【F1第11戦無線レビュー(1)】注意を促されるも、バトルに必死だったサインツJr.「ちょっとしゃべりすぎだよ」
2020年F1第11戦アイフェルGPは、悪天候に見舞われた金曜日に一度も走行できないという異例の事態で幕を開けた。週末を通して非常に寒いコンディションのなかで行われたアイフェルGPを、無線とともに振り返る。
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7年ぶりにニュルブルクリンクで開催されたF1第11戦アイフェルGPは、アクシデントやトラブルが多発するイベントフルなレースとなった。その予兆はスタート前のレコノサンスラップでのこんなやりとりからも感じられていた。
レコノサンスラップは、ガレージを出てダミーグリッドに着くための周回だが、これは予選終了後、初めての走行となるため、スタート練習とマシンのチェックを行うラップでもある。そのレコノサンスラップで、複数のドライバーがちょっとした異変を訴えた。
セルジオ・ペレス:シートの右側の何かが壊れたみたいだ
マックス・フェルスタッペン:バイザーがしっかりと閉まっていないようで、ヘルメットの中に空気がすごく入ってきちゃうよ(笑)。あとで交換しなくちゃ
ルイス・ハミルトン:ステアリングが動きすぎるんだよ。昨日、直せなかったの?
ピーター・ボニントン:それは(FIAの)許可が下りなかった
F1が開催されているニュルブルクリンクのグランプリコースは1984年に完成した、いわゆるオールド・サーキット。ランオフエリアはターマックではなく、グラベル(砂利)が敷き詰められている。スタート直後、コースをはみ出したキミ・ライコネン(アルファロメオ)の砂利が後方を走っていたロマン・グロージャン(ハース)に飛び散る。
グロージャン:グラベルに飛び出したライコネンが巻き上げた砂利が、僕の左手の指に当たって痛いよ。折れてなきゃいいけど。だから、左側のインデックスが基本的に使えない状態だ
レース序盤、マクラーレンのふたりのドライバーが相次いでターン4の出口をはみ出し、それぞれの担当レースエンジニアから注意を促されるが、2人ともポジション争いでそれどころではない。
マクラーレン:最後のラップのターン4の出口がギリギリだった
カルロス・サインツJr.:トム、少し会話を減らして。ちょっとしゃべりすぎだよ
マクラーレン:ターン4で、警告を受けている
ランド・ノリス:黙っててくれ。僕はいまレースしているんだ
11周目、11番手を走行していたセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)が10番手のアントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)に1コーナーのブレーキングエリアで接近しすぎてスピン。
ベッテル:バンプの上に乗ってしまった。タイヤにフラットスポットができたので、ピットインしたい
フェラーリ:了解
直後の13周目、1コーナーで今度はジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)とライコネンが接触。ライコネンに弾き飛ばされたラッセルは、その場でリタイアとなった。この日のリタイア第1号となった。
ラッセル:ああ、何が起きたんだよ。あんなにスペースを空けていたのに……全然空いていたよ
その13周目のインフィールドセクションで、ポールポジションからトップを走行していたバルテリ・ボッタス(メルセデス)がチームメートのルイス・ハミルトンにオーバーテイクされ、2番手へ後退。その数周後、ボッタスに悲劇が訪れる。
ボッタス:ノーパワー、ノーパワー。設定か何かに問題が起きたようだ
メルセデス:デフォルト・ゼロワン
メルセデスは再起動をかけて、正常状態に戻そうとするが、状況は変わらず、リタイアを決断する。
メルセデス:BOX、BOX、BOX。スロー走行して、ピットインしてくれ。リタイアしよう
ボッタス:******
チーム側は、まだ調査中としながらも、MGU-Hに不具合が起きたことを示唆していた。ボッタスがリタイアしたことを受けて、レッドブル・ホンダはフェルスタッペンにその旨を伝える。
レッドブル・ホンダ:ボッタスがリタイアした
そのころ、チームメートのアレクサンダー・アルボンはスタート直後にタイヤにフラットスポットを作ったために、7周目にピットインを余儀なくされ、最後尾まで脱落。16周目にアルファタウリ・ホンダのダニール・クビアトをオーバーテイクしようとして接触。クビアトはフロントウイングを失い、翌周ピットインした。
その後、アルボンの前に現れたのが、再びアルファタウリ勢。アルボンはピエール・ガスリーとも熱いバトルを展開するが、今度はオーバーテイクするまでには至らなかった。
アルボン:彼ら(アルファタウリ)は僕に対して、すごく厳しいよね
レッドブル・ホンダ:ピットインだ
アルボン:どうして?
レッドブル・ホンダ:パワーの問題だ。ピットインしたら、教える
レース後、クリスチャン・ホーナー代表は「ラジエターの水温が急上昇したためリタイアさせた」と説明した。
その後、別の2人のドライバーがトラブルに見舞われる。
エステバン・オコン:何かを失った。ブレーキが効かないし、ギヤも動かない
ノリス:パワーを失った。何かがおかしい。
マクラーレン:データをチェックしているから、そのまま走ってくれ
マクラーレン:デフォルト・ゼロ・スリーだ
ノリス:何も変わらない
ノリス:ピットインさせてくれ
マクラーレン:マルチH7、ポジション6で、そのまま走行してほしい
ノリス:でも、ペレスはピットインしたじゃないか。いったい、どういうプランで行くつもりなんだよ
マクラーレン:まだペレスが後ろにいる。1.5秒後方だ。
ノリス:ごめん、見えなかった。
26周目に異変を感じたノリスは、エンジニアの指示を受けながら、30周すぎまで走行を続ける。しかし、一向に改善しない状況に次第にイライラが募ってくる
ノリス:いまパワーをすごく失っている
マクラーレン:デフォルト・ゼロ・スリーで走ってくれ
ノリス:でも、全然直らないよ
マクラーレン:デフォルト・ゼロ・スリーで最後まで走ってくれ
ノリス:何も変わらないじゃないか
マクラーレン:いや、いいレースをしているよ。
マクラーレン:デフォルト・ゼロ・スリー。特に大切なコーナーの後はデフォルト・ゼロ・スリーで
ノリス:わかってるよ!!
異変が発生してから10周以上、トラブルと格闘しながら6番手を走行していたノリスだが、43周目にパワーユニットが息の根を止め、ノリスはコース脇にマシンを止めてリタイア。直後に、セーフティーカーが導入された。
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