インディ第11戦:パジェノーがライバルも舌を巻く速さでトロントを制圧。琢磨は悔しいリタイア
シモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)がポールポジションから完全勝利。それが今年のインディカー・シリーズ第11戦ホンダ・インディ・トロントだった。
プラクティス2で最速ラップを記録した彼は、土曜日のプラクティス3でもトップタイムを記録し、予選ではポールポジションを獲得。
今週いちばんの暑さとなったレースもグリーンフラッグ直後のターン1へとトップを保ったまま飛び込むと、そこからは2番手以下にアタックする隙すら与えずにゴールまで走り切った。
チーム・ペンスキーの中でも、今回はパジェノーのパフォーマンスは圧倒的だった。ウィル・パワーは予選が15番手と振るわなかったが、レース前のウォームアップで2番時計を出して発奮。
しかし、それは裏目に出て、1周目のターン8で予選12番手だったグラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)のインサイドに強引にノーズを突っ込ませ、2台は接触、揃ってタイヤウォールに突き刺さった。
これでフルコースコーションが発生し、出場22台はピットタイミングが2パターンにわけられることになった。しかし、ピットタイミングの違いが勝負の行方に影響を与えることはならなかった。インディ500ウイナーのパジェノーは、85周のレースの80周をリードし、今シーズン3勝利目を手にした。
ニューガーデンは予選が5番手で、決勝は4位となった。相変わらずの粘り強さを発揮。終盤に壁にホイールをヒットさせてもゴールまで走り切ることができた。しかし、そのスピードはパジェノーに完全に水を開けられていた。
2位に甘んじたのは5度のタイトル獲得経験を誇る、昨年度トロントウイナーのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)だった。
一時はパジェノーとディクソンの間に7秒以上の差があったが、レース終盤には1秒以下に縮まり、逆転もあり得る展開と映っていた。
しかし、温存していたプッシュ・トゥ・パスをフル活用することでパジェノーはハイペースを取り戻し、周回遅れも上手に利用しながらディクソンとの差を再構築し、勝利を掴んだ。
「レースでも僕らのマシンは速かったから、逃げ切ることができた。タイヤの消耗でライバル勢を上回っていたと思う」とウイナーは語った。
それに対してディクソンは、「今日のパジェノーのストレートでの速さには歯が立たなかった。また、僕らは序盤に一度ターン9の壁にぶつかったことで、ハンドリングが幾つかのコーナーで悪くなっていた」
「サスペンションの一部が曲がってしまっていたんだ。終盤にはマシン状況がなぜだか良くなり、差を縮めた。しかし、アタックができるところまではついに近づくことはできなかった」とコメントした。
レースはパジェノーとディクソンの一騎打ち。3位でゴールしたのはアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)だった。
2位フィニッシュのディクソンとの間にはとても大きな差があった。それでも、実に手堅い3位フィニッシュによってシリーズポイントではニューガーデンとの差を4点にまで縮めた。
今日のレースでは、ペースカーをロバート・ウィッケンズがドライブし、レース前にコースを2周した。彼が所属しているアロウ・シュミット・ピーターソン・モータースポーツの協同経営者となっているアロウが、ホンダと協力して作り上げた手動操作が可能なアキュラNSXにフィアンセとともに乗ってパレードラップを行ったのだ。そして、その後にウィッケンズはコクピットから「ジェントルメン、スタート・ユア・エンジンズ!」と叫んだ。
佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は予選10位から5位にまでポジション・アップした。ポイントランキングで6番手につける彼は、さらに上位でのゴールを目指していたが、5位走行中にマシン後部の両側から突然炎が見え始め、彼はピットに入ってマシンを降りた。
「今朝のウォームアップで走ったセッティングから少し変更をしたんですが、それが結果的に良かったですね。スタートは良く、その後も順調にレースを戦うことができていました。ピットストップも良く、順位を上げていくことができました」
「そして、終盤には5位を走ることができていたんです。それだけに駆動力を失い、ピットでレースを終えねばならなかったのは大変残念です。今日の僕たちは強力だったし、作戦も的確で、すべてをコントロール下に置いていたと思います」
「しかし、トラブル発生。今日のレースではリタイアがゼロだったため、ポイント争いでは大きく不利な状況となってしまいました。今回の自分たちの良さをポジティブに捉え、次戦に向かいたいと思います」と琢磨は語った。
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