事前の予告どおりWEC世界耐久選手権を戦うハイパーカー『プジョー9X8』の改良型マシンを初公開した。
プジョー9X8は、ヨーロッパや北米、中東、日本などを転戦するWECに、2022年シーズン途中から投入されているハイブリッド・プロトタイプカーだ。
チーム・プジョー・トタルエナジーズのバナーの下で、最高峰カテゴリーであるハイパーカークラスを戦うこのマシンは、同クラスに参加可能なふたつのプラットフォームの内、設計自由度が高めに設定されているル・マン・ハイパーカー(LMH)規定に基づいて製作された。デビュー前の開発テスト段階から注目集めた特徴的な“リヤウイングレス”のコンセプトは、この規定を最大限に利用しアンダーフロアでダウンフォースを稼ぐ手法で生み出されたものだ。
しかし“誰もやらない”独自のアイデアを成功に結びつけるには、多くの試練を乗り超えなくてはならない。耐久レースにおける成功の歴史にその名を残すプジョーをもってしてもそのハードルは高く、フランスのチームは2022年の初参戦以来、ほとんどのレースで苦戦を強いられた。
唯一の例外はデビューからちょうど1年後に迎えた2023年の第5戦モンツァ6時間で、このレースでは93号車が3位表彰台を獲得している。今月2日(土)に決勝レースが行われた2024年シーズン開幕戦では同じく93号車が一時、前年のル・マン24時間以来となる総合首位を走り、約10時間におよんだ長時間レースの最終盤まで2番手の座を維持して2度目のポディウム獲得の期待が高まった。しかし、残り2周で給油トラブルの影響によるものと思われるガス欠によって無情にもコース上にストップ。7番手でチェッカーを受けたものの、その後失格処分が下った。
そんな9X8にとって厳しい冬の期間を脱するべく、そしてタイヤ寸法に係るレギュレーション変更に対応するため、プジョーは2022年シーズン中より改良型の開発を開始。今シーズン始めの公式テストと開幕戦には間に合わなかったが、次戦イモラを前にしたこのタイミングでエボルーションモデルをアンベイルした。このマシンは第2戦からシリーズに参戦することで、BoP(性能調整=バランス・オブ・パフォーマンス)設定の観点からも母国フランスで行われるル・マン24時間レースへの参加が認められる予定だ。
公開されたニューマシンと従来型を見比べてひとめでわかる変更点のひとつがリヤウイングの有無だ。プジョーは当初のウイングレス・コンセプトを捨て去ったが、テクニカル部門ボスであるオリビエ・ジャンソニは、この変化がルール変更にともなう必然的な結果だと説明した。
「当初、レギュレーションはフロントとリヤのタイヤ(幅の)寸法が同じ31/31が必要だったが、その後29/34が認められるようになった。この決定が下された2022年当時は、マシンを設計し直すには遅すぎた。2022年にモンツァでレースをするためにマシンを準備したかったからだ」と一部の記者団に語ったジャンソニ。
「私たちはこの新しいタイヤサイズに合わせてマシンのエアロダイナミクスを変更し、以前バージョンのマシンよりも重量配分を後方寄りに変更し、結果としてエアロバランスも変更した」
「新しい重量配分に合わせてエアロバランスを後方に移動させるために、リヤウイングを装備しているんだ」
「すべてはつながっている。リヤウイングを追加してエアロバランス(の中心)を後方にするため、車体上部で発生するダウンフォースは増えることになる。そうした場合、(車両規定の空力項目にある)パフォーマンスウインドウに適合させるためにアンダーボディのダウンフォースを減らす必要があるんだ」
改良型の登場によりウイングレス仕様のプジョー9X8は前戦で見納めに。前述のとおり、次戦イモラ6時間レースではリヤウイングが装着された93号車と94号車プジョーが公式戦デビューを飾ることになる。ドライバーは引き続きプジョー・ワークスドライバーの6名が務め、ミケル・イェンセン、ニコ・ミューラー、ジャン-エリック・ベルニュ組が93号車をシェアする。94号車はポール・ディ・レスタ、ロイック・デュバル、ソトフェル・バンドーンによってドライブされる。
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