井上尚弥との王座戦の実現性は? サウジ後援の大規模興行参戦にこだわったアフマダリエフ陣営の“思惑”
井上への指名挑戦権を有するアフマダリエフ。彼の名は突如として世界で話題となった。(C)Getty Images
突然の指令に事態は急変した。現地時間6月13日にWBAはボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)に対し、同1位のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)と9月25日までに対戦するよう通告。交渉期限を7月14日とし、合意に達しなければ入札とすると公表した。
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この電撃的な決定に百戦錬磨の王者陣営も困惑する。というのも、井上は9月に元IBF世界同級王者のテレンス・ジョン・ドヘニー(アイルランド)との対戦が内定。水面下で進めてきた交渉も大詰めを迎え、正式合意が決定的となっていた。そこに横やりを入れられ、王座剥奪の可能性が浮上したのだ。
もっとも、挑戦権を持つ選手との指令試合は「9か月以内に消化しなければならない」というルールは以前から定められている。そのため、WBAの発表そのものに問題はない。だが、あまりの急な公表は違和感を抱かせる。
いまや「世界最強」と言われるモンスターの動静は“ボクシングの本場”でもつぶさにリポートされている。米専門メディア『Boxing Scene』は「近しい2人の関係者による情報」として、井上が9月の指令試合を辞退する方針であると報道。ドヘニー戦を優先する意向であると伝えた。
両陣営の思惑を分析する同メディアは、本拠地である日本での試合開催を求める井上側に対し、アフマダリエフ側が求めたとされる要望をすっぱ抜いている。
「アフマダリエフのマネージャーを務めるワディム・コルニーロフは、9月にウェンブリー・スタジアムで開催される興行での対決ならば『非常に興味がある』と関心を示していた。しかし、WBAがアフマダリエフと対戦するよう命令を出した数時間後に米国人プロモーターのボブ・アラム氏が提案を拒否。アラム氏が『アフマダリエフは無名のファイターだ』とも批判した今、イノウエが日本での試合を求めているのは明らかだ」
アフマダリエフ陣営が参戦を希望したのは、9月21日に行われるIBF世界ヘビー級暫定王者ダニエル・デュボアと元世界ヘビー3団体統一王者・アンソニー・ジョシュア(ともに英国)によるタイトルマッチがメインカードとなる興行である。
最大収容人数9万人を誇るウェンブリー・スタジアムを舞台とした一大興行は、サウジアラビアの王族で、娯楽庁長官でもあるトゥルキ・アラルシク氏がバックアップ。出場選手に与えられる収入も相当なものになると見込まれ、英興行大手『Matchroom Boxing』のエディ・ハーン氏がプロモートするアフマダリエフがこだわったのも想像に難くない。
とはいえ、ドヘニーとの次戦開催が決定的となった状況での路線変更は容易ではない。報じられた両陣営の思惑を考慮しても、晩秋での激突は完全消滅したと言えそうだ。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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