プロデビュー戦から300得点まで…“神の子”トーレスの忘れられないあの試合
サッカーキング2019年8月22日(木)19時2分
23日に行われる2019明治安田生命J1リーグ第24節、サガン鳥栖対ヴィッセル神戸戦で、元スペイン代表FWフェルナンド・トーレスが現役ラストマッチを迎える。クラブと代表で数々のタイトルを獲得し、多くのファンから愛された“エル・ニーニョ(神の子)”。スペイン、そして世界を代表するストライカーの引退試合は、多くのサッカーファンの記憶に刻まれることだろう。
そこで、18年に及ぶトーレスの選手生活で特に印象的だったゲームを振り返り、代名詞でもある“背番号9”にちなみ、9試合を紹介する。
■17歳でプロデビュー
2001年5月27日 セグンダ・ディビシオン(スペイン2部)第39節 レガネス戦
1984年3月20日にスペインの首都マドリードで生まれ、祖父の影響で幼少期からアトレティコ・マドリードのファンだったというトーレス。11歳のときに憧れのクラブへの入団を果たすと、15歳の若さでプロ契約を結んだ。そして2001年5月27日、2部リーグながらトップチームデビューを果たす。旧本拠地ビセンテ・カルデロンのピッチに足を踏み入れた少年は、この時まだ17歳。それでも桁違いの能力の持ち主であるのを証明するのに時間はかからなかった。1週間後に行われたデビュー2戦目で初ゴールをマーク。目標としていた1部昇格は果たせなかったが、鮮烈なデビューを飾った“神の子”にファンはクラブの未来を託した。
■イニエスタとの初対戦
2004年9月19日 リーガ・エスパニョーラ第3節 バルセロナ戦
プロ選手として、トーレスとイニエスタがピッチ上で初めて対戦したのは、今から15年前のことだった。2004-05シーズンのリーガ・エスパニョーラ第3節、バルセロナ対アトレティコ・マドリード。戦いの舞台となったカンプ・ノウで、トーレスはフル出場。対するイニエスタは、ロナウジーニョとの交代で75分からピッチに立ち、初めてピッチ上で顔を合わせた。なお、1-1に終わったゲームで値千金の同点ゴールを挙げたのがトーレスである。19歳の若さでキャプテンを務めていたトーレスは、文字通りチームの“救世主”となったのだ。23日に行われる最後の直接対決では、どんなフィナーレを迎えるのか注目が集まる。
■鮮烈なアンフィールドデビュー
2007年8月19日 プレミアリーグ第3節 チェルシー戦
2007年夏、トーレスは当時のクラブ史上最高額となる2000万ポンド(現レートで約26億円)でリヴァプールに移籍。自身初の海外移籍となったが、ここでも強烈なインパクトを残した。本拠地デビューとなったチェルシーとの一戦で、開始16分に先制ゴールをマーク。試合は1-1のドローに終わったが、挨拶代わりの一発はアンフィードのサポーターのハートを掴むのに十分なものだった。このゴールを皮切りに、2007-08シーズンは公式戦33得点を記録。2017-18シーズンにモハメド・サラーが44得点を挙げるまで、リヴァプールのデビューシーズンにおける最多得点記録であった。
■華麗なチップキックで44年ぶりの戴冠
2008年6月29日 EURO2008決勝 ドイツ戦
スペイン代表では歴代3位となる38得点をマーク。その中で最も印象深いゴールと言えば、母国に44年ぶりの戴冠をもたらした一発だろう。EURO2008決勝のドイツ戦で、優勝を手繰り寄せる決勝点をマーク。同大会の得点王に輝いたダビド・ビジャが欠場となるなか、シャビのスルーパスに反応すると、相手GKイェンス・レーマンの鼻先をかすめるチップキップでゴールネットを揺らした。その試合後、トーレスは「夢が叶ったんだ。これは僕にとって初めてのタイトルであり、これに続いて今後何度も優勝を経験できたらいいね」とコメント。この言葉どおり、スペイン代表は2010 FIFAワールドカップ 南アフリカ、そしてEURO2012と主要国際大会3連覇を成し遂げる。ドイツ戦で挙げたトーレスの得点は黄金時代の到来を告げるものとなった。
■“バルサキラー”の面目躍如
2012年4月24日 チャンピオンズリーグ準決勝セカンドレグ バルセロナ戦
リヴァプール時代とは打って変わって、2011年1月に加入したチェルシーでは苦しんだ。当時のプレミアリーグ最高額となる移籍金でロンドンに活躍の場を移したが、リーグ戦2桁得点を挙げたシーズンはゼロ。それでも、クラブ初の欧州制覇に一役買った。2012年4月に行われたバルセロナとのチャンピオンズリーグ(CL)準決勝セカンドレグで、後半アディショナルタイムに貴重なアウェイゴールをマーク。決勝進出を手繰り寄せる得点を挙げ、カンプ・ノウは静寂に包まれた。トーレスにとって、バルセロナはプロキャリアで最も多くのゴールを奪っているお得意様。“バルサキラー”の面目躍如となった。
■サッカー界史上初の偉業
2013年5月15日 ヨーロッパリーグ決勝 ベンフィカ戦
欧州王者として迎えた2012-13シーズン、チェルシーはCLでまさかのグループステージ敗退を喫する。それでもヨーロッパリーグ(EL)で決勝進出を果たすと、ベンフィカとの一戦でトーレスが大仕事をやってのけた。0-0で迎えた60分に先制点をマーク。膝立ちのまま両手で弓を射る、おなじみのゴールパフォーマンスも披露した。2-1で逃げ切ったチェルシーはEL初制覇。トーレスは、ワールドカップ、EURO、CL、そしてELと、4大会すべての決勝に出場し、なおかつ優勝を成し遂げた史上初の選手となった。
■キャリア最高級のゴール
2017年2月12日 リーガ・エスパニョーラ第22節 セルタ戦
2014年12月にアトレティコへの復帰を果たしたトーレスは、約3年半にわたって古巣でプレー。ただし、かつてのようなエースとしてではなく、スーパーサブのような立ち位置だった。それでも、「キャリア最高」とも称されるゴラッソを決めている。2017年2月のセルタ戦、左サイドからパスを受けると、ゴールを背に向けながらトラップ。ボールはうまく収まらずに浮いてしまったが、トーレスは後ろ向きのまま右足でシュートを放った。ボールは美しい弧を描きがならゴールイン。トラップからシュートに至るまで一度もゴールを見ることなく決めてみせた。トーレス本人も、「これは自分を信じることで獲ることができたゴールだ」と自画自賛する一発である。
■神の子から伝説へ
2018年5月20日 リーガ・エスパニョーラ第38節 エイバル戦
23日の引退試合も素晴らしいゲームになるはずだが、アトレティコでのラストマッチも記憶に残る一戦だった。本拠地ワンダ・メトロポリターノのバックスタンドには、「DE NINO A LEYENDA(神の子から伝説へ)」の言葉と共に背番号9のコレオグラフィーが掲げられ、対戦相手のエイバルの選手たちが花道を作るなか、トーレスは腕章を巻いてピッチに登場。すると、アトレティコ通算128点目、そして129点目となるゴールを立て続けに記録した。最後の雄姿を一目見ようと集まったサポーターたちに最高のプレゼントを残し、有終の美を飾った。
■キャリア通算300得点
2019年6月30日 明治安田生命J1リーグ第17節 清水エスパルス戦
今年の6月21日に現役引退を表明してから、わずか9日後。トーレスは日本でも千両役者ぶりを発揮してみせる。キャリアに幕を引くことを発表してから初の試合となった清水戦で2得点。たった4分間で奪った2つのゴールにより、チームを勝利に導くと共に、キャリア通算300得点を達成した。圧巻のパフォーマンスに、SNS上では「引退しない方がいいのでは?」という声も挙がったほどだ。この試合が象徴するように、トーレスは記録よりも記憶にも残るストライカーだと言える。果たして、23日の神戸戦ではどんなプレーを披露してくれるのか。“神の子”のラストダンスから目が離せない。
(記事/Footmedia)
そこで、18年に及ぶトーレスの選手生活で特に印象的だったゲームを振り返り、代名詞でもある“背番号9”にちなみ、9試合を紹介する。
■17歳でプロデビュー
2001年5月27日 セグンダ・ディビシオン(スペイン2部)第39節 レガネス戦
1984年3月20日にスペインの首都マドリードで生まれ、祖父の影響で幼少期からアトレティコ・マドリードのファンだったというトーレス。11歳のときに憧れのクラブへの入団を果たすと、15歳の若さでプロ契約を結んだ。そして2001年5月27日、2部リーグながらトップチームデビューを果たす。旧本拠地ビセンテ・カルデロンのピッチに足を踏み入れた少年は、この時まだ17歳。それでも桁違いの能力の持ち主であるのを証明するのに時間はかからなかった。1週間後に行われたデビュー2戦目で初ゴールをマーク。目標としていた1部昇格は果たせなかったが、鮮烈なデビューを飾った“神の子”にファンはクラブの未来を託した。
■イニエスタとの初対戦
2004年9月19日 リーガ・エスパニョーラ第3節 バルセロナ戦
プロ選手として、トーレスとイニエスタがピッチ上で初めて対戦したのは、今から15年前のことだった。2004-05シーズンのリーガ・エスパニョーラ第3節、バルセロナ対アトレティコ・マドリード。戦いの舞台となったカンプ・ノウで、トーレスはフル出場。対するイニエスタは、ロナウジーニョとの交代で75分からピッチに立ち、初めてピッチ上で顔を合わせた。なお、1-1に終わったゲームで値千金の同点ゴールを挙げたのがトーレスである。19歳の若さでキャプテンを務めていたトーレスは、文字通りチームの“救世主”となったのだ。23日に行われる最後の直接対決では、どんなフィナーレを迎えるのか注目が集まる。
■鮮烈なアンフィールドデビュー
2007年8月19日 プレミアリーグ第3節 チェルシー戦
2007年夏、トーレスは当時のクラブ史上最高額となる2000万ポンド(現レートで約26億円)でリヴァプールに移籍。自身初の海外移籍となったが、ここでも強烈なインパクトを残した。本拠地デビューとなったチェルシーとの一戦で、開始16分に先制ゴールをマーク。試合は1-1のドローに終わったが、挨拶代わりの一発はアンフィードのサポーターのハートを掴むのに十分なものだった。このゴールを皮切りに、2007-08シーズンは公式戦33得点を記録。2017-18シーズンにモハメド・サラーが44得点を挙げるまで、リヴァプールのデビューシーズンにおける最多得点記録であった。
■華麗なチップキックで44年ぶりの戴冠
2008年6月29日 EURO2008決勝 ドイツ戦
スペイン代表では歴代3位となる38得点をマーク。その中で最も印象深いゴールと言えば、母国に44年ぶりの戴冠をもたらした一発だろう。EURO2008決勝のドイツ戦で、優勝を手繰り寄せる決勝点をマーク。同大会の得点王に輝いたダビド・ビジャが欠場となるなか、シャビのスルーパスに反応すると、相手GKイェンス・レーマンの鼻先をかすめるチップキップでゴールネットを揺らした。その試合後、トーレスは「夢が叶ったんだ。これは僕にとって初めてのタイトルであり、これに続いて今後何度も優勝を経験できたらいいね」とコメント。この言葉どおり、スペイン代表は2010 FIFAワールドカップ 南アフリカ、そしてEURO2012と主要国際大会3連覇を成し遂げる。ドイツ戦で挙げたトーレスの得点は黄金時代の到来を告げるものとなった。
■“バルサキラー”の面目躍如
2012年4月24日 チャンピオンズリーグ準決勝セカンドレグ バルセロナ戦
リヴァプール時代とは打って変わって、2011年1月に加入したチェルシーでは苦しんだ。当時のプレミアリーグ最高額となる移籍金でロンドンに活躍の場を移したが、リーグ戦2桁得点を挙げたシーズンはゼロ。それでも、クラブ初の欧州制覇に一役買った。2012年4月に行われたバルセロナとのチャンピオンズリーグ(CL)準決勝セカンドレグで、後半アディショナルタイムに貴重なアウェイゴールをマーク。決勝進出を手繰り寄せる得点を挙げ、カンプ・ノウは静寂に包まれた。トーレスにとって、バルセロナはプロキャリアで最も多くのゴールを奪っているお得意様。“バルサキラー”の面目躍如となった。
■サッカー界史上初の偉業
2013年5月15日 ヨーロッパリーグ決勝 ベンフィカ戦
欧州王者として迎えた2012-13シーズン、チェルシーはCLでまさかのグループステージ敗退を喫する。それでもヨーロッパリーグ(EL)で決勝進出を果たすと、ベンフィカとの一戦でトーレスが大仕事をやってのけた。0-0で迎えた60分に先制点をマーク。膝立ちのまま両手で弓を射る、おなじみのゴールパフォーマンスも披露した。2-1で逃げ切ったチェルシーはEL初制覇。トーレスは、ワールドカップ、EURO、CL、そしてELと、4大会すべての決勝に出場し、なおかつ優勝を成し遂げた史上初の選手となった。
■キャリア最高級のゴール
2017年2月12日 リーガ・エスパニョーラ第22節 セルタ戦
2014年12月にアトレティコへの復帰を果たしたトーレスは、約3年半にわたって古巣でプレー。ただし、かつてのようなエースとしてではなく、スーパーサブのような立ち位置だった。それでも、「キャリア最高」とも称されるゴラッソを決めている。2017年2月のセルタ戦、左サイドからパスを受けると、ゴールを背に向けながらトラップ。ボールはうまく収まらずに浮いてしまったが、トーレスは後ろ向きのまま右足でシュートを放った。ボールは美しい弧を描きがならゴールイン。トラップからシュートに至るまで一度もゴールを見ることなく決めてみせた。トーレス本人も、「これは自分を信じることで獲ることができたゴールだ」と自画自賛する一発である。
■神の子から伝説へ
2018年5月20日 リーガ・エスパニョーラ第38節 エイバル戦
23日の引退試合も素晴らしいゲームになるはずだが、アトレティコでのラストマッチも記憶に残る一戦だった。本拠地ワンダ・メトロポリターノのバックスタンドには、「DE NINO A LEYENDA(神の子から伝説へ)」の言葉と共に背番号9のコレオグラフィーが掲げられ、対戦相手のエイバルの選手たちが花道を作るなか、トーレスは腕章を巻いてピッチに登場。すると、アトレティコ通算128点目、そして129点目となるゴールを立て続けに記録した。最後の雄姿を一目見ようと集まったサポーターたちに最高のプレゼントを残し、有終の美を飾った。
■キャリア通算300得点
2019年6月30日 明治安田生命J1リーグ第17節 清水エスパルス戦
今年の6月21日に現役引退を表明してから、わずか9日後。トーレスは日本でも千両役者ぶりを発揮してみせる。キャリアに幕を引くことを発表してから初の試合となった清水戦で2得点。たった4分間で奪った2つのゴールにより、チームを勝利に導くと共に、キャリア通算300得点を達成した。圧巻のパフォーマンスに、SNS上では「引退しない方がいいのでは?」という声も挙がったほどだ。この試合が象徴するように、トーレスは記録よりも記憶にも残るストライカーだと言える。果たして、23日の神戸戦ではどんなプレーを披露してくれるのか。“神の子”のラストダンスから目が離せない。
(記事/Footmedia)
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