F1技術解説イタリアGP編(2):2019年型レッドブルのパーツ流用で大きな伸び代を得たアルファタウリ
アルファタウリの2020年型AT01は、2019年型レッドブルRB15から多くのパーツを移植している。しかしいうまでもなく、完全コピーマシンではない。ノーズはレッドブル・ホンダやメルセデスのような細身のものではないし、サイドポンツーンの形状も全く異なっている。はっきりいえば、最新コンセプトとは言い難い。
リヤサスペンションやギヤボックスなどレッドブルから購入したパーツも、昨年型のいわばお古である。それは主に、スケジュール上の都合からだった。しかしアルファタウリ・ホンダはそのハンデキャップを逆手にとって、AT01に大きな進化を遂げさせた。
「レッドブルの開発陣は、主要パーツの最終形を決めるのにギリギリまで時間をかける」と、アルファタウリのテクニカル・ディレクター、ジョディ・エギントンは解説する。
「なので実際のパーツ制作にあたって、レッドブルとわれわれの両方分を作っている余裕はとてもない。2019年型のパーツを供給するのは、主にその理由からだ。しかし正直にいえば、その方がわれわれにはありがたい。たとえばトランスミッションだが、これはマシンパッケージの根幹をなすパーツのひとつだ。2019年型はすでに完成されていて、いつでも入手できる。なのでかなり早い段階から、新車開発に折り込むことができるんだ。当然ながら、製作に遅れが出ることもない」
トロロッソ当時の2019年も、レッドブルから1年落ちのトランスミッションの供給を受けた。しかしこの2018年型は、レッドブルがルノー製パワーユニット(PU/エンジン)搭載用に開発したものだった。トロロッソの開発陣はなんとかホンダ製PUに対応させたが、完璧とはいえなかった。
しかし今季のマシンでは、その心配は無用だった。レッドブルから供給された2019年型ギヤボックスや冷却システムは、最初からホンダ製PU搭載を念頭に開発したものだったからだ。全体的な空力コンセプトに関しては、すでに昨年のトロロッソマシンからホンダとのパッケージングを意識したデザインだった。
そこにホンダ専用のギヤボックス、冷却システムが加わったことで、AT01のポテンシャルは一気に増した。モンツァでの昨年比の予選タイムの伸びを見ても、それは明らかだろう。去年のトロロッソに対し、今年のアルファタウリは0.721秒速くなっている。これは全10チーム中、レーシングポイントに次ぐ2番目に大きい伸び代である。
レーシングポイント:0.780秒
アルファタウリ:0.721秒
マクラレン:0.507秒
メルセデス:0.459秒
レッドブル:0.241秒
ウイリアムズ:0.213秒
他4チームの予選タイムは去年より遅く、中でもフェラーリは0.966秒も遅くなっている。
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