伝説の2005年の再来となるか。最強のフェラーリマシンを駆るライコネン、2018年が鈴鹿F1で優勝できる最後のチャンス
キミ・ライコネンの2018年限りでフェラーリを離脱、2019年シーズンからはザウバーに移籍することが、正式に発表された。ライコネンの去就に関しては、当初は2018年シーズン限りで引退、シャルル・ルクレールの抜擢が既定路線と見られていた。ところがルクレールを強く推していたフェラーリの総帥セルジオ・マルキオンネが急死したことで、事態は二転三転する。
チーム内では、特に現場のエンジニアを中心にライコネン存続派が多かった。2018年シーズンのライコネンが復調目覚ましく、だったらあえて実力未知数の新人に換える必要はないではないかと強く主張したのだ。しかし結局はルクレールを推すマルキオンネ直属の部下たちが人事を押し切った。このまま行けばライコネンは、現役引退を余儀なくされる。するとライコネンは古巣のザウバーにコンタクトし、ルクレールの跡を狙うウルトラCの策に打って出た。
シンガポールGPで開かれたFIA定例会見での、「あの決断は、僕じゃなかった。その後に起きたのは、僕の決めたことだけどね」というライコネンの発言は、その間の事情を指すのだろう。相変わらず余計はことはいっさい言わないライコネンらしいコメントである。いずれにしてもひとつはっきりしているのは、2018年で実に16シーズン、計300戦近く出走し、10月には39歳を迎える男が、今もF1への情熱をいささかも失っていないということだ。
10月5日〜7日に開催されるF1第17戦日本GP鈴鹿にフェラーリドライバーとして出場するのは、今年が最後になる。はたしてどんな走りを、ライコネンは見せてくれるだろう。
2001年にF1デビューを果たしたライコネンは、これまで13回鈴鹿での日本GPに出場している。2018年シーズンまで16シーズンに及ぶ長いF1キャリアにおいて、20勝を含む計100回の表彰台を獲得しているライコネンだが、実は鈴鹿では意外なほどに真価を発揮できていない。特にフェラーリ時代はWRC転向前のいわゆる第1期(2007年〜2009年)から現在の第2期(2014年〜)まで、4位が最高で表彰台は一度もない。同じように多くのF1ドライバーたちから愛されているスパ・フランコルシャンでのベルギーGPを4度も制しているのを見ても、ライコネンが鈴鹿で結果を出せないのは不思議としか言いようがない。
■予選17番手から逆転勝利を飾った2005年のF1日本GP
ライコネンが鈴鹿で勝ったのは、これまでで1回だけ。マクラーレン時代、2005年の日本GPだった。しかしこの唯一の勝利は、日本GP史上に残る大逆転劇、そしてこれまで挙げた20勝の中で、ライコネン自身がベストと評するレースだった。
この年のライコネンはルノーのフェルナンド・アロンソとタイトルを争う速さを見せながらも、メルセデスエンジンの信頼性不足に悩まされていた。日本GPでも初日フリー走行でトラブルが発生し、エンジン交換を強いられる。これで10グリッド降格ペナルティを受け、さらに雨の予選では出走タイミングに恵まれず、タイム更新できずに終わった。こうして決勝レースは、17番手からスタートすることに。
ところが抜きにくいはずの鈴鹿で、ライコネンはミハエル・シューマッハーを始め次々に先行車をパスして行き、終盤にはついにトップに立った。しかしピットインの間に、ルノーのジャンカルロ・フィジケラに逆転を許してしまう。
だがそこからの猛攻が、凄かった。ニュータイヤとはいえ、ジャンカルロ・フィジケラより1周2秒速いペースで猛追し、ラスト3周でついに追いついた。そして最終ラップのメインストレートでスリップにつき、1コーナーでアウト側から抜き去って行ったのだった。
2018年シーズンのフェラーリは、純粋なマシン性能ではもはやメルセデスをしのいでいることは間違いない。しかもフェラーリSF71Hは、ライコネンのドライビングに合っている。つまりライコネンは最強かつ自信を持ってプッシュできるマシンで、フェラーリ最後の鈴鹿に臨むということだ。
さらにいえばザウバーへの移籍が決まった今、今まで何度も見られた理不尽ともいえるチームオーダーに、もはやライコネンは従う気はないかもしれない。ガチンコ勝負でライコネンが、どんな戦いを繰り広げるのか。想像するだけでも、ワクワクしてくるのではないだろうか。
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