【徹底分析】“挑戦的”な3バック導入で進化を図る豪州…日本が突くべきポイントは?
サッカーキング2017年8月30日(水)7時1分
オーストラリア代表の最終ラインを形成する3選手 [写真]=Getty Images
日本代表はワールドカップ出場を懸け、ホームでオーストラリア代表と対戦する。FW岡崎慎司(レスター)が「戦い方というのは数年前から変わってきていて、すごくテクニックのあるチームだと思っているし、戦術的にも強いチーム」と語るオーストラリアは、アンジェ・ポステコグルー監督が就任したブラジルW杯前から中盤のポゼッションを重視するスタイルに変更して現在に至っている。
その基本的な姿勢はアウェイで対戦した昨年10月にも見られたが、そこからポステコグルー監督はさらに挑戦的な[3-4-2-1]システムを導入する。その象徴的な選手が横浜F・マリノスに所属するDFミロシュ・デゲネクだ。昨年5月のイングランド代表との親善試合でA代表デビューを飾ったデゲネクは3バックの右ストッパーに指名されると、持ち前の対人能力と足下の技術を発揮し、ポステコグルー監督の申し子的な存在になっている。
3バックの中央でラインを統率するDFトレント・セインズベリー(江蘇蘇寧)はポステコグルー体制を最終ラインから支える選手だが、やはり3バックの採用でさらに存在感が高まっている。もともと状況判断やカバーリングに定評はあるが、4バックのセンターとしては屈強な戦士揃いのオーストラリア守備陣で際立つ強さはない。3バックのリベロは彼の“天職”と言えるポジションかもしれない。
そして左ストッパーを務めるもう1人の主力がDFベイリー・ライト。イングランド2部のブリストルで主力を担うDFは186cmの長身ながら左右のサイドバックもこなせる機動力と器用さが特徴で、右利きだが左足のキックにも優れている。相手のプレッシャーがかかりやすいポイントでミスなく周囲の味方につなげるライトは3バックの生命線だ。
従来のメンバーであるDFマシュー・スピラノビッチ(杭州緑城)やDFライアン・マクゴーワン(アル・シャルージャ)といった選手も新しいシステムに適応を求められるが、23歳のデゲネク、25歳のセインズベリーとライトという3人がファーストセットになっているのはロジカルな流れだ。最終ラインでボールをつなぎながら全体を押し上げ、サイドを起点にバイタルエリアで中央を使う。その攻撃はベースの技術と局面の強さや高さをバランスよく生かしている。
3バックの“アキレス腱”になるのが左右ストッパーの横のスペースであることはオーストラリアのそれも変わらない。[3-4-2-1]というと、Jリーグを見慣れている日本のファンは浦和レッズやサンフレッチェ広島を連想しやすいが、オーソドックスな3バックは最初から5バックにして相手サイドの縦を切る守備戦術はあまり用いられない。なぜならば、そうすると3バックを採用する本来の目的と矛盾してしまうためだ。
もちろん、押し込まれる展開になればDFブラッド・スミス(ボーンマス)と本職FWのマシュー・レッキー(ヘルタ・ベルリン)が担う左右ウイングバックも自陣深くに下がってスペースを埋めるが、攻守の切り替わり時には中盤の高めのポジションを取り、中盤や3バックからボールを受けチャンスの起点になる、あるいは逆サイドからのクロスにファーサイドから飛び込むと言った攻撃的な役割と同時に、高い位置から相手にプレッシャーをかける守備の仕事をこなしている。
「3バックなので、やっぱりその裏だったり、速いカウンターの攻めはかなり効いてくるんじゃないかなと思う。前から行くだけじゃなく、わざと引いて、相手を来させて、ショートカウンターという、そういう自分たちの経験とかもね。やっぱり頭を使いながら」
このDF長友佑都(インテル)の言葉には2つの意味が含まれている。1つはカウンターの状況では相手のディフェンスは文字通り3バックになっており、左右にスペースがあること。もう1つは、ポゼッションでもオーストラリアが前からボールを奪おうとプレッシャーをかける時にはやはり後ろは3枚になっており、そのプレスをいなしてサイドスペースにボールを出せれば、そこから相手の守備を後手に回せるということだ。
もう1つ興味深いのは、そうした状況において、オーストラリアの守備陣は相手の最前線のアタッカーには厳しく付きに行くものの、そこからタイミングを1つ後らせて走り込んで来る選手をボランチなどがうまく捕まえられないという現象だ。そのため日本としてはFW大迫勇也(ケルン)のポストプレーなどを起点にタイミングを図りながら、攻撃的MFの香川真司(ドルトムント)や柴崎岳(ヘタフェ)、時にはボランチの選手が一気にスプリントしてゴール前に走り込んで行きたい。長友やDF酒井宏樹(マルセイユ)などサイドバックの選手が外側だけでなく、インサイドに飛び出すプレーもオーストラリアの守備には有効だ。
ポステコグルー監督はホームやアウェイに関わらず、守備から入るのではなく攻撃でゲームの主導権を取り、守備も高い位置からボールを奪うコンセプトを突き詰めようとしている。それでもオーストラリアが伝統的に持つ球際の強さや最後まで諦めないメンタリティ、90分走り続ける体力は健在であり、終盤に追いかける展開となれば、FWティム・ケーヒル(メルボルン・C)を投入してロングボールを増やしてくるだろう。
しかし、彼らが掲げる基本的な方向性とそれに適した[3-4-2-1]のシステムはプラグマティックな変化よりも継続性を志向するものであり、それゆえのストロングポイントもウィークポイントも明確だ。ストロングポイントを発揮されるほど苦しい戦いになるが、ホームの応援をバックに自分たちの持ち味も生かしながら、よりウィークポイントを突ける展開に持っていきたいところだ。
文=河治良幸
その基本的な姿勢はアウェイで対戦した昨年10月にも見られたが、そこからポステコグルー監督はさらに挑戦的な[3-4-2-1]システムを導入する。その象徴的な選手が横浜F・マリノスに所属するDFミロシュ・デゲネクだ。昨年5月のイングランド代表との親善試合でA代表デビューを飾ったデゲネクは3バックの右ストッパーに指名されると、持ち前の対人能力と足下の技術を発揮し、ポステコグルー監督の申し子的な存在になっている。
3バックの中央でラインを統率するDFトレント・セインズベリー(江蘇蘇寧)はポステコグルー体制を最終ラインから支える選手だが、やはり3バックの採用でさらに存在感が高まっている。もともと状況判断やカバーリングに定評はあるが、4バックのセンターとしては屈強な戦士揃いのオーストラリア守備陣で際立つ強さはない。3バックのリベロは彼の“天職”と言えるポジションかもしれない。
そして左ストッパーを務めるもう1人の主力がDFベイリー・ライト。イングランド2部のブリストルで主力を担うDFは186cmの長身ながら左右のサイドバックもこなせる機動力と器用さが特徴で、右利きだが左足のキックにも優れている。相手のプレッシャーがかかりやすいポイントでミスなく周囲の味方につなげるライトは3バックの生命線だ。
従来のメンバーであるDFマシュー・スピラノビッチ(杭州緑城)やDFライアン・マクゴーワン(アル・シャルージャ)といった選手も新しいシステムに適応を求められるが、23歳のデゲネク、25歳のセインズベリーとライトという3人がファーストセットになっているのはロジカルな流れだ。最終ラインでボールをつなぎながら全体を押し上げ、サイドを起点にバイタルエリアで中央を使う。その攻撃はベースの技術と局面の強さや高さをバランスよく生かしている。
3バックの“アキレス腱”になるのが左右ストッパーの横のスペースであることはオーストラリアのそれも変わらない。[3-4-2-1]というと、Jリーグを見慣れている日本のファンは浦和レッズやサンフレッチェ広島を連想しやすいが、オーソドックスな3バックは最初から5バックにして相手サイドの縦を切る守備戦術はあまり用いられない。なぜならば、そうすると3バックを採用する本来の目的と矛盾してしまうためだ。
もちろん、押し込まれる展開になればDFブラッド・スミス(ボーンマス)と本職FWのマシュー・レッキー(ヘルタ・ベルリン)が担う左右ウイングバックも自陣深くに下がってスペースを埋めるが、攻守の切り替わり時には中盤の高めのポジションを取り、中盤や3バックからボールを受けチャンスの起点になる、あるいは逆サイドからのクロスにファーサイドから飛び込むと言った攻撃的な役割と同時に、高い位置から相手にプレッシャーをかける守備の仕事をこなしている。
「3バックなので、やっぱりその裏だったり、速いカウンターの攻めはかなり効いてくるんじゃないかなと思う。前から行くだけじゃなく、わざと引いて、相手を来させて、ショートカウンターという、そういう自分たちの経験とかもね。やっぱり頭を使いながら」
このDF長友佑都(インテル)の言葉には2つの意味が含まれている。1つはカウンターの状況では相手のディフェンスは文字通り3バックになっており、左右にスペースがあること。もう1つは、ポゼッションでもオーストラリアが前からボールを奪おうとプレッシャーをかける時にはやはり後ろは3枚になっており、そのプレスをいなしてサイドスペースにボールを出せれば、そこから相手の守備を後手に回せるということだ。
もう1つ興味深いのは、そうした状況において、オーストラリアの守備陣は相手の最前線のアタッカーには厳しく付きに行くものの、そこからタイミングを1つ後らせて走り込んで来る選手をボランチなどがうまく捕まえられないという現象だ。そのため日本としてはFW大迫勇也(ケルン)のポストプレーなどを起点にタイミングを図りながら、攻撃的MFの香川真司(ドルトムント)や柴崎岳(ヘタフェ)、時にはボランチの選手が一気にスプリントしてゴール前に走り込んで行きたい。長友やDF酒井宏樹(マルセイユ)などサイドバックの選手が外側だけでなく、インサイドに飛び出すプレーもオーストラリアの守備には有効だ。
ポステコグルー監督はホームやアウェイに関わらず、守備から入るのではなく攻撃でゲームの主導権を取り、守備も高い位置からボールを奪うコンセプトを突き詰めようとしている。それでもオーストラリアが伝統的に持つ球際の強さや最後まで諦めないメンタリティ、90分走り続ける体力は健在であり、終盤に追いかける展開となれば、FWティム・ケーヒル(メルボルン・C)を投入してロングボールを増やしてくるだろう。
しかし、彼らが掲げる基本的な方向性とそれに適した[3-4-2-1]のシステムはプラグマティックな変化よりも継続性を志向するものであり、それゆえのストロングポイントもウィークポイントも明確だ。ストロングポイントを発揮されるほど苦しい戦いになるが、ホームの応援をバックに自分たちの持ち味も生かしながら、よりウィークポイントを突ける展開に持っていきたいところだ。
文=河治良幸
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