アッズリーニが15年ぶり欧州制覇へ好発進! 殊勲のキエーザ「素晴らしいイタリアだった」
サッカーキング2019年6月17日(月)18時0分
2ゴールを決めたU-21イタリア代表のキエーザ [写真]=Getty Images
U-21欧州選手権が開幕し、ホスト国のアッズリーニ(イタリア代表のアンダー世代の愛称)は、ボローニャの本拠地レナート・ダッラーラにスペインを迎えた。ボローニャは2003-04シーズンに中田英寿が印象的なプレーを披露した地だ。そして今、日本人サッカーファンにとってはホットな場所でもある。それはベルギーのシント・トロイデンに所属する冨安健洋に、ボローニャ移籍の噂が持ち上がっているからだ。
スタジアムは、試合開始前から異常な盛り上がりを見せる。イタリアは最多5度の優勝を誇るが、2004年から15年も優勝から遠ざかっているため、ファンは優勝に向けてこの一戦が持つ意味を十分に理解しているようだ。
イタリアはベストメンバーを組んできた。12日にユーロ2020予選のボスニア・ヘルツェゴヴィナ戦に出場していたニコロ・バレッラ(カリアリ)が先発に名を連ねるなど、A代表組6人すべてがピッチに立った。日中は32度以上の気温があり、夜になっても25度、さらに湿度が高い中で始まった試合は、後方からボールをつなぐスペインに対し、イタリアが前線からハイプレッシャーをかける。5分までは拮抗した試合展開となるが、次第に細かいパスをつなぐスペインに主導権を握られ、イタリアはボールが取れない時間が続く。
すると、ルイージ・ディ・ビアージョ監督は、「4-3-3」から「4-3-1-2」にシステムを変更。ニコロ・ザニオーロをトップ下に置き、2トップにモイーズ・キーン(ユヴェントス)、フェデリコ・キエーザ(フィオレンティーナ)を配置する。しかし、先制したのはスペインだった。9分、ダニ・セバージョス(レアル・マドリード)へのマークが甘くなり、カットインから見事なゴールを叩き込まれる。GKアレックス・メレトはノーチャンスだった。急造チームということもあり攻撃で単調なプレーが多かったが、この場面では守備も組織的なプレーができず。皮肉にもA代表で主力のバレッラが対応を誤った。
その後も劣勢に立たされたイタリアは元の「4-3-3」に戻し、68パーセントの支配率までボールポゼッションを高めるスペインに対し、ファウルギリギリの守備で対応。それでも、耐えたことで次第にイタリアに流れが傾きかける。31分には主将のロランド・マンドラゴラ(ウディネーゼ)がこの試合初めてのシュートを放つ。その2分後には、キーンが初のCKを獲得。キーンはポストプレーから前を向いて独力で突破するなど、このレベルでも違いを生み出していた。
迎えた35分、イタリアに待望の同点ゴールが生まれる。ザニオーロが起点となり、バレッラが左に絶妙なピンポイントのロングフィードを放つ。パスを受けたキエーザが左サイドから縦に突破を図り、そのままニアにシュートを放ってネットを揺らす。2万6000人の観衆は大歓声。レジスタンスの歌、ベッラ・チャオ(さらば恋人よ)の熱唱がスタジアムに鳴り響き、イタリアのメンバーに歓喜の輪が広がった。GKウナイ・シモン(アスレティック・ビルバオ)がポジショニングを誤った感もあるが、突破力が生きたゴールだった。
その後もイタリアは相手陣内でプレーを進めて攻勢を仕掛けるが、41分、GKとの接触時に顔面を負傷していたザニオーロが痛みを訴え負傷退場となってしまった。代わって、地元ボローニャでプレーするリッカルド・オルソリーニが登場。熱狂的な大声援を受けるが、前半はボールに絡めないまま終わった。
スペインは後半から、ナポリでプレーするファビアン・ルイスを下げてミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)を投入。イタリアは56分、キーンに代わりパトリック・クトローネ(ミラン)がピッチに送り込まれる。すると63分、このクトローネがエリア内でねばり、ゴール前にこぼれたところをキエーザが豪快に叩き込み、イタリアが逆転に成功。A代表でも活躍するキエーザが2点目を決め、試合をひっくり返した。
スペインは選手交代で反撃を試みるが、流れはイタリアだ。80分には試合を決定づける追加点が生まれる。クロスに入り込んだロレンツォ・ペッレグリーニ(ローマ)がペナルティエリア内でソレールに倒されると、一度は流していた主審がVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の助言を受けて映像を確認。そしてイタリアにPKを与えた。これをペッレグリーニが冷静に沈め、イタリアがリードを2点に広げた。その後は危ない場面を作らせず、3-1でグループA最大の難敵に勝利を収めた。
個の力が目立った試合ではあったが、アグレッシブな守備と、前線からの激しいプレスで序盤の劣勢をはねのけ、戦う気持ちを90分間、持ち続けて戦っていたことが最大の勝因だろう。そして、観衆が終始送り続けた大声援も、アッズリーニにとっては大きな力となった。2万6000人以上の観客数を感じさせるような印象的な大声援で、ディ・ビアージョ監督が称賛するほどだった。
2ゴールを挙げた殊勲のキエーザは試合後、「今夜の試合はスペインに対し、素晴らしいイタリアだった。出だしは苦戦を強いられたけど、僕らは強い気持ちを持って、とても良いプレーをして、試合をひっくり反すことができた。絶対に諦めないということを示せたよ。ゴールは家族、恋人、そして僕を支えてくれているすべての人に捧げたい」と喜びのコメント。そしてチームの一体感を強調した。
「これから、さらに重要な試合について考えていきたい、U-21のチームはみんなとてもうまくいっている。みんなが一体となって一つの道を歩んでいる。A代表に行く機会を得たメンバーもいるしね。僕たちにとって、(A代表で)偉大な選手たちと一緒にプレーすることは誇りだ。しかし、この代表に選ばれたら、全力を出さなければいけない」
次戦の相手は、3-2でベルギーに競り勝ったポーランド。まだ、落とせない戦いは続く。
文=佐藤徳和/Norikazu Sato
スタジアムは、試合開始前から異常な盛り上がりを見せる。イタリアは最多5度の優勝を誇るが、2004年から15年も優勝から遠ざかっているため、ファンは優勝に向けてこの一戦が持つ意味を十分に理解しているようだ。
イタリアはベストメンバーを組んできた。12日にユーロ2020予選のボスニア・ヘルツェゴヴィナ戦に出場していたニコロ・バレッラ(カリアリ)が先発に名を連ねるなど、A代表組6人すべてがピッチに立った。日中は32度以上の気温があり、夜になっても25度、さらに湿度が高い中で始まった試合は、後方からボールをつなぐスペインに対し、イタリアが前線からハイプレッシャーをかける。5分までは拮抗した試合展開となるが、次第に細かいパスをつなぐスペインに主導権を握られ、イタリアはボールが取れない時間が続く。
すると、ルイージ・ディ・ビアージョ監督は、「4-3-3」から「4-3-1-2」にシステムを変更。ニコロ・ザニオーロをトップ下に置き、2トップにモイーズ・キーン(ユヴェントス)、フェデリコ・キエーザ(フィオレンティーナ)を配置する。しかし、先制したのはスペインだった。9分、ダニ・セバージョス(レアル・マドリード)へのマークが甘くなり、カットインから見事なゴールを叩き込まれる。GKアレックス・メレトはノーチャンスだった。急造チームということもあり攻撃で単調なプレーが多かったが、この場面では守備も組織的なプレーができず。皮肉にもA代表で主力のバレッラが対応を誤った。
その後も劣勢に立たされたイタリアは元の「4-3-3」に戻し、68パーセントの支配率までボールポゼッションを高めるスペインに対し、ファウルギリギリの守備で対応。それでも、耐えたことで次第にイタリアに流れが傾きかける。31分には主将のロランド・マンドラゴラ(ウディネーゼ)がこの試合初めてのシュートを放つ。その2分後には、キーンが初のCKを獲得。キーンはポストプレーから前を向いて独力で突破するなど、このレベルでも違いを生み出していた。
迎えた35分、イタリアに待望の同点ゴールが生まれる。ザニオーロが起点となり、バレッラが左に絶妙なピンポイントのロングフィードを放つ。パスを受けたキエーザが左サイドから縦に突破を図り、そのままニアにシュートを放ってネットを揺らす。2万6000人の観衆は大歓声。レジスタンスの歌、ベッラ・チャオ(さらば恋人よ)の熱唱がスタジアムに鳴り響き、イタリアのメンバーに歓喜の輪が広がった。GKウナイ・シモン(アスレティック・ビルバオ)がポジショニングを誤った感もあるが、突破力が生きたゴールだった。
その後もイタリアは相手陣内でプレーを進めて攻勢を仕掛けるが、41分、GKとの接触時に顔面を負傷していたザニオーロが痛みを訴え負傷退場となってしまった。代わって、地元ボローニャでプレーするリッカルド・オルソリーニが登場。熱狂的な大声援を受けるが、前半はボールに絡めないまま終わった。
スペインは後半から、ナポリでプレーするファビアン・ルイスを下げてミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)を投入。イタリアは56分、キーンに代わりパトリック・クトローネ(ミラン)がピッチに送り込まれる。すると63分、このクトローネがエリア内でねばり、ゴール前にこぼれたところをキエーザが豪快に叩き込み、イタリアが逆転に成功。A代表でも活躍するキエーザが2点目を決め、試合をひっくり返した。
スペインは選手交代で反撃を試みるが、流れはイタリアだ。80分には試合を決定づける追加点が生まれる。クロスに入り込んだロレンツォ・ペッレグリーニ(ローマ)がペナルティエリア内でソレールに倒されると、一度は流していた主審がVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の助言を受けて映像を確認。そしてイタリアにPKを与えた。これをペッレグリーニが冷静に沈め、イタリアがリードを2点に広げた。その後は危ない場面を作らせず、3-1でグループA最大の難敵に勝利を収めた。
個の力が目立った試合ではあったが、アグレッシブな守備と、前線からの激しいプレスで序盤の劣勢をはねのけ、戦う気持ちを90分間、持ち続けて戦っていたことが最大の勝因だろう。そして、観衆が終始送り続けた大声援も、アッズリーニにとっては大きな力となった。2万6000人以上の観客数を感じさせるような印象的な大声援で、ディ・ビアージョ監督が称賛するほどだった。
2ゴールを挙げた殊勲のキエーザは試合後、「今夜の試合はスペインに対し、素晴らしいイタリアだった。出だしは苦戦を強いられたけど、僕らは強い気持ちを持って、とても良いプレーをして、試合をひっくり反すことができた。絶対に諦めないということを示せたよ。ゴールは家族、恋人、そして僕を支えてくれているすべての人に捧げたい」と喜びのコメント。そしてチームの一体感を強調した。
「これから、さらに重要な試合について考えていきたい、U-21のチームはみんなとてもうまくいっている。みんなが一体となって一つの道を歩んでいる。A代表に行く機会を得たメンバーもいるしね。僕たちにとって、(A代表で)偉大な選手たちと一緒にプレーすることは誇りだ。しかし、この代表に選ばれたら、全力を出さなければいけない」
次戦の相手は、3-2でベルギーに競り勝ったポーランド。まだ、落とせない戦いは続く。
文=佐藤徳和/Norikazu Sato
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