激変したホンダとトヨタの勢力関係と明暗分かれたQ2。スーパーフォーミュラ鈴鹿予選《あと読み》
2018年のスーパーフォーミュラ開幕戦。ソフトタイヤの全戦投入で2スペック制となった今季の勢力図はどうなるのか。もっとも速いドライバーを決める予選でのパフォーマンスに注目が集まったが、結果として、予選Q2で明暗分かれる形となった。
予選Q1を突破した14台で争われた予選Q2。多くのドライバーがアタックに入っている最中、平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)がデグナーふたつめで飛び出してしまい、赤旗中断。ピークのグリップが1周しかもたないソフトタイヤでアタックをしていたドライバーは、その後の選択が別れた。
山本尚貴(TEAM MUGEN)、福住仁嶺(TEAM MUGEN)、野尻智紀(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、伊沢拓也(TCS NAKAJIMA RACING)など、ギリギリすでにアタックを終えていたドライバーはその時点で実質Q3進出決定。残りの10台近くのドライバーが、そのまま装着していたソフトタイヤのユーズドで2度目のアタックに向かうか、それとも2セットあるうちの2セット目のソフトタイヤを投入するかで、悩まされた。
Q2で2セット目のソフトタイヤを投入すれば、予選Q3ではユーズドのソフトタイヤ、またはミディアムタイヤでアタックをしなければならず、ポールポジションの可能性は絶望的。だが、ユーズドのソフトタイヤのままでQ2を突破できれば、Q3で新品の2セット目のソフトタイヤを投入でき、ポールポジションの可能性が見えてくる。
各チーム、各ドライバーはタイヤの選択を悩まされ、石浦宏明(P.MU / CERUMO · INGING)、中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)などが2セット目のソフトタイヤを投入してQ2突破を果たしたが、Q3では実質、ポールポジションを争う権利がなく、石浦6番手、一貴7番手に終わってしまった。
また、Q1をトップで通過し、Q2でも赤旗が出る第3セクターまでファステストタイムをマークしていた松下信治(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)は、赤旗でそのタイムが帳消しに。セッション再開後にユーズドでアタックを試みたがQ2敗退となり、予選日の悲運のヒーローとなってしまった。「セクター3までアタックしていたので、赤旗はどうしようもなかった。ウォームアップで1周と2周、ストラテジーの違いが出てしまったが、仕方ない」と、公式映像のインタビューに答えた松下。
多くのドライバーがウォームアップを1周でアタックに入るなか、松下は2周をかけてゆっくりとタイヤを温めてからアタックしていたが、それが裏目になってしまった。そこまで圧倒的な速さを見せていただけに、なんとも悔しい予選Q2敗退となってしまった。
予選Q3でニュータイヤのソフトタイヤを残していたのは4名で、結果としてトップ山本から、福住、野尻、伊沢の順となったが、今回の予選で印象的だったのが、Q1ではトップ6がホンダ陣営、Q2はトップ4、Q3はトップ5と、上位をすべてホンダ陣営が独占している点だ。
タラレバで『もし予選Q3でニュータイヤのソフトタイヤが残っていたらポールを争えたか』という問いに、「まったく見えません」と石浦が話せば、「今の状態では絶対無理です」と一貴も即答。他のトヨタ勢のドライバーに聞いても明言はしなかったが、エンジン開発の面でホンダとトヨタの勢力図が大きく代わったことが露呈したのが、今回の予選の一番のトピックスだとも言える。
実際、エンジンの出力が大きく違えば燃費の差も大きくなり、レースのラップタイムだけでなく、300kmという長距離レースでは給油時間を考えるとホンダ陣営のアドバンテージはかなり大きいと言わざるを得ない状況だ。
ホンダエンジンが大きく進化したのか、それともトヨタエンジンに何か開発上の問題があったのか、その真相はまだ知る由もないが、決勝はソフトタイヤの使い方とそのライフ、そしてホンダ陣営内でのトップ争い、山本と福住の師弟対決&ホンダの新旧バトルに注目が集まり、予選日でダントツにクルマが決まっていた松下が決勝でどこまで順位を挽回するかが見どころとなる。
その中でトヨタユーザーがどこまで存在感を示せるか。ホンダ陣営とトヨタ陣営の関係が、劇的に変わりつつあるのが象徴される開幕戦の予選となった。
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