大一番で問われる真価…名古屋の要・稲垣祥「こういう逆境で何ができるか」
サッカーキング2021年5月3日(月)12時0分
名古屋グランパスに所属する稲垣祥 [写真]=兼子愼一郎
2020年J1&天皇杯2冠の川崎フロンターレが今季も止まらない。2月の富士ゼロックススーパーカップからここまで無敗できており、J1でも目下、勝ち点35で首位を独走している。
「絶対王者にどこが歯止めをかけるのか」というのは、全19チームの命題。その一番手と目された名古屋グランパスだが、ご存じの通り、4月29日のホームゲームでは0−4の完敗を喫した。
左サイドバック(SB)の吉田豊が「川崎はいつも以上にやるという感覚で臨んできたのに、僕らはいつも以下になってしまった。試合が始まった時点で勝負がついていたのかなという気がする」と述懐した通り、開始3分の旗手怜央のゴールからすべての歯車が狂ってしまった。
しかしながら、彼らには4日のアウェイゲームで一矢報いるチャンスがある。マッシモ・フィッカデンディ監督がコロナ陽性で不在という苦境は続くものの、チーム全体の闘争心と一体感は高まる一方だ。
「あんな負け方をして悔しさとかやり返してやろうという気持ちがないわけではないですし、『次も厳しい』みたいなメンタルの選手がいたらプロ失格。改めて『こういう逆境で何ができるか』というのが試されている時だと思います」と中盤の要・稲垣祥も目をギラつかせた。このまま2連敗を喫したら、2021年J1の火が消えるかもしれない重要な一戦をどう戦うのか……。まさに名古屋の真価が問われると言っていい。
彼らが今、思い出すべきなのは、本拠地・豊田スタジアムで川崎を1−0で振り切った昨年8月23日の勝ち試合だろう。名古屋は高度に意思統一された守備組織を形成。ボールを支配し、流動的にポジションを変えながらフィニッシュに持ち込んでくる相手を跳ね返し続け、前半終了間際にエース・金崎夢生がマテウスの左クロスにヘッドで合わせ先制。虎の子の1点をガッチリ守り切ったという名勝負だ。「川崎に攻めさせ、疲れさせて、スキを突く」という名古屋らしい試合運びを取り戻すことができれば、等々力競技場でのリベンジは不可能ではないはずだ。
「普通に考えて、グランパスが勝つんだったら、ああいう(昨年8月のような)ゲームというのは、みなさんもイメージする通りだと思います。あの時は戦術的なディテールや詰め方がしっかりできていたからこそ、最後の際のところで守り切れたり、半歩相手に寄せられた。守備時も攻撃時も立ち位置含めてしっかり整理したうえで、気持ちのこもったプレーを出せれば、同じような試合展開や結果にできる」と生き証人である稲垣は語気を強めていた。
川崎に主導権を握られ、空いたスペースに次々と飛び込まれても、必ずマークがいる状態を維持して相手を焦らすというのは、中盤の要である稲垣の大きな仕事に他ならない。それを遂行しきれなかったから、4月29日のゲームでは前半のうちに3失点を食らってしまった。同じ轍を踏んだら、川崎を止めることも、J1タイトルを手にすることもできない。次戦の重要性をひしひしと感じながら、彼はピッチに立つつもりだ。
この一戦でのパフォーマンスが自身のキャリアにつながる可能性も皆無とは言えない。というのも、川崎には田中碧、脇坂泰斗、三笘薫、山根視来といった日本代表候補がズラリと並んでいるからだ。
3月の2022年カタールワールドカップ(W杯)アジア2次予選・モンゴル戦で初キャップを飾ると同時に、いきなり2発をお見舞いした稲垣だが、まだ代表定着を果たしたとは言い切れない状況にいる。
ドイツ・ブンデスリーガ1部デュエル王の遠藤航、2018年ロシアW杯16強戦士の柴崎岳、欧州移籍で大化けした守田英正らがひしめくボランチ激戦区に29歳の国内組の人間が割って入ろうと思うなら、Jの舞台で圧倒的な存在感とインパクトを残し続けるしかない。
それを本人も痛感しているに違いない。
「僕自身、国内組とか海外組とか分けるのは好きじゃないですけど、海外組の方が球際をより意識してプレーしているというのは、練習を通して感じました。守田にしても『この数カ月でこんなに変わるんだね』とスタッフとも話しましたけど、いい刺激をもらいました。自分自身もそこは負けられないポイント。Jリーグで普段やっているプレーがそのままつながるので、日頃からしっかりやらないといけない」とデュエルの優位性を前面に押し出そうという思いは強い。
それに加えて、武器である得点力を示すことができれば、打倒・川崎の旗振り役になれるはず。前回対戦ではそういうチャンスも皆無に等しかっただけに、次は積極的に前へ出てシュートに持ち込んでいくべきだろう。その機会を虎視眈々と伺うことも大きな仕事になってくる。
「日本を代表するボランチになるためには、パーソナリティの強さも必要。それは声掛けも立ち振る舞いもそうですし、ピッチでの立ち姿やプレーの選択や判断、あらゆるものに滲み出るんだなと感じています」と稲垣は語ったが、そういうオーラのようなものも大一番で示したい部分だ。
あらゆる意味で持てるすべてを出し切らなければ、絶対王者を撃破するのは難しい。だからこそ、稲垣には高い領域を超えてほしい。中盤を力強く支えるキーマンの一挙手一投足が、天王山の成否を左右すると言っても過言ではない。
文=元川悦子
「絶対王者にどこが歯止めをかけるのか」というのは、全19チームの命題。その一番手と目された名古屋グランパスだが、ご存じの通り、4月29日のホームゲームでは0−4の完敗を喫した。
左サイドバック(SB)の吉田豊が「川崎はいつも以上にやるという感覚で臨んできたのに、僕らはいつも以下になってしまった。試合が始まった時点で勝負がついていたのかなという気がする」と述懐した通り、開始3分の旗手怜央のゴールからすべての歯車が狂ってしまった。
しかしながら、彼らには4日のアウェイゲームで一矢報いるチャンスがある。マッシモ・フィッカデンディ監督がコロナ陽性で不在という苦境は続くものの、チーム全体の闘争心と一体感は高まる一方だ。
「あんな負け方をして悔しさとかやり返してやろうという気持ちがないわけではないですし、『次も厳しい』みたいなメンタルの選手がいたらプロ失格。改めて『こういう逆境で何ができるか』というのが試されている時だと思います」と中盤の要・稲垣祥も目をギラつかせた。このまま2連敗を喫したら、2021年J1の火が消えるかもしれない重要な一戦をどう戦うのか……。まさに名古屋の真価が問われると言っていい。
彼らが今、思い出すべきなのは、本拠地・豊田スタジアムで川崎を1−0で振り切った昨年8月23日の勝ち試合だろう。名古屋は高度に意思統一された守備組織を形成。ボールを支配し、流動的にポジションを変えながらフィニッシュに持ち込んでくる相手を跳ね返し続け、前半終了間際にエース・金崎夢生がマテウスの左クロスにヘッドで合わせ先制。虎の子の1点をガッチリ守り切ったという名勝負だ。「川崎に攻めさせ、疲れさせて、スキを突く」という名古屋らしい試合運びを取り戻すことができれば、等々力競技場でのリベンジは不可能ではないはずだ。
「普通に考えて、グランパスが勝つんだったら、ああいう(昨年8月のような)ゲームというのは、みなさんもイメージする通りだと思います。あの時は戦術的なディテールや詰め方がしっかりできていたからこそ、最後の際のところで守り切れたり、半歩相手に寄せられた。守備時も攻撃時も立ち位置含めてしっかり整理したうえで、気持ちのこもったプレーを出せれば、同じような試合展開や結果にできる」と生き証人である稲垣は語気を強めていた。
川崎に主導権を握られ、空いたスペースに次々と飛び込まれても、必ずマークがいる状態を維持して相手を焦らすというのは、中盤の要である稲垣の大きな仕事に他ならない。それを遂行しきれなかったから、4月29日のゲームでは前半のうちに3失点を食らってしまった。同じ轍を踏んだら、川崎を止めることも、J1タイトルを手にすることもできない。次戦の重要性をひしひしと感じながら、彼はピッチに立つつもりだ。
この一戦でのパフォーマンスが自身のキャリアにつながる可能性も皆無とは言えない。というのも、川崎には田中碧、脇坂泰斗、三笘薫、山根視来といった日本代表候補がズラリと並んでいるからだ。
3月の2022年カタールワールドカップ(W杯)アジア2次予選・モンゴル戦で初キャップを飾ると同時に、いきなり2発をお見舞いした稲垣だが、まだ代表定着を果たしたとは言い切れない状況にいる。
ドイツ・ブンデスリーガ1部デュエル王の遠藤航、2018年ロシアW杯16強戦士の柴崎岳、欧州移籍で大化けした守田英正らがひしめくボランチ激戦区に29歳の国内組の人間が割って入ろうと思うなら、Jの舞台で圧倒的な存在感とインパクトを残し続けるしかない。
それを本人も痛感しているに違いない。
「僕自身、国内組とか海外組とか分けるのは好きじゃないですけど、海外組の方が球際をより意識してプレーしているというのは、練習を通して感じました。守田にしても『この数カ月でこんなに変わるんだね』とスタッフとも話しましたけど、いい刺激をもらいました。自分自身もそこは負けられないポイント。Jリーグで普段やっているプレーがそのままつながるので、日頃からしっかりやらないといけない」とデュエルの優位性を前面に押し出そうという思いは強い。
それに加えて、武器である得点力を示すことができれば、打倒・川崎の旗振り役になれるはず。前回対戦ではそういうチャンスも皆無に等しかっただけに、次は積極的に前へ出てシュートに持ち込んでいくべきだろう。その機会を虎視眈々と伺うことも大きな仕事になってくる。
「日本を代表するボランチになるためには、パーソナリティの強さも必要。それは声掛けも立ち振る舞いもそうですし、ピッチでの立ち姿やプレーの選択や判断、あらゆるものに滲み出るんだなと感じています」と稲垣は語ったが、そういうオーラのようなものも大一番で示したい部分だ。
あらゆる意味で持てるすべてを出し切らなければ、絶対王者を撃破するのは難しい。だからこそ、稲垣には高い領域を超えてほしい。中盤を力強く支えるキーマンの一挙手一投足が、天王山の成否を左右すると言っても過言ではない。
文=元川悦子
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