【アイルトン・セナの思い出】PART12:ギヤボックストラブル発生も、執念で勝ち取った母国ブラジルGPの初優勝
5月1日で、レース界の伝説アイルトン・セナが死去してから25年になる。1994年のサンマリノGPの週末は酷いものだった。ローランド・ラッツェンバーガーが予選中に事故で死亡し、翌日には決勝レース中に、セナが単独クラッシュで命を失ったのだ。
元マクラーレンの会長兼CEOのロン・デニスは、1988年から1993年にかけてマクラーレンに在籍し、3度の世界タイトルをチームにもたらしたセナについて、多くの思い出を持っている。
これは本シリーズにおける、セナについてのデニスの12回目の談話だ。
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セナは当然ながら、母国ブラジルGPで優勝することに熱烈な願望を抱いていた。彼は1984年にF1デビューしたが、最終的にブラジルで勝利を飾るには1991年まで待たなければならなかった。
それは劇的な勝利となった。レース中、セナが駆るマクラーレンのマシンはギヤボックスに問題があり、いくつものギヤを失っていたのだ。それにも関わらずセナはなんとかマシンをかばいながら、ウイリアムズのドライバーであるリカルド・パトレーゼに2.9秒差で打ち勝ったのだ。
フィニッシュラインを超えたセナは、母国優勝の夢を達成したことで歓喜のあまり絶叫した。だがマシンをコントロールしようと途方もない力を振り絞ったため、彼の筋肉は熱を持ってけいれんを起こしていた。マシンを停止させた後、セナはほとんど自力で動くことができなかった。彼は極度の疲労のために身体をマシンから引き出されなければならず、メディカルカーで表彰台に運ばれたのだ。
デニスはセナがブラジルGPで初勝利した日のことを、以下のように記憶している。
「(1991年のブラジルGPは)それまでの彼のベストレースのひとつだ」とデニスは語った。
「レースが終わりに近づくにつれて雨が降り始めた中、ギヤをひとつ、またひとつと失っていった。そんな状況で彼はトップのままレースをフィニッシュしたのだ。それは超人的な仕事だった。無線で多くのコミュニケーションがとられ、彼はマシンを走行させるベストな方法について助言を求めてきた」
「彼は矢継ぎ早に問題に対する質問をしてきた。これに対処する最善の方法は?あれに対処する最善の方法は?とね。だから彼とともにレースの一部になっているように感じた。彼はそのレースで強い精神的緊張を感じていた」
「彼は常にマシンと一体となり、マシンの一挙手一投足を感じたいと思うのが常だった。だから彼はよくマシンのシートベルトを耐えられる限りきつく締めていた。あのレースでは、シートベルトが彼の肩の上部への血行を止めてしまっていた。だからマシンに苦戦するだけでなく、身体の状態にも苦しんでいたのだ。あのレースでは、彼はやっとのことでトロフィーを持ち上げていたよ」
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