レッドブル&HRC密着:グリッド降格で追い抜きが必須に。レースを見据え、トラクション重視のセッティングを選択
予選は、戦略や前を走るクルマのペースによって成績が左右するレースと違って、基本的に単独で1周するラップタイムを競うため、マシンの性能とドライバーの能力が現れやすい。
しかし、今年のイタリアGPの予選は、その勢力図が見えにくくなっていた。理由はふたつある。
ひとつは、今回のイタリアGPでは多くのドライバーがパワーユニット交換などによって、予選が始まる前からグリッドペナルティが科せられていたからだ。予選前までの段階で、以下のドライバーがその対象となっていた。
・エステバン・オコン(アルピーヌ):5グリッド降格
・セルジオ・ペレス(レッドブル):10グリッド降格
・バルテリ・ボッタス(アルファロメオ):15グリッド降格
・ミック・シューマッハー(ハース):15グリッド降格
・ケビン・マグヌッセン(ハース):15グリッド降格
・カルロス・サインツ(フェラーリ):グリッド最後尾
・ルイス・ハミルトン(メルセデス):グリッド最後尾
・角田裕毅(アルファタウリ):グリッド最後尾
そして、レッドブルのマックス・フェルスタッペンも、そのうちのひとりとなっていた。ただし、フェルスタッペンのペナルティは5基目の内燃エンジン(ICE)を投入したことによる5グリッド降格だった。
フェルスタッペンを含めて9人のドライバーがグリッド降格になるため、彼らは金曜日の段階からロングランに集中。一方ペナルティのないドライバーは予選も頭に入れたセットアップを行っていた。今年のイタリアGPの予選は、そんな状況のなかで行われた。
だから、ポールポジションを獲得したシャルル・ルクレール(フェラーリ)が「今日はとてもいいサプライズだ。ここでポールポジションを争うとは思っていなかったし、ホームグランプリでのサプライズはとてもうれしい」と語っていることでもわかる。
今年のイタリアGPが予選でのパフォーマンスだけでは勢力図がわかりづらいもうひとつの理由は、フェルスタッペンとレッドブルが採った戦略だ。通常、超高速のモンツァでは、どのチームもダウンフォースレベルを極端に軽くしたローダウンフォースの空力パッケージを採用する。しかし、レッドブルは予選後、「私たちはレースを考えて、少しダウンフォースをつけることにした」と語った。
その証拠に、フェルスタッペンの予選でのストレートスピードは10位だった。その理由をテクニカルディレクターのピエール・ワシェは、「それがエンジンによるものではないことは明確にしておく」と前置きした上で、こう説明した。
「ライバルはリヤウイングをモンツァ用に変えてきたのに対して、我々はそこまで変えなかったということだ」
つまり、レッドブルはあえて、ダウンフォースをつけ気味にした空力を採用した。それがフェルスタッペンが5番手降格になることと関係していることは明白だ。前のクルマを抜くために、コーナーの立ち上がりでのトラクションをレッドブルとフェルスタッペンは選択した。
その選択が吉と出るか。それは日曜日の午後4時半すぎにわかるはずだ。
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