中嶋一貴組8号車トヨタがデビューウイン! 7号車はアクシデント&トラブルに泣く/WECスパ
5月1日、ベルギーのオールドトラック、スパ・フランコルシャン・サーキットでWEC世界耐久選手権第1戦スパ・フランコルシャン6時間レースの決勝が行われ、TOYOTA GAZOO Racingの8号車トヨタGR010ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドレン・ハートレー組)が2021年シーズンの開幕戦を制した。
WEC“ハイパーカー元年”のシーズンが、新型コロナウイルスの影響による度重なるオープニングイベントの延期の末、無観客開催とはなったものの5月に入ってようやく開幕のときを迎えた。“スパ・ウェザー”で知られるベルギー伝統のサーキットでの決勝は晴天に恵まれ、気温9.2度、路面温度28度のドライコンディションのなかでスタートが切られていく。
予選でフロントロウを独占した7号車と8号車の2台のトヨタGR010ハイブリッドを先頭とする隊列は、LMP2の集団の中で軽い接触があったが大きな混乱はなく1コーナーを通過。直後、ラソースの立ち上がりで予選3番手につけた22号車オレカ07・ギブソン(ユナイテッド・オートスポーツUSA)がトヨタ勢の前に躍り出るが、オー・ルージュまでの加速で7号車トヨタが、ラディオンの立ち上がりで8号車トヨタもこれを交わし順位を取り戻す。
一方、4番手からスタートした36号車アルピーヌA480・ギギブソン(アルピーヌ・エルフ・マットミュート)がLMP2勢に飲まれ一時は6番手まで後退する。その後、徐々に隊列が長くなっていくとともにアルピーヌがP2のオレカ勢を交わしていき、フィル・ハンソン駆る22号車オレカの背後につけると、ここから約15分にわたって3番手争いが繰り広げられた。
スタートから20分後、ようやくアルピーヌがユナイテッドを攻略。その間に5秒ほどライバルを離したトヨタ勢は2台のポジションを入れ替えブエミの8号車を先行させる。
20周終わりでアルピーヌが最初のピットに向かうと、トヨタは7号車が23周終わりに、8号車がその翌周に給油のためピットインを行う。この際、8号車の給油担当メカニックが、リグを規定の最低時間である35秒よりも約6秒早く抜いてしまい、後にペナルティを受けることに。
第2スティントは8号車トヨタを先頭に約2秒差で7号車トヨタが続き、36号車アルピーヌがさらに2〜4秒遅れて周回を重ねる展開。2度目のピットストップもアルピーヌが先に動き、アンドレ・ネグラオから元トヨタのニコラ・ラピエールに交代してコースに復帰する。
トヨタ勢もドライバー交代を行い第3スティントに入るが、ここで8号車は30秒のストップペナルティを消化。順位を3番手に落とし、トップに立った36号車を追う立場になる。
中盤、ピットストップの度にリーダーが入れ替わる展開のなかレース折返しを過ぎてトップに立った7号車トヨタが、バスストップ・シケインで91号車ポルシェ911 RSR-19(ポルシェGTチーム)に追突。ホセ-マリア・ロペス駆る7号車から左フロントライトカバーが脱落した。
アクシデントから約30分後、91号車ポルシェのタイヤトラブルに起因するデブリ回収のためフルコースイエロー(FCY)が導入される。このタイミングで、トヨタより1回ピットストップが多くなることが予想されたアルピーヌが予定を早めてピットに入った。
スタートから4時間過ぎ、小林可夢偉駆る首位7号車が8コーナーでコースオフ。タイヤバリアへのクラッシュは免れたものの、グラベルにスタックしてしまい今レース2度目のFCYが出された。
■終盤まで続いたアルピーヌとの優勝争い
2度目のリスタート後はアルピーヌがトップに浮上する。2番手にはFCY中にピットストップを行い、アンセーフリリースの5秒ストップペナルティも同時に消化した8号車トヨタがつける展開に。一方、7号車トヨタは戦線に復帰したが1ラップダウンとなり、その後ポルシェとのコンタクトによるドライブスルーペナルティを受け、勝負権を完全に失った。
5時間目を迎える前にアンカーに交代した上位2台は、アルピーヌが8号車トヨタを約28秒先行する。しかし、最後のスプラッシュ&ゴーを控えたネグラオが右フロントタイヤのパンクを訴えてピットイン。36号車は最後のピット作業にタイヤ交換を加えることになった。
対する8号車はレース残り53分で最後のルーティンピット作業を終え、36号車のピットイン後に首位に浮上。最終盤は3度目のFCYを挟んだスティントでライバルを約55秒リードした状態でラップを重ね、スタートから6時間後にブエミがトップチェッカーを受け新型ハイパーカー、トヨタGR010ハイブリッドのデビューウインを達成した。
アルピーヌは1分07秒遅れの総合2位でフィニッシュ。総合3位には終盤に車両トラブルを抱え、3度目のFCY中に一時マシンを停めてシステムの再起動を行いながら走行を続行した7号車トヨタが入り、表彰台の一角を確保している。
LMP2クラスはポールポジションからスタートし、序盤はハイパーカークラスを脅かす存在となったユナイテッド・オートスポーツUSAの22号車オレカ07・ギブソン(フィル・ハンソン/ファビオ・シェーラー/フィリペ・アルバカーキ組)が、ドライブするーペナルティを受けながらポール・トゥ・ウインを達成。クラス2番手と3番手には同じくペナルティを受けたJOTAの38号車オレカと28号車オレカが入った。
LMGTEプロクラスのウイナーとなったポルシェGTチームの92号車ポルシェ911 RSR(ケビン・エストーレ/ニール・ジャニ組)もポール・トゥ・フィニッシュを飾ったチームのひとつだ。彼らは予選の速さをそのままに序盤からリードを広げ、中盤のパンクをはねのけ、ここスパで2連覇を果たした。
AFコルセの51号車と52号車フェラーリ488 GTEエボがクラス2位、3位に入りダブル表彰台を獲得。今戦がキャリアラストレースとなったオリバー・ギャビンが乗り込んだ63号車シボレー・コルベットC8.Rはクラス4位でレースを終えている。
LMGTEアマクラスでは、ディフェンディングチャンピオンの83号車フェラーリ488 GTEエボとTFスポーツの33号車アストンマーティン・バンテージAMRが優勝争いを繰り広げ、中盤以降優位にレースを進めたAFコルセ(フランシスコ・ペロード/ニクラス・ニールセン/アレッシオ・ロベラ組)に軍配が上がった。
プロローグでマシン全損のアクシデントに見舞われ、今戦はELMSで使用しているマシンを取り寄せて戦ったTFスポーツはクラス2位フィニッシュに。3位はLMP2から参戦クラスをスイッチしたチェティラー・レーシングの47号車フェラーリ488 GTEエボとなっている。
日本のDステーション・レーシングは、藤井誠暢がスタートスティントで最後尾スタートから3番手に順位を上げる力走をみせる。その後777号車アストンマーティン・バンテージAMRは星野敏、アンドリュー・ワトソンへとバトンがつながれ、最後はふたたび藤井のドライブでWEC初陣をクラス6位でフィニッシュした。
“ハイパーカー時代”を迎えたWECの次戦第2戦ポルティマオ8時間レースは6月11〜13日、ポルトガルのアルガルベ・サーキットで行われる予定だ。
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