【コラム】新布陣で存在感を増す原口元気…“ポリバレントの申し子”が西野Jのキーマンに
サッカーキング2018年5月28日(月)17時0分
ガーナ戦に向けてトレーニングを行う原口元気 [写真]=Getty Images
2018 FIFAワールドカップ ロシア最終メンバー絞り込みの行方を大きく左右する30日のガーナ戦(日産)が間近に迫ってきた。25日には今回の日本代表メンバー26人全員が揃い、西野朗新監督も「3-4-3」の新布陣構築に本腰を入れ始めた。26日はピッチの6分の1やハーフコートを使った実戦形式を行い、27日にもピッチサイズを広げたゲーム形式も実施。原口元気(デュッセルドルフ)は右アウトサイドと右シャドウでプレーしたほか、「4-2-3-1」システムを採ったサブ組に入った時には2列目左に陣取るなど、マルチな能力を見せつけた。
「MFの選手でも、前線で2トップ、3トップ、1トップとポジションも変わってくる。バランス的にいろいろありますが、対応力が間違いなく求められる。ポリバレント(ユーティリティ)な能力を持った選手がこのリストの中にもいる」と指揮官は18日のメンバー発表会見でも柔軟に役割を変えられる選手の重要性を強調していたが、原口はその象徴と言ってもいい存在。ガーナ戦はもちろんのこと、3週間後のロシアW杯本大会でも多彩な役割を担うはずで、西野ジャパンのキーマンとなる可能性も高まってきたようだ。
「『変化』に対してストレスを感じないというのは、思ったより若い頃からあった。ベルリンに行って単に攻撃に特化する選手じゃなくなったこともそうだけど、その前から変化することに対して抵抗がなかった。若い頃からその場その場で監督に求められていることをちゃんと表現しようとしていたし、それは過去の記事を読み直して分かったこと。たぶんこれからも『こうなりたい』と考えるより、その場その場にあった自分になっていくのかなと。そういう部分は自分の強さかもしれない」と原口は合宿合流2日目にしみじみと語っていたが、カメレオンのように変幻自在に自分の顔を変えられるのは、間違いなく長所に他ならない。
ヘルタ・ベルリンのパル・ダルダイ監督は2列目の全ポジションに加えて1トップまでやらせていたし、ヴァイッド・ハリルホジッチ前日本代表監督に至ってはボランチや右サイドバックでも起用した。高度な適応力を備えているからこそ、多くの指揮官がそういう起用法を試みてきたのだ。
西野監督が導入しようとしている「3-4-3」でも、原口は右ワイドでもシャドウでも、場合によっては1トップでもプレー可能だ。ダイナミックなアップダウンを厭わない献身性と頭抜けた走力、守備力の高さを兼ね備えているから右ワイドは適したポジションだろうし、シャドウや1トップになればより攻撃的な特徴を前面に押し出せる。ドイツに渡ってからの4年間で彼は合計5ゴールしか奪えていないが、便利屋状態で使われてきたことが数字を伸ばせなかった大きな要因だ。ゴールに突き進む仕事に専念させれば、原口はもっと得点を量産できるはず。それはロシアW杯最終予選序盤の4試合連続ゴールで実証済み。得点力不足にあえぐチームにとってこの男の存在はやはり重要だ。
27日のゲーム形式の1本目では、クラブの同僚・宇佐美貴史(デュッセルドルフ)と左右のシャドウを形成していたが、推進力ある2人が並ぶことで日本の攻撃が大きく活性化しそうな雰囲気が強く漂う。そこは見逃せない点ではないか。
「(元気君が)横にいることに関しては違和感は全くないですし、生かし方とか生かされ方はチームで一番分かってるつもりでいる。元気君とは近めの距離というよりは、自分がまずしっかりボールを受けて元気君の走力を生かすとか、逆に元気君がボールを持って仕掛けだしたら1人2人はがしてくれるだろうっていうポジショニングの取り方はやりやすい。そこを日本の武器にしたいですね」と宇佐美も意欲的に語るほど、2人の信頼関係は厚い。
デュッセルドルフのドイツ・ブンデスリーガ2部優勝の原動力となった「ジャパンGT(元気と貴史の頭文字)」の成熟した新生ジャパンにも生かせれば、西野監督としても手っ取り早い。格上との試合が続くロシア本番では、2枚のボランチから後ろはどうしても守備に忙殺されがちになると見られるため、トップと2シャドウには個の打開力と決定力を備えたアタッカーを配置するしかない。やはり彼らを有効活用することが成功への早道だろう。
「プレッシャーが強い方が僕はやりやすい。自分自身の感覚が冴えればいいので。それが自分にとっては一番大事。うまくそういう状態に持っていければいいですね」と原口は早くもW杯本番に照準を合わせている。長年夢に見た大舞台で何らかの爪痕を残すためにも、新体制の第一歩となるガーナ戦はやはり重要だ。そこで原口がどういう使い方をされるか分からないが、右ワイドでもシャドウでもチームの勝利に直結する仕事をすることがやはり肝要。西野ジャパンがロシアでサプライズを起こせるという希望を示すべく、“ポリバレントの申し子”にはがむしゃらにピッチを駆け回ってほしいものだ。
文=元川悦子
「MFの選手でも、前線で2トップ、3トップ、1トップとポジションも変わってくる。バランス的にいろいろありますが、対応力が間違いなく求められる。ポリバレント(ユーティリティ)な能力を持った選手がこのリストの中にもいる」と指揮官は18日のメンバー発表会見でも柔軟に役割を変えられる選手の重要性を強調していたが、原口はその象徴と言ってもいい存在。ガーナ戦はもちろんのこと、3週間後のロシアW杯本大会でも多彩な役割を担うはずで、西野ジャパンのキーマンとなる可能性も高まってきたようだ。
「『変化』に対してストレスを感じないというのは、思ったより若い頃からあった。ベルリンに行って単に攻撃に特化する選手じゃなくなったこともそうだけど、その前から変化することに対して抵抗がなかった。若い頃からその場その場で監督に求められていることをちゃんと表現しようとしていたし、それは過去の記事を読み直して分かったこと。たぶんこれからも『こうなりたい』と考えるより、その場その場にあった自分になっていくのかなと。そういう部分は自分の強さかもしれない」と原口は合宿合流2日目にしみじみと語っていたが、カメレオンのように変幻自在に自分の顔を変えられるのは、間違いなく長所に他ならない。
ヘルタ・ベルリンのパル・ダルダイ監督は2列目の全ポジションに加えて1トップまでやらせていたし、ヴァイッド・ハリルホジッチ前日本代表監督に至ってはボランチや右サイドバックでも起用した。高度な適応力を備えているからこそ、多くの指揮官がそういう起用法を試みてきたのだ。
西野監督が導入しようとしている「3-4-3」でも、原口は右ワイドでもシャドウでも、場合によっては1トップでもプレー可能だ。ダイナミックなアップダウンを厭わない献身性と頭抜けた走力、守備力の高さを兼ね備えているから右ワイドは適したポジションだろうし、シャドウや1トップになればより攻撃的な特徴を前面に押し出せる。ドイツに渡ってからの4年間で彼は合計5ゴールしか奪えていないが、便利屋状態で使われてきたことが数字を伸ばせなかった大きな要因だ。ゴールに突き進む仕事に専念させれば、原口はもっと得点を量産できるはず。それはロシアW杯最終予選序盤の4試合連続ゴールで実証済み。得点力不足にあえぐチームにとってこの男の存在はやはり重要だ。
27日のゲーム形式の1本目では、クラブの同僚・宇佐美貴史(デュッセルドルフ)と左右のシャドウを形成していたが、推進力ある2人が並ぶことで日本の攻撃が大きく活性化しそうな雰囲気が強く漂う。そこは見逃せない点ではないか。
「(元気君が)横にいることに関しては違和感は全くないですし、生かし方とか生かされ方はチームで一番分かってるつもりでいる。元気君とは近めの距離というよりは、自分がまずしっかりボールを受けて元気君の走力を生かすとか、逆に元気君がボールを持って仕掛けだしたら1人2人はがしてくれるだろうっていうポジショニングの取り方はやりやすい。そこを日本の武器にしたいですね」と宇佐美も意欲的に語るほど、2人の信頼関係は厚い。
デュッセルドルフのドイツ・ブンデスリーガ2部優勝の原動力となった「ジャパンGT(元気と貴史の頭文字)」の成熟した新生ジャパンにも生かせれば、西野監督としても手っ取り早い。格上との試合が続くロシア本番では、2枚のボランチから後ろはどうしても守備に忙殺されがちになると見られるため、トップと2シャドウには個の打開力と決定力を備えたアタッカーを配置するしかない。やはり彼らを有効活用することが成功への早道だろう。
「プレッシャーが強い方が僕はやりやすい。自分自身の感覚が冴えればいいので。それが自分にとっては一番大事。うまくそういう状態に持っていければいいですね」と原口は早くもW杯本番に照準を合わせている。長年夢に見た大舞台で何らかの爪痕を残すためにも、新体制の第一歩となるガーナ戦はやはり重要だ。そこで原口がどういう使い方をされるか分からないが、右ワイドでもシャドウでもチームの勝利に直結する仕事をすることがやはり肝要。西野ジャパンがロシアでサプライズを起こせるという希望を示すべく、“ポリバレントの申し子”にはがむしゃらにピッチを駆け回ってほしいものだ。
文=元川悦子
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