より“怖いチーム”に…フィードバック生かすサイクル見え、U-21日本代表・森保監督も満足げ
サッカーキング2018年8月17日(金)12時10分
パキスタン戦に勝利し、16強入りを決めたU-21日本代表 [写真]=AP/アフロ
蹴るべきか蹴らざるべきか。それが問題……という話でもない。
17日、インドネシアのチカランにて開催されたアジア競技大会男子サッカー競技グループステージ第2節に臨んだU-21日本代表は、U-23パキスタン代表(オーバーエイジ選手含む)に4-0の勝利を収めた。立ち上がり10分間で3得点を奪って勝負を決めてしまったゲームの背景にあったのは、第1戦の内容を受けたフィードバックである。
開始2分、日本の先制点は3バックの右で初先発(そもそも初招集)したDF岡崎慎(FC東京)からのシンプルなロングボールから。これで裏を取ったMF岩崎悠人(京都サンガF.C.)が見事なファーストタッチを決めつつ、相手DFと競り合いながらのシュートを決めた。これについて岡崎は、こう振り返る。
「昨日の練習中に岩崎選手とは話していた形でした。第1戦でああやって引き込まれたときに何もなくなってしまった。だから最初の10分、15分はラフでもいいから裏に放り込んでみようよ、と」
自身の前にスペースがある状況なら、3バックの選手がボールを持ちだしていくのが代表の基本的なやり方だ。前からボールを狩りに来るチームに対しては、そこからうまくいなしてスペースを突いていく形もできるが、割り切って引いて守っている相手には効力が薄い。むしろ相手がガッツリ引いて固める時間を与えることにもなる。
ならば、相手が引き切ってしまう前に、まずはシンプルに裏を狙ってみようという算段だ。
「初戦をベンチから見ていて、押し込んだ状態でプレーする時間が長かった。もっと簡単に背後を狙っていけばいいんじゃないかなって感じていた」(岩崎)
この判断の背景には、「相手も一昨日の試合を観ていると思うので、そうなるときっと下(グラウンダーのパス)で来ると思っている」(岡崎)という読みもあった。第1節でしつこいくらいに足元のプレーを見せているから裏狙いが効くというジャッジである。
実は芝の状態もあり、「練習からボールフィーリングがあまり良くなくて、乗り気じゃない部分もあった。最悪、ラインを割ってもいいかなと思って蹴った」と言う岡崎だが、「こんなに思っていたとおりにうまくいくとは」と驚くほどにピタリとハマる正確なフィードを繰り出し、貴重な先制点をアシストすることとなった。
この試合に向けての裏狙いは、映像を使った意識付けも行われていたのだが、「自分が言うまでもなく、選手たちが自分で考えてきてくれていた」と森保一監督が満足げに語ったように、しっかりフィットしていた。強くなっていくチームには、前の試合を次の試合へフィードバックしていくサイクルがあるものであり、その一端が見られたことがパキスタン戦における最大の収穫だったかもしれない。
もちろんこれは、裏に向かってとにかく蹴り込むのが正解であるというような話ではない。第1節で足元パスと低い位置からの持ち上がりを多用した結果として、第2節でシンプルな裏狙いが効いた。では、第3節では?という話にもなってくる。守る側としては両方の攻め方を持っているチームのほうが守りにくく、怖さを感じるのは当然のこと。状況に応じた「下」と「裏」の使い分けをしていくことが、東京五輪を目指すこの代表が、より「怖いチーム」になっていく道だと言えるだろう。
取材・文=川端暁彦
17日、インドネシアのチカランにて開催されたアジア競技大会男子サッカー競技グループステージ第2節に臨んだU-21日本代表は、U-23パキスタン代表(オーバーエイジ選手含む)に4-0の勝利を収めた。立ち上がり10分間で3得点を奪って勝負を決めてしまったゲームの背景にあったのは、第1戦の内容を受けたフィードバックである。
開始2分、日本の先制点は3バックの右で初先発(そもそも初招集)したDF岡崎慎(FC東京)からのシンプルなロングボールから。これで裏を取ったMF岩崎悠人(京都サンガF.C.)が見事なファーストタッチを決めつつ、相手DFと競り合いながらのシュートを決めた。これについて岡崎は、こう振り返る。
「昨日の練習中に岩崎選手とは話していた形でした。第1戦でああやって引き込まれたときに何もなくなってしまった。だから最初の10分、15分はラフでもいいから裏に放り込んでみようよ、と」
自身の前にスペースがある状況なら、3バックの選手がボールを持ちだしていくのが代表の基本的なやり方だ。前からボールを狩りに来るチームに対しては、そこからうまくいなしてスペースを突いていく形もできるが、割り切って引いて守っている相手には効力が薄い。むしろ相手がガッツリ引いて固める時間を与えることにもなる。
ならば、相手が引き切ってしまう前に、まずはシンプルに裏を狙ってみようという算段だ。
「初戦をベンチから見ていて、押し込んだ状態でプレーする時間が長かった。もっと簡単に背後を狙っていけばいいんじゃないかなって感じていた」(岩崎)
この判断の背景には、「相手も一昨日の試合を観ていると思うので、そうなるときっと下(グラウンダーのパス)で来ると思っている」(岡崎)という読みもあった。第1節でしつこいくらいに足元のプレーを見せているから裏狙いが効くというジャッジである。
実は芝の状態もあり、「練習からボールフィーリングがあまり良くなくて、乗り気じゃない部分もあった。最悪、ラインを割ってもいいかなと思って蹴った」と言う岡崎だが、「こんなに思っていたとおりにうまくいくとは」と驚くほどにピタリとハマる正確なフィードを繰り出し、貴重な先制点をアシストすることとなった。
この試合に向けての裏狙いは、映像を使った意識付けも行われていたのだが、「自分が言うまでもなく、選手たちが自分で考えてきてくれていた」と森保一監督が満足げに語ったように、しっかりフィットしていた。強くなっていくチームには、前の試合を次の試合へフィードバックしていくサイクルがあるものであり、その一端が見られたことがパキスタン戦における最大の収穫だったかもしれない。
もちろんこれは、裏に向かってとにかく蹴り込むのが正解であるというような話ではない。第1節で足元パスと低い位置からの持ち上がりを多用した結果として、第2節でシンプルな裏狙いが効いた。では、第3節では?という話にもなってくる。守る側としては両方の攻め方を持っているチームのほうが守りにくく、怖さを感じるのは当然のこと。状況に応じた「下」と「裏」の使い分けをしていくことが、東京五輪を目指すこの代表が、より「怖いチーム」になっていく道だと言えるだろう。
取材・文=川端暁彦
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