若き日本代表の“ラストピース”…中村敬斗が取り戻した「本来の感覚」
サッカーキング2019年5月14日(火)19時13分
[写真]=Jリーグ
「(U-20ワールドカップの代表メンバー入りは)ガッツリ諦めずに狙ってました。久保(建英=FC東京)と安部(裕葵=鹿島アントラーズ)選手が上に行くってことで、ポジション的に2つ空く可能性があった。そこをスレスレ狙ってやろうというのは常に考えてました。それでルヴァンカップで結果を残したから、今ここにいると思いますね」
13日の流通経済大学との練習試合、U-20日本代表の左MFで先発出場した19歳のアタッカー・中村敬斗(ガンバ大阪)は「ラストピース」という自らの立ち位置を自覚していた。同時に、チームに貢献することを第一に考えながら、攻撃の迫力を出そうとしていた。
序盤からタッチライン際でアップダウンを繰り返し、時には左サイドバックの東俊希(サンフレッチェ広島)の後ろまで下がってカバーリングに入った。守備意識の高さは以前とは比べ物にならない。前半終了間際には、右サイドを駆け上がった喜田陽(福岡)のクロスにファーから猛然と飛び込んで右足を一閃。強烈なシュートをゴールネットに突き刺した。
最終的にU-20代表は5-0で勝利したが、フル出場した中村の一撃がチーム全体の活力になったのは明らかだった。今月23日おに開幕するU-20ワールドカップへ向けて、弾みをつけることに成功した。
「『逆サイトからクロスに入ることが大事』と言われていて、それを今が課題なんですけど、今日はその形からゴールを決めることができた。練習したところの形が出たかなと思います」と嬉しそうに語った得点は、影山雅永監督にとっても明るい材料になったはず。というのも、上述の通り久保建英と安部裕葵が招集外となった上に、滝裕太(清水エスパルス)がケガで離脱。日本はサイドアタッカーの人材が手薄になっている状態だからだ。
斉藤光毅(横浜FC)や郷家友太(ヴィッセル神戸)らが名を連ねたが、高さと力強さ、傑出した得点感覚を誇る中村起用のメドが立ったことは大きい。後半には右サイドでプレーし、「左右はそんなに大差ない」と本人も言い切るほどの手応えをつかんだだけに、本大会でのブレイクの期待はいやが上にも高まってくる。
順風満帆ではなかったプロキャリアのスタート
2017年のU-17ワールドカップでは4得点を挙げ、森山佳郎監督率いるチームのエースに君臨。2018年には飛び級でガンバに入団。香川真司(ベシクタシュ)や柿谷曜一朗(セレッソ大阪)の才能を見抜いたレヴィ―・クルピ監督に高く評価され、名古屋グランパスとの開幕戦でJ1デビューも飾った。さらに、ルヴァン杯ではプロ初ゴールを記録。弱冠17歳の少年は順調なキャリアを歩み始めたかに思われた。
ところが、宮本恒靖監督が就任すると状況は一変した。
「得点感覚以外のところはプロの平均以下。走れないし、戦えないし、球際も行かないし、オフ・ザ・ボールの動きも足りない」と指揮官から厳しく指摘され、ベンチメンバーからも外された。そこからは自分を見つめ直す時間を強いられ、守備面やハードワークなどの課題と向き合った。その成果が出て、倉田秋が出場停止になった昨年11月24日のV・ファーレン長崎戦で初のJ1フル出場を果たした。同試合では念願のゴールも決め、「プロ2年目の2019年はJ1でレギュラー争いができる」と中村自身も手応えをつかんでいたという。
しかし、プロの世界は甘くなかった。今季序盤もトップチームでプレーできず、U-23での活動がメインになった。そんな彼を支えたのが、森下仁志監督(ガンバ大阪U-23)だった。
「森下監督には本当に鍛えてもらったし、メチャメチャいい恩師だと思ってます。守備とかハードワークをやっていくと、自分の一番大事な武器を忘れてしまうんですよね。『それを発揮しなきゃいけない』と言われて、実際に出せたのが、ルヴァン杯(4月24日のジュビロ磐田戦、5月8日の清水戦)の2つのゴール。左から切れ込んで決めるっていう形が作れたのは、“本来の感覚”が戻ってきてる証拠だと思います」と中村は目を輝かせた。
“一番大事な武器”は流経大との練習試合で随所に発揮された。持ち味の推進力からゴールという結果も手にし、いよいよ世界との戦いに挑もうとしている。
U-17W杯で対戦したイングランド代表たちは…
同世代たちは大舞台で活躍している。U-17W杯・ラウンド16でPK負けを喫したイングランド代表には、今シーズンのブンデスリーガで33試合出場11ゴールを記録したジェイドン・サンチョ(ドルトムント)やプレミアリーグを制したフィル・フォーデン(マンチェスター・C)らが名を連ねていた。彼らとの距離を詰めるためにも、ここから一気に成長スピードを上げていく必要があるのだ。
振り返ってみれば、遠藤保仁は1999年ナイジェリアで開催されたワールドユース(現・U-20W杯)で準優勝の立役者となり、今野泰幸もキャプテンとして2003年のUAE大会でベスト8へとチームを導いた。2人とも若き日に世界で結果を残し、Jリーグや日本代表でも活躍してきた。偉大な先輩たちの後を追うべく、中村にもポーランドでの大ブレイクが期待される。「影山ジャパンのエース」へと飛躍するべく、天性のゴールセンスを遺憾なく発揮してほしいものだ。
文=元川悦子
13日の流通経済大学との練習試合、U-20日本代表の左MFで先発出場した19歳のアタッカー・中村敬斗(ガンバ大阪)は「ラストピース」という自らの立ち位置を自覚していた。同時に、チームに貢献することを第一に考えながら、攻撃の迫力を出そうとしていた。
序盤からタッチライン際でアップダウンを繰り返し、時には左サイドバックの東俊希(サンフレッチェ広島)の後ろまで下がってカバーリングに入った。守備意識の高さは以前とは比べ物にならない。前半終了間際には、右サイドを駆け上がった喜田陽(福岡)のクロスにファーから猛然と飛び込んで右足を一閃。強烈なシュートをゴールネットに突き刺した。
最終的にU-20代表は5-0で勝利したが、フル出場した中村の一撃がチーム全体の活力になったのは明らかだった。今月23日おに開幕するU-20ワールドカップへ向けて、弾みをつけることに成功した。
「『逆サイトからクロスに入ることが大事』と言われていて、それを今が課題なんですけど、今日はその形からゴールを決めることができた。練習したところの形が出たかなと思います」と嬉しそうに語った得点は、影山雅永監督にとっても明るい材料になったはず。というのも、上述の通り久保建英と安部裕葵が招集外となった上に、滝裕太(清水エスパルス)がケガで離脱。日本はサイドアタッカーの人材が手薄になっている状態だからだ。
斉藤光毅(横浜FC)や郷家友太(ヴィッセル神戸)らが名を連ねたが、高さと力強さ、傑出した得点感覚を誇る中村起用のメドが立ったことは大きい。後半には右サイドでプレーし、「左右はそんなに大差ない」と本人も言い切るほどの手応えをつかんだだけに、本大会でのブレイクの期待はいやが上にも高まってくる。
順風満帆ではなかったプロキャリアのスタート
2017年のU-17ワールドカップでは4得点を挙げ、森山佳郎監督率いるチームのエースに君臨。2018年には飛び級でガンバに入団。香川真司(ベシクタシュ)や柿谷曜一朗(セレッソ大阪)の才能を見抜いたレヴィ―・クルピ監督に高く評価され、名古屋グランパスとの開幕戦でJ1デビューも飾った。さらに、ルヴァン杯ではプロ初ゴールを記録。弱冠17歳の少年は順調なキャリアを歩み始めたかに思われた。
ところが、宮本恒靖監督が就任すると状況は一変した。
「得点感覚以外のところはプロの平均以下。走れないし、戦えないし、球際も行かないし、オフ・ザ・ボールの動きも足りない」と指揮官から厳しく指摘され、ベンチメンバーからも外された。そこからは自分を見つめ直す時間を強いられ、守備面やハードワークなどの課題と向き合った。その成果が出て、倉田秋が出場停止になった昨年11月24日のV・ファーレン長崎戦で初のJ1フル出場を果たした。同試合では念願のゴールも決め、「プロ2年目の2019年はJ1でレギュラー争いができる」と中村自身も手応えをつかんでいたという。
しかし、プロの世界は甘くなかった。今季序盤もトップチームでプレーできず、U-23での活動がメインになった。そんな彼を支えたのが、森下仁志監督(ガンバ大阪U-23)だった。
「森下監督には本当に鍛えてもらったし、メチャメチャいい恩師だと思ってます。守備とかハードワークをやっていくと、自分の一番大事な武器を忘れてしまうんですよね。『それを発揮しなきゃいけない』と言われて、実際に出せたのが、ルヴァン杯(4月24日のジュビロ磐田戦、5月8日の清水戦)の2つのゴール。左から切れ込んで決めるっていう形が作れたのは、“本来の感覚”が戻ってきてる証拠だと思います」と中村は目を輝かせた。
“一番大事な武器”は流経大との練習試合で随所に発揮された。持ち味の推進力からゴールという結果も手にし、いよいよ世界との戦いに挑もうとしている。
U-17W杯で対戦したイングランド代表たちは…
同世代たちは大舞台で活躍している。U-17W杯・ラウンド16でPK負けを喫したイングランド代表には、今シーズンのブンデスリーガで33試合出場11ゴールを記録したジェイドン・サンチョ(ドルトムント)やプレミアリーグを制したフィル・フォーデン(マンチェスター・C)らが名を連ねていた。彼らとの距離を詰めるためにも、ここから一気に成長スピードを上げていく必要があるのだ。
振り返ってみれば、遠藤保仁は1999年ナイジェリアで開催されたワールドユース(現・U-20W杯)で準優勝の立役者となり、今野泰幸もキャプテンとして2003年のUAE大会でベスト8へとチームを導いた。2人とも若き日に世界で結果を残し、Jリーグや日本代表でも活躍してきた。偉大な先輩たちの後を追うべく、中村にもポーランドでの大ブレイクが期待される。「影山ジャパンのエース」へと飛躍するべく、天性のゴールセンスを遺憾なく発揮してほしいものだ。
文=元川悦子
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