【角田裕毅F1第5戦分析】問題を抱えながらも最後列スタートを選択。リタイアに終わるも一段と成長した振る舞いを見せる
F1第5戦中国GPは、角田裕毅(RB)にとっては残念な週末となった。金曜日と土曜日の予選はともにSQ1、Q1敗退。雪辱を期して臨んだ日曜日のレースでは、角田にはどうすることもできないアクシデントに巻き込まれ、リタイアとなった。
ただし、この絶望的な状況にあっても、ポジティブな点がなかったわけではない。チームと角田は、たとえ予選で十分なスピードがなかったとしても、ポイント獲得を諦めない姿勢でレースに臨んでいた。
筆者は、土曜日の予選でセッティングが決まらず角田が19番手に終わった時点で、日曜日のレースはピットレーンスタート覚悟でセットアップを大幅に変更してくるのではないかと考えていた。
しかし、チームも角田も、それは選択しなかった。土曜日のスプリント後に変更したセットアップに明らかなミスがあったり、角田がリヤのグリップ不足に陥っている明らかな原因が突き止められていて、セットアップ変更でそれが改善されることが見込まれているのであれば、それもひとつの手だろう。
だが、土曜日の予選が終わってもなお、レーシングディレクターのアラン・パーメインは「ユウキのクルマに起きている問題の原因は特定されていない」と語っていた。つまり、この状況でのセットアップ変更は、かなりギャンブルに近い選択となることを意味していた。当たればいいが、もしセットアップを変更しても、レースで改善されなければ、レースでポイントを獲得できないだけでなく、土曜日までの2日間のセットアップ作業をすべて台無しにすることも意味していた。
果たしてチームと角田は予選19番手という現実を受け入れ、そのセットアップでレースを走るとどうなるのか、そして、そのセットアップでもポイント争いに加わるためにはどんな戦略が必要なのかを考え、スタートでソフトタイヤを選択した。
その決断は功を奏して、角田は1周目に3つポジションを上げて16番手まで浮上。その後もリヤのグリップ不足に依然として悩まされ続けながらも、中団グループのなかでレースを戦っていた。
残念ながら、その戦いも接触によりリタイアに終わり、ポイントを持ち帰ることはできなかったが、収穫がなかったわけではない。それは角田の成長を感じることができたことだ。
今年に入って、角田が昨シーズンまでと大きく変わっていることは薄々感じていたが、それが中国GPで実感できた。たとえば、昨年までの角田なら予選Q1で敗退すると、かなり落ち込み、メディアへの対応も口数が少なくなっていたものだった。今年はしっかりと分析し、冷静に状況を話していた。
またレースで接触した後などは、興奮して相手を非難することもあったが、今回は「僕は十分スペースを与えていたのに、すごく残念。彼には与えられた10秒のほうが妥当だと思いますが、それでも僕のレースは返ってこない」と冷静にメディア対応を行っていた。
そして、そんな状況で週末を終えながらも、次戦に向けてこう語った。
「ファエンツァに戻ったら、今回の不振の原因を調査し、マイアミではチームとしてもっと強くなって戻ってきます」
人の価値は困難な状況の時に問われると言われる。そういう意味では、中国GPでの角田の振る舞いは、トップドライバーへの階段をまた一段上がっていたように感じた。
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