DTM:アウディの撤退発表にBMW開発担当副社長が強い遺憾を語る「スポーツマンシップに欠ける」
4月27日、DTMドイツ・ツーリングカー選手権に参戦するアウディが、2020年いっぱいでのDTM参戦を終了すると発表したが、この一件に関してアウディとともにDTMに参戦していた、BMWの開発担当副社長のクラウス・フレーリッヒが、ミュンヘンの地元大手紙『ジュードイチェ・ツァイトゥング(南ドイツ新聞)』のインタビューにこたえ、強い遺憾を示している。
長年メルセデス、アウディ、そしてBMWの3社で争われてきたDTMは、2018年限りでメルセデスが撤退。代わって参入したRモータースポーツのアストンマーティンも1年で活動を終えていたが、そんな矢先に発表されたアウディの活動終了発表は、新型コロナウイルス禍に揺れるヨーロッパのモータースポーツ界でも大きな衝撃となった。
この一件に関して、BMWグループはアウディの発表直後に声明を発表し、事前にBMWに対して話し合いの場がもたれず、発表のごく直前に報されたことに驚きを隠せない様子を伝えていたが、5月3日にジュードイチェ・ツァイトゥングが掲載したフレーリッヒ副社長のインタビューには、より強い調子で怒りが込められている。
フレーリッヒ副社長は、BMWグループ全体の開発責任者を担う立場で、自身も多忙なスケジュールをぬってBMWがワークス参戦するレースには直接足を運び、つねに現場主義である姿勢を貫いてきた人物だ。BMWモータースポーツからの信頼も厚い。
「(アウディの)DTMからの撤退自体を問題にしているのではない。問題はどう撤退するかだ」とフレーリッヒ副社長はインタビューにこたえた。
「あのやり方は異常なうえに、スポーツマンシップに欠ける。あり得ないことだ! 企業としてアウディがどう決断するかは自由だ。しかしDTMでは誠意と公正をもってコミュニケーションをとり、スポーツマンシップに則るべきである」と痛烈にアウディを非難した。
フレーリッヒ副社長がアウディに怒りをあらわにするのも当然かもしれない。なぜならば、4月1日にアウディの代表取締役社長に就任したマルクス・デュスマンは長年BMWに勤務した人物で、BMWの社内事情も熟知し、フレーリッヒ副社長とは開発畑をともに歩んだ旧知の仲だ。
デュスマンはメルセデスベンツで量販車のエンジン開発を経て、2005年にメルセデスF1の開発に携わった後、2007年にはBMWへ転職し、BMWザウバーF1の開発責任者を務め、F1撤退後はBMWの量販車部門のドライビングダイナミクスやドライブアシストの開発責任者を経て取締役まで上り詰めた人物だ。モータースポーツ界も熟知した人物なだけに、フレーリッヒ副社長は“元同僚”の決断に、怒りを露わにしたのかもしれない。
現段階では、2021年からDTMに残るのはBMWのみ。シリーズは終焉の危機に立たされている。フレーリッヒ副社長は「DTMは依然として高い魅力と、将来への展望をもっていると信じている」と語るが、「BMWだけでの開催は不可能であり、(DTMを運営するITRの)ゲルハルト・ベルガーと話しあいを続けている。今後どうするのか、少ないチャンスをどう活かせるのか、様子をうかがいたい」とした。
また、DTMはしばしば『マーケティングレース』とも称されるとおり、2012年にBMWが復帰してから2018年までは、各メーカーの完全ワークス参戦体制で開催されてきた。サーキットでのイベントや展示は各社のマーケティング戦略に基づき、パドックには最新の市販車がモーターショーのように数多く展示される。
さらに各メーカーはF1にもひけをとらない巨大なホスピタリティを用意し、スポンサー企業、サプライヤー関係者やVIPの交流の場としても提供されており、レースを通じたビジネス社交場としても盛況だった。それだけにフレーリッヒ副社長は「モータースポーツ活動はコーポ—レート戦略に従っている。プロダクト戦略に適し、内燃機関と電気の両方を重視するフォーマットを探求している」とBMWのワークス活動が量販車の販売戦略に伴ったものだと強調した。
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