『トヨタ88C-V』初の純レーシングエンジンを積むトヨタCカーの転換点となった1台【忘れがたき銘車たち】
モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは、『トヨタ88C-V』です。
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今から40年前の1982年にスタートし、世界中で流行したプロトタイプカーカテゴリー、“グループC”。日本では1年遅れの1983年から、耐久レースシリーズにグループCカーが登場し始めた。
その最中、トヨタは当初、童夢およびトムスの手で作られた車体にエンジンを供給するというかたちでCカーに関わっていた。その供給していたエンジンは、4T-Gや3S-Gといった2.0リッター4気筒の市販車にも積まれるユニットがベースとなっていた。
3S-Gに関しては、“3S-G改”と呼ばれるWRCの副産物として生まれた市販ベースとは別モノのエンジンだったものの、年を追うごとにCカーのレベルが上がっていくにつれ、2.0リッター4気筒という小排気量ターボエンジンでは戦えなくなってきていたのだ。
そんな時に誕生したのが、今回紹介する『トヨタ88C-V』である。この『トヨタ88C-V』は、それまで脈々と続いてきた童夢とトムス製のCカーの流れを断ち、新たにトヨタ社内で開発計画が進んだ1台だった。
『トヨタ88C-V』の車体は、設計を童夢が担当するなど引き続き童夢とトムスによるフィードバックはあったものの、製作はTRDが担うなど、TRDの主導で開発が進んでいった。搭載されるエンジンは、トヨタ本隊によってそれまでの3S-Gに代わる純レーシングエンジンが白紙から生み出された。
レイアウトについては、いくつかの候補があったとされるが、最終的には3.2リッターのV8ターボを選択。『R32V』と名付けられた型式の新エンジンは見事、1987年の年末に火入れを行うことに成功した。
こうして新たにカーボンモノコックになったシャシーと、トヨタとしては実質初となる純レーシングエンジンを搭載した新グループCカー、『トヨタ88C-V』が誕生したのだった。
『トヨタ88C-V』は開発計画の指導から1年後、1988年春には公開テストを開始。同年5月に一度、大クラッシュに見舞われるというハプニングもあったが、当初から目標に定めていた同年7月の富士500マイル戦で無事に実戦デビューを果たした。
トムスからのエントリーで青&白のミノルタカラーに彩られた『トヨタ88C-V』は、ジェフ・リース、関谷正徳、鈴木恵一の3名でドライブ。予選では7番グリッドを獲得、決勝では初陣ながら序盤より3時間近くもトップを快走した。
このままデビューウインもありえるかと思われた矢先、クランクシャフトが折損。結果、リタイヤとなってしまった。
その後、『トヨタ88C-V』は鈴鹿1000km、WEC IN JAPANといったレースに参戦するも目立った成績は残せなかった。だが、その後C-Vシリーズは、翌1989年に登場する89C-V、そして“集大成”ともいえる1990年の90C-Vにおいて、ル・マンなどの場においても世界と対等に走れるグループCカーへと進化していく。
『トヨタ88C-V』は、その進化の過程におけるトヨタCカー活動の転換点として、参戦レースこそわずかだったものの、重要な責を担った1台だったのだ。
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