ARTA2台に痛恨のミス。鈴木亜久里監督「ドライバーに可哀想なことをした」ペナルティとガス欠の背景
スーパーGT第2戦富士スピードウェイのGT500クラスは雨で大波乱となった開幕戦とは打って変わって、ドライコンディションの中、終始クリーンなレース展開となった。しかし、その中でもピットでのミス、そして終盤にガス欠と、2台のARTA MUGEN NSX-GTがアクシデントに見舞われる結果となってしまった。レース後、鈴木亜久里監督をはじめ、ARTAのチーム関係者たちに状況を聞いた。
3番手スタートから2周目にはWedsSport ADVAN GR Supraをダンロップコーナーでかわして2番手に上がった16号車ARTA MUGEN NSX-GT。福住仁嶺がスタートを務め、トップの100号車STANLEY NSX-GTの背後にピタリと付き、序盤から優勝争いを展開していた。
1秒差以内のバトルが続いた2台の順位はそのまま、32周目に同時ピットインを迎える。ここで16号車にアクシデントが発生してしまった。タイヤ交換で一輪、ナットが噛み合わず、スペアが必要になった。
その際、スペアを探す間、車軸にタイヤを入れたまま先に給油を行ない、その後にスペアナットでタイヤを装着したが、それがスーパーGTスポーティングレギュレーション第28条の燃料に関する第5項「燃料補給中は、エンジンを停止し、4輪すべてが装着状態でなければならない。」に抵触してしまった。タイヤが車軸にはまっていても、ナットが締まっていない状態は装着状態とは認識されないのだ。
その違反により、16号車はドライブスルーペナルティを受けることになり、実質、戦線離脱。10位でフィニッシュしたものの、優勝が狙える展開だっただけに悔しさが残った。レース後、第3スティントを担当した大津弘樹が話す。
「(福住)仁嶺のスティントは本当にいいレースをしていたと思いますし、レース展開を見ても分かるようにペースがいいのはわかっていたので、ピットロスがなかったらと思うと十分に表彰台を争えていたと思います。僕のスティントも、陽が陰って気温が下がることを予想してソフトタイヤを選択したのですけど、フィーリングがそこまでよくはなかったのですがペースは良かった。僕もタイヤメーカーが変わって、ここまでのロングランは初めてだったのでペースの配分など未知数な部分があったのですが、プラスに考えると、いい経験値を積めたと思うので、次につながるレースになったかなと思います」
「(ペナルティの瞬間は)がっかりはしました。あの位置で走れていたからこそ、もったいなかったですし、でも、自分はそんなにネガティブにはならずに走れましたし、気持ちは『次に』とも考えています」と前を向く大津。16号車にとっては開幕戦での赤旗ラインの無視によるペナルティに続き、2戦連続で厳しい内容になってしまった。
また、同じチームの8号車ARTA MUGEN NSX-GTも、3位走行中のラスト2周でまさかのガス欠。ステアリングを握っていた大湯都史樹が急きょピットインして給油することになり、11位フィニッシュとなってしまった。大湯が振り返る。
「レース中もリフト&コーストとかいろいろやりつつ、ある程度のペースになるように走っていました。ペースを落とせば落とすほど、ピックアップ(タイヤカスが取れずに表面についてペースダウンしてしまう現象)も多くなってしまう。ある程度のスピードがないとピックアップが取れないので、そういうバランスをとりながらなんとか耐えて、なんとか抑えていましたけど、最終的にガス欠してしまいました」
「1周前(98周目)に『マズい』となったのですけど、もう行くしかない。セクター3の登りで何回かキューンと止まりかけて、あのままもう1周行っていたらコカ・コーラコーナーまではいけていなかったと思います。なんとかそんな中でも抑えられていたので、僕らしいレースはできたのかなと思いますし、やり切ったのですけど、それがまたリザルトに結び付かなかったですね」と、大湯。
8号車の担当エンジニア、一瀬俊浩エンジニアにガス欠の状況を聞く。
「保つと思っていたので、燃費走行の指示はしていませんでした。ピットでの給油時間は予定どおりだったのですが、どうして足りなかったのか。これから調べないといけません。あの1周前(98周目)にアラームがついたのですけど、その段階でピットに入れるわけにはいかないし、そこから燃費をセーブしても1周分で2周を走れるわけではないので、ドライバーにはそのまま行ってくれと。アラームが出るタイミングも走行している時のGで変わったり誤差があったりするのですけど、次の周でガス欠症状が出てしまいました」
8号車は2戦連続表彰台が確実な状況だっただけに、手痛いミスとなってしまった。
2台に揃って起きてしまったアクシデント。ARTAの鈴木亜久里監督もレース後、それぞれのドライバー、エンジニアに積極的にコミュニケーションを取る姿が見られた。
「ドライバーに可哀想なことをしたね。16号車は前回はピット側のミスでレースをダメにしてしまって、今回は2台ともだからね。クルマのポテンシャル自体は高くなっているので、あとは作戦とピット作業。ドライバーたちはよく頑張ったし、クルマの手応えは良くなっているので、まだまだこれから行けると思っている」と亜久里監督。
今年からARTAはGT500での2台体制となり、チーム体制も変わった。やはり、GT500の2台体制は簡単ではないということか。
「2台体制になったけど、それとミスは別だからね」と亜久里監督。「エンジニアには作戦とピット作業のことをよく見直してもらって、クルマは戦えるポテンシャルにある。次頑張ります」と、アグリ監督は言葉少なく今回のレースを締めた。
2台に速さがありながら、なかなか揃っての好結果が訪れないARTA。次の第3戦鈴鹿でどのように巻き返しを図るのか。
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