【F1第4戦無線レビュー(2)】ライコネンがチームのあやふやな指示に激怒「いまさら何言ってんだよ!」
2週間前のF1ハンガリーGPでは、ガレージからダミーグリッドへ向かうレコノサンスラップの途中で、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がクラッシュするというアクシデントが起きた。イギリスGPでは、そのレコノサンスラップへマシンをピットアウトさせようとしていたレーシングポイントのガレージでトラブルが発生していた。
新型コロナウイルス感染症の陽性反応が出て欠場したセルジオ・ペレスに代わって、急きょ代役出場し、13番手からスタートする予定だったニコ・ヒュルケンベルグのマシンにトラブルが発生し、パワーユニットを始動させることができずにいた。ピットレーンが閉鎖されてもレコノサンスラップに出ることができなかったヒュルケンベルグは、ピットレーンスタートを目指したが、それもかなわず、グリッドに着く前にレースを終えた。
レース後、ヒュルケンベルグは次のようにコメントを残した。
「残念だけど、チームのみんなも悔しかったと思う。僕をグリッドに並ばせるために、懸命に作業してくれたチームの努力に心から感謝している。再びこのチームでみんなと仕事できたことは楽しかった」
レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンは、2週間前のハンガリーGPでは、自らのミスにより、エンジニアとメカニックにグリッド上で慌ただしい時間を過ごさせてしまった。彼は今回はミスを犯すことなくダミーグリッドに着くと、無線でこんなメッセージを贈った。
フェルスタッペン:みんなはどうかわからないけど、僕はいまとてもリラックスした時間を過ごしているよ
ハンガリーGPではスタートできるかどうかわからない緊張した時間をグリッド上で過ごしていただけに、通常作業をしているエンジニアとメカニックたちに対する、フェルスタッペン流の感謝の言葉だったのだろう。
そのレッドブル・ホンダはイギリスGPでは、フェルスタッペンのチームメイト、アレクサンダー・アルボンのほうにアクシデントが襲う。アルボンは、1周目にバランスを崩したケビン・マグヌッセン(ハース)のミスを逃さず、最終コーナーでインに飛び込んだ。しかし、両者は接触。
アルボン:彼が何をしたかったのかまったくわからないよ
レッドブル・ホンダ:OK、マシンのダメージは?
アルボン:少しフロントにバイブレーションがある。ピットウォールから確認してみてほしい
アルボンはその後もレースを走り続けたが、アルボンとの接触で押し出されたマグヌッセンはタイヤバリアにクラッシュ。その場でリタイアとなる。レース審議委員会は、その後、アルボンに5秒加算のタイムペナルティーを科した。
12周目、ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)がマゴッツでコントロールを失い、クラッシュした。
クビアト:オオオーッ、みんな、本当にゴメン
このときクビアトは自分のミスでクラッシュしたと思い、まずチームに謝罪したが、その後、ガレージに帰って、映像を見たところ、別の要因であることがわかった。レース後に彼は、「僕のコントロールが効かないところで何かが起きていたようだ。今回の故障を引き起こした正確な理由を理解するためにすべてのデータを確認する」と語った。
クビアトがクラッシュしたことを知ったチームメイトのピエール・ガスリーは、無線を送る。
ガスリー:ダニー(クビアトの愛称)に何があった?
アルファタウリ:まだ調査しているけど、ターン11でクラッシュした
ガスリー:彼は大丈夫?
アルファタウリ:大丈夫だ
このクラッシュで13周目にセーフティカーが導入されると、各車一斉にピットイン。しかし、ピットロード入口直前を走行していたキミ・ライコネンに対して指示を送る際に、アルファロメオのレースエンジニアは少し混乱してしまう。
アルファロメオ:セーフティーカーが入った。BOX、BOX
ライコネン:本当か?
アルファロメオ:いまピットストップする必要がある
ライコネン:わかった
アルファロメオ:BOX、BOX、BOX
しかし、次の瞬間、戦略を変更する。
アルファロメオ:ステイアウト、ステイアウト、ステイアウト
だが、その時すでにピットロードに入っていたため、ライコネンの逆鱗に触れてしまう。
ライコネン:おい、いまさら何言ってんだよ。そんなのクソ遅すぎるんだよ
すぐさま、レースエンジニアは「OK、わかった」とライコネンのピットインを受け入れるが、怒り心頭に発してしまったライコネンは気持ちは収まらない。
ライコネン:一度、『入れ』って言っておいて、何を言ってんだよ。信じられないね
アルファロメオ:OK、キミ。わかった。わかった
ライコネンのチームに対する不信感は、レース中盤のこんなやりとりからもわかる。
ライコネン:なんかリヤが大変なことになっている。何が起きているんだけど……
アルファロメオ:風が強くなっている。みんなも突然吹く追い風に苦しんでいるから気をつけろ
しかし、その後ライコネンはフロントウイングを失いピットストップ。完走したドライバーの中で最後尾となる17位でフィニッシュした。レース後、ライコネンは「こんなレースになるとは思っていなかった。ピットストップ後、なぜかペースが上がらなかった。何が起きていたのか、分析する必要がある」と語った。
今年のアルファロメオは開幕戦のオーストリアGPでも、レース中にライコネンの右フロントタイヤが外れるトラブルを起こしている。オーストリアGPもイギリスGPも、大きな事故にはならなかったから良かったものの、どちらも大事故につながりかねないアクシデントだった。徹底した調査と検証が求められる。
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