【ルノーF1首脳独占インタビュー】ホンダPUについて「去年の後半時点で、出力差は非常に小さい」
2018年F1第3戦中国GPではルノーがダブル入賞を果たし、同じルノーPUを搭載しているレッドブルのダニエル・リカルドは優勝を果たした。好調な結果を出しているPUについて、予選限定で解禁したルノー版パーティモードやホンダPUとのパワー差など気になるポイントを、ルノー・スポール・レーシングのマネージングディレクターであるシリル・アビテブールに聞いた。
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●「リカルドのターボトラブルが、唯一の痛恨事だった」
──結果には、満足していますか。
シリル・アビテブール(以下、アビテブール):もちろんだよ。2台入賞の目標をきっちり果たしたし、中団勢最速の結果を残せたからね。当初は1ストップ作戦で行くつもりだったのを、2ストップに変更する手際もミスなくうまくいった。その点も、満足だ。そして何より、ダニエル・リカルドの優勝がうれしいね。ライバルが潰れていない状況でも、ルノーPU搭載マシンが実力で勝てることを証明したわけだから。確かに予選での最大パワーは、まだメルセデスやフェラーリに負けてるが、レースでの総合力では決して引けを取ってない。
──リカルドにはFP3でターボトラブルが発生しました。
アビテブール:そう。それがこの週末唯一の問題点だった。なぜ起きたのか、その原因究明が私の今の最優先課題だ。
──ルノーワークス、そしてこのトラブルを除けばルノー製PUの進化度合い、両方は満足すべきレベルにある?
アビテブール:このトラブルを無視しては、何も語れないけどね(苦笑)。しかし全般的に、着実に前進はしているよ。そして今年のF1は非常に面白い。
──といいますと?
アビテブール:2連戦のバーレーンと中国の展開を見れば明らかだ。その間にクルマ自体はほとんど変化がなかった。アップデートを投入する余裕は、どのチームにもなかったからね。ところが特に中団勢での、力関係が激変した。バーレーンであれだけ速かったトロロッソ・ホンダが失速し、代わりにフォース・インディアが台頭した。
一方ルノーとハースは、ほぼ安定したペースを発揮できてる。当初から言って来たことだが、われわれは決して先を急がない。改善が遅すぎると批判された時期もあるけれど、今年の速さを見ればわれわれの方法論が間違ってなかったことが、わかってもらえると思う。
──中国ではリカルドのターボトラブルとは別に、ルノーワークス2台がMGU-Hを交換しています。
アビテブール:それとターボトラブルは、関係ないよ。
──新しい仕様に換えたんでしょうか。
アビテブール:いや、以前と同じだ。正確に言えば、レッドブルとマクラーレンがすでに使っている仕様に合わせたと言った方がいい。ロジスティックのミスで適切なパーツがワークスのMGU-Hだけに使われてなかったことが、偶然発見された。具体的には、シールドの仕様が間違っていてね。封印されているので、ここだけ変えるわけにはいかない。それでMGU-H全体を交換することになった。
●ルノーも「パーティモード」を解禁
──ターボトラブルについて考えられる原因は?
アビテブール:わからない。ベンチテストでも、冬の実走テストでも、まったく問題は出ていなかった。唯一バルセロナテストの第2週目に、マクラーレンにオイルリークの問題が出た。それでターボを交換したんだが、そのトラブルと関連があるのか、これからしっかり究明する。
──今季のターボは、去年型とは違う?
アビテブール:まったく違う。コンセプト、デザインが、そもそも違う。より多くのパワーを発生するためにね。しかし当初からまったくトラブルフリーだっただけに、非常に困惑しているよ。
── 一方で、信頼性が十分に確立できたとして、高出力モードを解禁しました。
アビテブール:そう。ただし予選限定だ。レース中も、使い放題というわけじゃない。これまでも予選モードはもちろんあったが、ライバルたちほどパワフルではなかった。それをもう少し、高出力に振ったということだ。
──ルノー版パーティモードですか。
アビテブール:(笑)さすがにそうは呼んでない。まだメルセデスのパーティモードには達してないから、ウォームアップパーティかな(笑)。まだ始めたばかりだけど、少なくともコンマ1秒以上のゲインはある。
──そのパワー解禁と、ターボトラブルとの関連は?
アビテブール:まったくない。トラブルが起きたのは予選前のFP3、そのモードはまだ使ってもいなかったからね。
──ルノー版パーティモードは、単にマッピングの変更ですか。
アビテブール:いや、それだけじゃない。ICE、ERS、すべてを総動員してると言った方がいいね。
●「ホンダパワーは、ルノーとほぼ遜色ない」
──ホンダ製パワーユニットの進化は、どう見ていますか。
アビテブール:印象的な進化と言っていいね。というかすでに彼らは去年の後半には、かなりのパフォーマンスアップに成功していた。しかし信頼性が欠如していたために、それがなかなか結果に結びつかなかった。だがわれわれの目には、予選一発の速さ、そしてレースでも少なくとも序盤のパフォーマンスは、十分に戦えるレベルだった。
しかしそれをレース終盤まで持続させることが、なかなかできなかった。信頼性の問題だったり、燃費やエネルギーマネージメントの問題でね。それがこの冬以降は、それらの懸案もすっかりクリアしたように見える。今後は確立された信頼性をベースに、パワーも伸ばしてくるはずだ。しかしこの展開は、驚くことでも何でもない。それだけの予算を投入しているし、何より彼らにはレーシングエンジン開発の長い歴史があるからね。去年中盤にはそこまで行けると思っていたのが、少し延びたわけだが。
──純粋な出力の観点で、ホンダはまだルノーの下でしょうか。
アビテブール:下かもしれないが、その差は非常に小さい。
──今年のパワーユニット比較で?
アビテブール:いや、すでに去年の後半時点で、そこまで来ていたよ。
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