2台の新体制で注目集めるARTA。新加入の大湯&大津が語る課題と鈴木亜久里監督が敷いた布陣の意図
開幕まで1カ月を切った2023年のスーパーGT。シーズンオフのテストから好タイムを連発しているARTA MUGEN NSX-GTの2台が注目されるなか、ARTA新加入となる大湯都史樹と大津弘樹に、ここまでの感触を聞いた。
昨年まではチームとして参戦していたTEAM MUGENがタッグを組み、新体制で2023年シーズンに臨むARTA。8号車に野尻智紀と大湯都史樹、16号車に福住仁嶺と大津弘樹が乗る。すでに冬のテストから速さをみせており、3月初旬に鈴鹿サーキットで行われたメーカーテストでは大湯が1分42秒630という驚異的なタイムをマークして話題となった。3月11〜12日に岡山国際サーキットで開催された1度目の公式テストでも16号車が総合トップタイムを出すなど、存在感ある走りを披露している。
ここまでの手応えについて8号車の大湯に聞くと「全体的にスムーズにやれています。新体制になったとは言っても(MUGENがメンテナンスを担っているので)知っているメンバーがほとんどですし、以前はGT300でARTAから参戦していたので、(鈴木)亜久里さんや土屋(圭市)さんをはじめ、知っている人が多いです。唯一変わったことといえば、タイヤがブリヂストンなことですね」と語った。
ARTAからGT300クラスに参戦(2020年)していたときにブリヂストンタイヤの経験はある大湯だが、GT500クラスになってから同タイヤを履くのは初めてとなる。そこについては「やっぱりブリヂストンとダンロップ、それぞれの良さがあって、特性はすごく違います。見た目は同じタイヤとはいえど、味付け的な部分はかなり違います」と大湯。
「MUGENも昨年までのセットアップがありますけど、それはダンロップ用なので、ブリヂストンを履くとなるとセットアップもだいぶ変わってきます。MUGENとしても探っていかないといけない部分もあるなと感じています」
今季は、全日本スーパーフォーミュラ選手権で野尻とともに活躍している一瀬俊浩エンジニアが8号車のトラックエンジニアを務める。ここも大湯にとっては新たな刺激となっているようだ。
「僕としては8号車もそうですし、一瀬エンジニアと仕事をするのは初めてです。スーパーフォーミュラでの野尻選手とのコンビは長くて実績もありますので、僕としても勉強しつつやっています」
「とにかく今はデータを収集している最中です。ここまで順調にはきていますけど、やらないといけないことはかなりあります。今回のウエットコンディションではミシュラン勢の方が速いですし、ブリヂストンを履くトヨタ勢もずっと調子が良さそうなので、気が抜けないなという感じはしています」
2回の公式テストを経て、課題もたくさんあると語った大湯だが「ARTAが以前から持っているノウハウと、MUGENのチーム力、ポテンシャルが組み合わさっていけば、より強いチームになっていくんじゃないかなという感触はあります」と、今のパッケージの良さを活かせれば、強力なチームになれると確信していた。
■「ホンダのなかで一番強い」順調な2台体制に鈴木亜久里監督も不安なし
一方、16号車の大津も初めて経験するブリヂストンタイヤへの習熟に力を入れている。
「(メンバー的には)昨年の16号車のままです。そのなかでブリヂストンを履くのは初めてですが、8号車と比較しながらテストを進めています。僕にとってもブリヂストンに変わったことで、新しい発見が多くあります。タイヤの使い方もそうですし、今回は特にレインで走れたことで、(ブリヂストンタイヤの)グリップや排水具合などを学べる良い機会でした」
「毎回サーキットが変わったり、コンディションが変わるたびに、どういった走らせ方をすればこのタイヤを活かせるかというのを意識しながら走っています。そのなかでも常に上位のタイムを記録できているのは、パフォーマンスが良い証だと思うので、それを毎回セッションが終わるたびに理解を深められていますし、自信にもなっています」
大津だけでなく、MUGENのメンバーにとってもブリヂストンタイヤに対する理解を深めていかなければいけないシーズンオフとなっていたのだが、そこで重要な役割を果たしているのがブリヂストン経験者の福住仁嶺だ。
「16号車メンバーでブリヂストンタイヤでの基準がないなかで、福住選手が指標を示してくれています。彼のコメントは的確ですし、速さもあります。初めてのブリヂストンなので『これは良いのか悪いのか?』という線引きが難しいときがよくありますが、そういったときに福住選手がビシバシと言ってくれるので、すごく助かっています」と大津。
「コンビネーションも良いですし、お互いが求めているところがすごく近いところもあります。なんといっても福住選手が速いので、それに僕も引っ張られていってタイムが上がっています。今シーズンは、チャンピオンを目標にすることはもちろんですが、まずは1勝を目指して獲得できるように頑張りたいと思います」と力強く語った。
また、2台体制で順調にテストが進んでいる様子に、鈴木亜久里監督も「今のところ不満はないし、順調にいっていると思います。MUGENはメンテナンス屋さんというよりは、エンジンやクルマも作れる“メーカー”です。エンジニアの人数も個々のレベルも高いので、そこは心配していないです」と話した。
新しいドライバーラインアップについても不安要素はまったくないとのことだ。
「(新加入の)ふたりとも速いことは分かっているので特に心配はしていないし、今年はブリヂストンのことをわかっている野尻と福住を分けて、それぞれコンビを組ませています。その方が(タイヤを理解するのが)早いだろうと思いました」と、野尻と福住のコンビを解消して2台に振り分けた経緯についても説明した。
ここ数年はシーズン中に勝利を挙げるも、チャンピオン争いでは惜敗が続いているARTA。2023年にかける亜久里監督の想いは強い。
「GT500を2台体制でやりたいというのは前から思っていましたし、NSX-GT最後の年でブリヂストンタイヤを履いて2台で参戦できることになり、ドライバーも含め、ホンダのパッケージのなかで一番強いと思っています。今年は一番良い体制を作れたのではないかなと思います」
「そのパッケージを作るのが僕の仕事だったので、あとはみんなが頑張ってチャンピオンを獲ってくれると思っています」と、いつになくシーズン開幕に向けて自信をみせている亜久里監督が印象的だった。
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