松田宣浩が抱く「人生そのもの」だったソフトバンクと「40歳まで」チャンスをくれた巨人への想い「17年やってこなかったら、巨人でもできなかった」
18年のプロ野球人生のうち17年をソフトバンクで過ごした松田。彼は引退会見の場で古巣への感謝を忘れてはいなかった(C)Getty Images
9月28日に都内で実施された会見において、松田宣浩(巨人)は、涙をグッと堪えながら言葉を振り絞った。どこか重圧から解放されたような素振りには、2005年に始まったプロ野球人生での苦楽がにじみ出た。
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名門・亜細亜大学から鳴り物入りでソフトバンクに入団した松田は、強肩強打の三塁手として鳴らした。同球団に17年間在籍し、黄金期とも言うべき06年から22年で7度の日本一を達成した名手は、自慢のフルスイングで301本塁打、1832安打を記録。パ・リーグ三塁手として最多の8度のゴールデン・グラブにも輝いた。
しかし、輝かしい功績に彩られたキャリアには順風満帆と言い難い時期もあった。とりわけソフトバンクでのラストイヤーとなった2022年シーズンは苦しんだ。43試合の出場で打率.204、魅力でもある本塁打はプロ入り後初の「0」。持ち前のフルスイングも鳴りを潜めた。
それでもまだやれると活躍の場を探った。戦力外通告を告げられて迎えた22年9月の会見で「ホークスで終わるのが理想だった。ホークスは人生そのもの」と語りながらも、出場機会を求めた松田に、手を差し伸べたのは、球界の盟主・巨人だった。
「約1年前に原監督さん、球団関係者とのご縁でこうして読売ジャイアンツの一員になることができました。そのときに原監督さんから『ムードメーカーではなく戦力として考えている』という……(涙で詰まらせる)、戦力として考えているという温かい言葉をいただいて読売ジャイアンツに飛び込んできました。とにかくジャイアンツのために一生懸命やる、ただそれだけでした」
もちろんプロ野球はそう甘い世界ではない。巨人移籍後も本領発揮とはいかず、今季は出場11試合で、わずかに1安打。思い通りにプレーが出来ていないのは明らかだった。
そんな現状もあってなのか、引退会見が実施された28日、SNS上には「やっぱりソフトバンクで引退してほしかった」という言葉も散見された。若鷹軍団を支えたレジェンドに対するソフトバンク・ファンの切なる想いと言えよう。
「この辞める2年はきつい思いをした」
しかし、松田は後悔を口にしなかった。「この辞める2年はきつい思いをしたんですけど、良い時もあるしも、悪い時もあるし、そういう意味では18年間プレーさせていただいたので点数をつけると、『100熱男』です。100点満点の数字を出してあげたらいい」と屈託ない笑みを浮かべた40歳は、ソフトバンクと巨人への感謝を口にした。
「この1年、ジャイアンツのみなさんには自分の2つの思い、考えをかなえてもらいました。まず1つはプロ野球に入った時から数字より40歳までプレーしたいという思いを掲げてプレーしてきて、昨年途切れるかと言う時に、最後チャンスをいただいたのもジャイアンツですし、40歳までプレーするというチャンスを与えていただいたのはジャイアンツなので、そこに感謝の気持ちでいっぱいです。
もう1つは、当然少年の時に応援していたチームは必ずあったと思います。自分は家族も全てジャイアンツファンでした。食事を済ませ、宿題を終わらせ、野球の練習を終わらせて家族みんなでジャイアンツの応援をテレビの前でしていました。それだけジャイアンツが好きだったので、だから最後にこういう…(ハンカチで目頭を押さえる)ジャイアンツのユニホームを着て、野球生活を終えるというのは本当によかったと思います」
「17年という期間をホークスでプレーさせていただいて、良いことも、悪いことも経験して、プロ野球という世界で数字を出すことができました。ソフトバンクホークスで17年間やってこなかったら、最後に巨人でもできなかったので、感謝の気持ちでいっぱいです」
自身の目標だったという40歳までのプレーを叶え、精魂尽き果てるまでグラウンドに立ち続けた。今後は「妻のために父親という仕事をやってみたいなと思います」と話す松田。苦労を乗り越えた男の人生は、ここからが本番だ。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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