来シーズンのバルサを読み解くための「5つのテーマ」
サッカーキング2018年5月2日(水)18時0分
リーガとコパ・デル・レイの二冠で締めくくった2017-18シーズンを経て、来シーズンのバルセロナはどこに向かうのか [写真]=NurPhoto via Getty Images
リーガ・エスパニョーラ第35節のデポルティーボ戦を4-2で制し、2017-18シーズンの優勝を決めたバルセロナ。サッカー界の移ろいは早いもので、すでに来シーズンにおけるチーム構想の話題も出てきている。そこで今回は、2018-19シーズンのバルサがどのようなチームになるのか、「5つのテーマ」に沿って読み解いていく。
①“魔術師”イニエスタの退団で生じる大きな穴
来シーズンのチーム編成に間違いなく大きな影響を与えるのが、アンドレス・イニエスタの退団だ。長らく去就が注目されてきたが、4月27日に行われた会見で正式に退団を発表。圧倒的なテクニックで相手を翻弄してきた“魔術師”との別れによって、中盤の構成力が下がることは避けられないだろう。
すでに獲得合意の報道がなされているブラジル代表MFアルトゥール・メロ(グレミオ)は、イニエスタの後継者になることが期待されている。一部では“ブラジルのイニエスタ”という異名をとっている21歳が、卓越した技術を持っていることは確かだ。
だが、欧州でのプレー経験がないアルトゥールが、ただでさえ適応が難しいバルサでいきなり活躍できるかどうかは未知数だ。過去にブラジルから“直輸入”した選手は、ほとんど活躍できずにクラブを去っている。現実的に考えれば、今冬に獲得したフィリペ・コウチーニョがイニエスタの役割を担うことになるだろうが、それでも退団の穴は早々のことでは埋まらないのかもしれない。
②場合によっては駒不足の可能性も…センターバックの構成はどうなる?
リーガとコパ・デル・レイの二冠に輝いた今シーズン、バルサの守備は非常に安定していた。エルネスト・バルベルデにとって、センターバックのコンビはジェラール・ピケとサミュエル・ユムティティがファーストチョイスであり続けた。
しかし、シーズン途中でユムティティに移籍の噂が浮上すると、本人も「幾つかオファーがある」と発言。後にこの噂は収束したものの、左利きのフランス人が市場で人気銘柄であることが明白になった。また、ピケも31歳になりキャリアの終盤に差し掛かっている。後任探しのために残された時間は、決して多くはない。
クラブは、アヤックスのマタイス・デ・リフトを追いかけている。18歳とは思えない落ち着きで相手の攻撃をシャットアウトするだけでなく、最終ラインから繰り出すパスの質も高い。
即戦力という点では、セビージャのクレマン・ラングレも獲得の可能性が高そうだ。スペインのサッカーに馴染んでいる点は、デ・リフトにはない魅力と言える。
現有戦力ではトーマス・ヴェルマーレンにも移籍の噂がついてまわり、今冬に獲得したジェリー・ミナは期限付き移籍に出されるという話も。来シーズンのバルサはセンターバックの駒不足に陥る危険性があり、新戦力の補強に動く可能性は十分だ。
③グリーズマン加入はあり得るのか
サミュエル・エトオ、ズラタン・イブラヒモビッチ、ルイス・スアレスと常に強力なフォワードを補強し続けてきたバルサに、来シーズン新たな“クラック(名選手の意味)”が加わる可能性がある。
その男の名は、アントワーヌ・グリーズマン。言わずと知れたアトレティコ・マドリードのエースだ。リーガのライバルから大黒柱を引き抜くとなれば、バルサ攻撃陣の「個」の力はより強力なものになる。
グリーズマンがやってくるのであれば、今シーズンの基本軸だった4-4-2システムの継続採用の色が濃いように思う。スアレスの少し後ろでセカンドトップのようなポジションをとる形だ。または、4-2-3-1システムの導入に踏み切り、彼をトップ下に配置する策もあるかもしれない。いずれにしても、レアル・ソシエダ時代のようにウイング起用されることはなさそうだ。
④希薄になる“カンテラの価値”…トップチームに登りつめる若武者は?
かつて、バルサとレアル・マドリードの関係は“カンテラ(下部組織)とカルテラ(財布)”という言葉で表されていた。必要な選手を自前で育てるバルサと、豊富な資金力で他クラブから選手を連れてくるレアル……。
しかし、いまやバルサのアイデンティティは揺らいでいる。近年、下部組織上がりでトップチームに定着したのはセルジ・ロベルトくらい。マルク・バルトラも、セルジ・サンペルも、ムニル・エル・ハダディも、サンドロ・ラミレスも、各国の代表選手が揃うチームに定着することができずに他クラブへと去っていった。
最もトップチーム定着に近いのは、現在Bチームに所属しているカルレス・アレニャだろう。左利きのテクニシャンで、狭いスペースでも自らのスキルを発揮できる“バルサらしい”選手だ。すでにコパでトップチームデビューを果たしているホセ・アルナイスにも、タレント集団に割って入るだけの素質がある。
若手を積極的に登用することで知られるバルベルデだが、今シーズンは結果を重視したこともあって、カンテラに賭ける場面はほとんどなかった。リーガとコパを獲ったことで多少なりとも余裕ができた来シーズンは、アレニャをはじめとする原石たちにも出番があるだろう。
⑤“2017-18シーズン加入組”をどう生かすか
バルサは今シーズン開幕前に、ネルソン・セメド、パウリーニョ、ウスマン・デンベレを獲得。冬の移籍市場ではジェリー・ミナとコウチーニョをチームに迎え入れた。パウリーニョは恵まれたフィジカルを存分に生かして“キーマン”とも言える存在になり、コウチーニョも適応のための時間が少ないながら、高いテクニックで違いを生み出せることを証明した。
一方で、ネルソン・セメド、ウスマン・デンベレ、ジェリー・ミナは、ポテンシャルを発揮しきれずにシーズンを終えようとしている。バルサ独特のスタイルに馴染めなかったり、負傷により適応の時間が取れなかったりと、その理由は様々だ。
来シーズンもリーガ、コパ、チャンピオンズリーグの3大会を戦い抜くために、彼ら“不完全燃焼組”の戦力化はマストだろう。セメドは守備の対応を習得すれば右サイドバックとして出場機会を増やせるだろうし、デンベレも周囲との相互理解が深まれば、変幻自在のドリブルを披露する場面は多くあるはず。間違いなく彼らは、来シーズンの“補強選手”となれるポテンシャルを持っている。
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今シーズン開幕前、バルサの戴冠を予想していた人は決して多くなかったに違いない。もっともらしいデータを持ち出して予想してみても、識者の意見に傾倒してみても所詮“勝負は水物”、蓋を開けてみなければ勝負の行方は分からない。
ただ、来たるシーズンについて「ああでもない、こうでもない」と夢想する楽しさは、サッカーの醍醐味のひとつだろう。2018-19シーズンのバルサを考えるうえで、この「5つのテーマ」を念頭に入れておいて損はない。
①“魔術師”イニエスタの退団で生じる大きな穴
来シーズンのチーム編成に間違いなく大きな影響を与えるのが、アンドレス・イニエスタの退団だ。長らく去就が注目されてきたが、4月27日に行われた会見で正式に退団を発表。圧倒的なテクニックで相手を翻弄してきた“魔術師”との別れによって、中盤の構成力が下がることは避けられないだろう。
すでに獲得合意の報道がなされているブラジル代表MFアルトゥール・メロ(グレミオ)は、イニエスタの後継者になることが期待されている。一部では“ブラジルのイニエスタ”という異名をとっている21歳が、卓越した技術を持っていることは確かだ。
だが、欧州でのプレー経験がないアルトゥールが、ただでさえ適応が難しいバルサでいきなり活躍できるかどうかは未知数だ。過去にブラジルから“直輸入”した選手は、ほとんど活躍できずにクラブを去っている。現実的に考えれば、今冬に獲得したフィリペ・コウチーニョがイニエスタの役割を担うことになるだろうが、それでも退団の穴は早々のことでは埋まらないのかもしれない。
②場合によっては駒不足の可能性も…センターバックの構成はどうなる?
リーガとコパ・デル・レイの二冠に輝いた今シーズン、バルサの守備は非常に安定していた。エルネスト・バルベルデにとって、センターバックのコンビはジェラール・ピケとサミュエル・ユムティティがファーストチョイスであり続けた。
しかし、シーズン途中でユムティティに移籍の噂が浮上すると、本人も「幾つかオファーがある」と発言。後にこの噂は収束したものの、左利きのフランス人が市場で人気銘柄であることが明白になった。また、ピケも31歳になりキャリアの終盤に差し掛かっている。後任探しのために残された時間は、決して多くはない。
クラブは、アヤックスのマタイス・デ・リフトを追いかけている。18歳とは思えない落ち着きで相手の攻撃をシャットアウトするだけでなく、最終ラインから繰り出すパスの質も高い。
即戦力という点では、セビージャのクレマン・ラングレも獲得の可能性が高そうだ。スペインのサッカーに馴染んでいる点は、デ・リフトにはない魅力と言える。
現有戦力ではトーマス・ヴェルマーレンにも移籍の噂がついてまわり、今冬に獲得したジェリー・ミナは期限付き移籍に出されるという話も。来シーズンのバルサはセンターバックの駒不足に陥る危険性があり、新戦力の補強に動く可能性は十分だ。
③グリーズマン加入はあり得るのか
サミュエル・エトオ、ズラタン・イブラヒモビッチ、ルイス・スアレスと常に強力なフォワードを補強し続けてきたバルサに、来シーズン新たな“クラック(名選手の意味)”が加わる可能性がある。
その男の名は、アントワーヌ・グリーズマン。言わずと知れたアトレティコ・マドリードのエースだ。リーガのライバルから大黒柱を引き抜くとなれば、バルサ攻撃陣の「個」の力はより強力なものになる。
グリーズマンがやってくるのであれば、今シーズンの基本軸だった4-4-2システムの継続採用の色が濃いように思う。スアレスの少し後ろでセカンドトップのようなポジションをとる形だ。または、4-2-3-1システムの導入に踏み切り、彼をトップ下に配置する策もあるかもしれない。いずれにしても、レアル・ソシエダ時代のようにウイング起用されることはなさそうだ。
④希薄になる“カンテラの価値”…トップチームに登りつめる若武者は?
かつて、バルサとレアル・マドリードの関係は“カンテラ(下部組織)とカルテラ(財布)”という言葉で表されていた。必要な選手を自前で育てるバルサと、豊富な資金力で他クラブから選手を連れてくるレアル……。
しかし、いまやバルサのアイデンティティは揺らいでいる。近年、下部組織上がりでトップチームに定着したのはセルジ・ロベルトくらい。マルク・バルトラも、セルジ・サンペルも、ムニル・エル・ハダディも、サンドロ・ラミレスも、各国の代表選手が揃うチームに定着することができずに他クラブへと去っていった。
最もトップチーム定着に近いのは、現在Bチームに所属しているカルレス・アレニャだろう。左利きのテクニシャンで、狭いスペースでも自らのスキルを発揮できる“バルサらしい”選手だ。すでにコパでトップチームデビューを果たしているホセ・アルナイスにも、タレント集団に割って入るだけの素質がある。
若手を積極的に登用することで知られるバルベルデだが、今シーズンは結果を重視したこともあって、カンテラに賭ける場面はほとんどなかった。リーガとコパを獲ったことで多少なりとも余裕ができた来シーズンは、アレニャをはじめとする原石たちにも出番があるだろう。
⑤“2017-18シーズン加入組”をどう生かすか
バルサは今シーズン開幕前に、ネルソン・セメド、パウリーニョ、ウスマン・デンベレを獲得。冬の移籍市場ではジェリー・ミナとコウチーニョをチームに迎え入れた。パウリーニョは恵まれたフィジカルを存分に生かして“キーマン”とも言える存在になり、コウチーニョも適応のための時間が少ないながら、高いテクニックで違いを生み出せることを証明した。
一方で、ネルソン・セメド、ウスマン・デンベレ、ジェリー・ミナは、ポテンシャルを発揮しきれずにシーズンを終えようとしている。バルサ独特のスタイルに馴染めなかったり、負傷により適応の時間が取れなかったりと、その理由は様々だ。
来シーズンもリーガ、コパ、チャンピオンズリーグの3大会を戦い抜くために、彼ら“不完全燃焼組”の戦力化はマストだろう。セメドは守備の対応を習得すれば右サイドバックとして出場機会を増やせるだろうし、デンベレも周囲との相互理解が深まれば、変幻自在のドリブルを披露する場面は多くあるはず。間違いなく彼らは、来シーズンの“補強選手”となれるポテンシャルを持っている。
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今シーズン開幕前、バルサの戴冠を予想していた人は決して多くなかったに違いない。もっともらしいデータを持ち出して予想してみても、識者の意見に傾倒してみても所詮“勝負は水物”、蓋を開けてみなければ勝負の行方は分からない。
ただ、来たるシーズンについて「ああでもない、こうでもない」と夢想する楽しさは、サッカーの醍醐味のひとつだろう。2018-19シーズンのバルサを考えるうえで、この「5つのテーマ」を念頭に入れておいて損はない。
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