【J1リーグ2023】湘南が直すべきは攻撃配置。柏戦の真の敗因を考察
2023明治安田生命J1リーグ第11節の計8試合が5月3日に行われ、湘南ベルマーレは本拠地レモンガススタジアム平塚で柏レイソルと対戦。最終スコア1-2で敗れた。
直近のリーグ戦5試合勝ちなしと、不振に喘いでいる現14位の湘南。1失点目のシーンで不揃いだった最終ラインと、2失点目の場面で相手FW細谷真大とのマッチアップに敗れたDF大岩一貴がクローズアップされがちだが、同クラブの敗因はこれだけではないだろう。ここでは柏戦を振り返るとともに、湘南の真の敗因を考察する。
湘南vs柏:試合展開
互いに相手のハイプレスを警戒したのか、キックオフ直後からロングボールを蹴り合う展開に。
前半28分、柏のDF古賀太陽のロングパスが味方MFマテウス・サヴィオに繋がる。不揃いだった湘南の最終ラインの背後を突いたブラジル人MFが、先制ゴールを挙げた。
湘南は前半アディショナルタイムにDF杉岡大暉がコーナーキックから同点ゴールを挙げたものの、試合の主導権を引き寄せるには至らず。
迎えた後半10分、柏のDF三丸拡の自陣でのクリアボールが、同クラブFW細谷に渡る。湘南のDF大岩とのコンタクトプレーを制した細谷がペナルティエリアへ侵入し、勝ち越しゴールをマークした。これが決勝点となり、湘南は黒星を喫している。
停滞した湘南のビルドアップ
湘南は自陣後方からのパス回しで柏のハイプレスを掻い潜ろうとしたものの、特に前半は最前線へのアバウトなロングパスを連発。柏にやすやすとボールを渡してしまう場面が多かった。
湘南のビルドアップ停滞の原因は、基本布陣[3-1-4-2]の両ウイングバック(畑大雅と石原広教の両DF)が自陣後方のタッチライン際でパスを受けようとしたこと。一見このゾーンではフリーでボールを受けやすいように思えるが、実は相手のプレッシングの標的となりやすい。この試合でも、自陣後方の大外のレーンでボールを受けようとした畑と石原が、基本布陣[4-4-2]の柏のサイドハーフ(小屋松知哉と戸嶋祥郎の両MF)やサイドバック(三丸と片山瑛一の両DF)に狙われるケースが多かった。
前半3分の湘南のゴールキックに着目すると、自陣後方のタッチライン際でボールを受けた右ウイングバックの石原が三丸のプレスを受け、苦し紛れにロングパスを放つ。このボールを柏の選手に回収されている。この場面を皮切りに、湘南の攻め手が後方からのロングパスに偏っていった。
また、同じく自陣後方からのパス回しの際に、センターバックの杉岡とDF岡本拓也がサイドに開きすぎてしまう場面もしばしば。センターバックとウイングバックが大外のレーンで共存してしまい、柏のサイドハーフやサイドバックに簡単にパスコースを塞がれてしまった。
「パスの出しどころが無かった」
停滞した自軍のビルドアップについて言及したのは、湘南のMF茨田陽生とDF岡本。柏戦終了後に率直な感想を口にしている(湘南ベルマーレの公式ホームページより引用。一部加筆・省略・補正)。
茨田:僕自身も前節久々に試合に入ってみて、前回よりも今日のほうが後ろでボールを持っている時に(パスの)出しどころが無かったり、相手に追い込まれているような感じになってしまったなと。ボールを持っている時になかなか自分たちの時間をうまく使えなかったなというのは、試合に出て一緒にやってみて感じました。自分たちがボールを持っている時にどこにポジションを取ったほうがいいかだったり、どこに出したらいいのか、どこを目指してやっているのかというところで少し困惑はあったのかなと思います。
岡本:後ろから繋いで引っかかっているので、相手が嫌なことをできたら良かったんですけど、後ろからボールを繋ぐことにこだわり過ぎてしまった部分もあるかもしれません。ボールは持てているけど、前進できていないという感じはしていて、相手のゴール前までうまくもっていけていないという感じでした。もう少し幅を使いながらやれたら良かったのかなと思います。
相手が前からハメにきている(ハイプレスを仕掛けてくる)なかでどういうプレーの選択をしないといけないのかは、チーム全体で考えないといけないかなと思います。最近はアンカーのところのパスコースを消しにくるチームが多いなかで、そこを消された時のボールの動かし方を改善していきたいです。そこを消されることでボールを外で回させられているのもあると思うので。シンプルにもう少し速くボールを動かしても良かったのかなと思います。でも悪いところばかりではなかったと思いますし、修正しながら次に向かいたいです。
幅を使う意識が裏目に
湘南が改善すべきは、ビルドアップ時の不合理な配置。両ウイングバックは自陣後方へ下がらず、相手のサイドハーフとサイドバックの間やハーフウェイライン付近にポジションをとるべきだろう。この際に3バックの両脇の選手が、サイドに開きすぎないことが大前提。相手のプレッシングを浴びやすい3センターバックのサポートは、[3-1-4-2]の中盤の底の選手(アンカー)やインサイドハーフに任せるべきだ。
不合理な配置でのパス回しによってボールを失い、相手に攻撃機会を与え続けたことが、今節の湘南の真の敗因。岡本が言及したピッチを幅広く使おうとする意識が、ウイングバックによる自陣後方のタッチライン際でのパスレシーブや、3バックの両脇の選手の大外のレーンへの移動という、効果的ではない配置に繋がってしまったのかもしれない。
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