“優勝候補”バイエルンはなぜ勝てなくなったのか? 欧州王者返り咲きへのエッセンスとは?
サッカーキング2018年9月19日(水)19時50分
バイエルンは近年の停滞ムードを払拭し、6年ぶりのCL優勝を果たせるのか [写真]=Getty Images
バイエルンがチャンピオンズリーグ(CL)を制してから5年が経過した。毎年のように優勝候補に挙げられながら、ファイナルにさえ辿り着けない状況が続いている。ジョゼップ・グアルディオラ、カルロ・アンチェロッティ、そして2012-13シーズンにビッグイヤーをもたらした張本人のユップ・ハインケスも、再度のヨーロッパ制覇には導けなかった。過去5シーズン、その名将たちの行く手を阻んだのがスペイン勢だ。グアルディオラはレアル・マドリード、バルセロナ、アトレティコ・マドリードを破れず、2シーズン前のアンチェロッティ、昨シーズンのハインケスは、やはりレアルの壁を越えられなかった。
ボールポゼッションによって失われた“恐ろしさ”
決勝まで勝ち上がれなくなった理由は何か。当然ながらスペイン勢への苦手意識はあるだろう。ケガ人にも泣かされた。ただ、最大の敗因を挙げるなら、戦術的な“柔軟性の欠如”ではないか。グアルディオラを招聘した2013-14シーズン以降、バイエルンのポゼッション志向はかなり強まった。パス回しのスピード、精度、繋ぐ意識が高まり、ブンデスリーガのみならず欧州の舞台でもボールを支配して敵を押し込むのが日常茶飯事に。それこそレアルやバルサを相手にしても、ポゼッションで上回ることは珍しくなくなった。だが、大一番で勝利できない。レアルやバルサ級のチームが守備を固める、もしくはプレスの強度を高めて、縦に速い攻撃を仕掛けてくると、攻守の歯車が噛み合わなくなったのだ。
3冠を達成した2012-13シーズンのバイエルンも、そうした守備を念頭に置くサッカーができるチームだった。ハインケス監督が全選手の守備意識を徹底的に高めた結果、フランク・リベリーやアリエン・ロッベンも身を粉にしたディフェンスを披露。ポゼッションにこだわるのではなく、時には相手にボールを委ねてカウンターを狙うなど、敵や戦況に応じて臨機応変にスタイルを変える柔軟性があった。おまけに、シチュエーションに応じたプレーの選択が常に的確。その完全無欠さについて、かつて酒井高徳はこう話していた。
「2012-13シーズンのバイエルンは本当に恐ろしかったですね。あれは正直、勝てないなって思いました。相手の選手が13、14人いる感覚でした。攻撃しようと思っても、前にあれだけ人数を割いていたのに、なんで後ろにもこんなにいるの!?って感じ。守備のオーガナイズが凄かったです。ウチのような力が劣るチーム(酒井は当時シュトゥットガルトに所属していた)に対しても、引いて守ったりもしていました。あえて引いて、こっちに攻め込んでいるって勘違いさせておいて、急にカウンターを仕掛けてくるんです」
勝利への鍵は新指揮官がチームに加える新たなエッセンス
今シーズンのバイエルンがCLを制するには、やはり酒井が語ったような柔軟性を取り戻せるかが鍵になるはずだ。キーマンは指揮官のニコ・コバチ。ひとまず「ポゼッションサッカーの継続」を明言しているこの新監督が、前所属のフランクフルトに植え付けたカウンター戦術もハイレベルに採り入れるようだと面白い。前任者たちのような豊富な経験を備えているわけではないが、守備をオーガナイズする手腕にも疑いの余地はない。
もちろん、選手たちの奮起も欠かせない。中でも期待値が高いのはロベルト・レヴァンドフスキ。チームの絶対的な得点源は今夏にレアル移籍を希望したものの、コバチ監督をはじめとする首脳陣の説得に応じる形で残留。これまでと変わらず得点を決め続けている。自慢のフィニッシュに加え、トーマス・ミュラーとのコンビネーションは冴え渡り、欧州の舞台でも爆発する可能性は十分。CL準々決勝以降の4試合で一度もゴールネットを揺らせず、批判の対象になった昨シーズンの悔しさを晴らそうとモチベーションも高めている。この大エースがレアルを3連覇に導いたクリスティアーノ・ロナウドやガレス・ベイルのように、ここぞという場面で違いを作り出せば、覇権奪還の可能性は広がるだろう。
大手ブックメーカー『ウィリアムヒル』の優勝オッズで、マンチェスター・シティ、バルセロナ、パリ・サンジェルマン、ユベントスに次ぐ「9倍」となっているように、今シーズンのバイエルンはCLでの前評判がそれほど高くない。欧州レベルでは名将の域に達していない指揮官の招聘に加え、夏の移籍市場で真のワールドクラスを1人も獲得しなかった影響だろう。とはいえベンフィカ、アヤックス、AEKアテネと戦うグループステージで敗退するとは考えにくい。国内リーグを含め、いわゆる格下との対戦が続くシーズン前半にコバチがどんなエッセンスを加えていくか注目だ。
文=遠藤孝輔
ボールポゼッションによって失われた“恐ろしさ”
決勝まで勝ち上がれなくなった理由は何か。当然ながらスペイン勢への苦手意識はあるだろう。ケガ人にも泣かされた。ただ、最大の敗因を挙げるなら、戦術的な“柔軟性の欠如”ではないか。グアルディオラを招聘した2013-14シーズン以降、バイエルンのポゼッション志向はかなり強まった。パス回しのスピード、精度、繋ぐ意識が高まり、ブンデスリーガのみならず欧州の舞台でもボールを支配して敵を押し込むのが日常茶飯事に。それこそレアルやバルサを相手にしても、ポゼッションで上回ることは珍しくなくなった。だが、大一番で勝利できない。レアルやバルサ級のチームが守備を固める、もしくはプレスの強度を高めて、縦に速い攻撃を仕掛けてくると、攻守の歯車が噛み合わなくなったのだ。
3冠を達成した2012-13シーズンのバイエルンも、そうした守備を念頭に置くサッカーができるチームだった。ハインケス監督が全選手の守備意識を徹底的に高めた結果、フランク・リベリーやアリエン・ロッベンも身を粉にしたディフェンスを披露。ポゼッションにこだわるのではなく、時には相手にボールを委ねてカウンターを狙うなど、敵や戦況に応じて臨機応変にスタイルを変える柔軟性があった。おまけに、シチュエーションに応じたプレーの選択が常に的確。その完全無欠さについて、かつて酒井高徳はこう話していた。
「2012-13シーズンのバイエルンは本当に恐ろしかったですね。あれは正直、勝てないなって思いました。相手の選手が13、14人いる感覚でした。攻撃しようと思っても、前にあれだけ人数を割いていたのに、なんで後ろにもこんなにいるの!?って感じ。守備のオーガナイズが凄かったです。ウチのような力が劣るチーム(酒井は当時シュトゥットガルトに所属していた)に対しても、引いて守ったりもしていました。あえて引いて、こっちに攻め込んでいるって勘違いさせておいて、急にカウンターを仕掛けてくるんです」
勝利への鍵は新指揮官がチームに加える新たなエッセンス
今シーズンのバイエルンがCLを制するには、やはり酒井が語ったような柔軟性を取り戻せるかが鍵になるはずだ。キーマンは指揮官のニコ・コバチ。ひとまず「ポゼッションサッカーの継続」を明言しているこの新監督が、前所属のフランクフルトに植え付けたカウンター戦術もハイレベルに採り入れるようだと面白い。前任者たちのような豊富な経験を備えているわけではないが、守備をオーガナイズする手腕にも疑いの余地はない。
もちろん、選手たちの奮起も欠かせない。中でも期待値が高いのはロベルト・レヴァンドフスキ。チームの絶対的な得点源は今夏にレアル移籍を希望したものの、コバチ監督をはじめとする首脳陣の説得に応じる形で残留。これまでと変わらず得点を決め続けている。自慢のフィニッシュに加え、トーマス・ミュラーとのコンビネーションは冴え渡り、欧州の舞台でも爆発する可能性は十分。CL準々決勝以降の4試合で一度もゴールネットを揺らせず、批判の対象になった昨シーズンの悔しさを晴らそうとモチベーションも高めている。この大エースがレアルを3連覇に導いたクリスティアーノ・ロナウドやガレス・ベイルのように、ここぞという場面で違いを作り出せば、覇権奪還の可能性は広がるだろう。
大手ブックメーカー『ウィリアムヒル』の優勝オッズで、マンチェスター・シティ、バルセロナ、パリ・サンジェルマン、ユベントスに次ぐ「9倍」となっているように、今シーズンのバイエルンはCLでの前評判がそれほど高くない。欧州レベルでは名将の域に達していない指揮官の招聘に加え、夏の移籍市場で真のワールドクラスを1人も獲得しなかった影響だろう。とはいえベンフィカ、アヤックス、AEKアテネと戦うグループステージで敗退するとは考えにくい。国内リーグを含め、いわゆる格下との対戦が続くシーズン前半にコバチがどんなエッセンスを加えていくか注目だ。
文=遠藤孝輔
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